田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『地中の星 東京初の地下鉄走る』(門井慶喜)

2024-01-31 22:59:32 | ブックレビュー

 資金も経験もゼロ。夢だけを抱いてロンドンから帰国した早川徳次(のりつぐ)は、誰もが不可能だと嘲笑した地下鉄計画をスタートさせ、財界の大物と技術者たちの協力を取り付けていく。だがそこに東急王国の五島慶太が立ちはだかる。 

 “地下鉄の父”と呼ばれる早川徳次と実際に工事を担った無名の男たち、そしてライバルの五島慶太を絡めながら、銀座線の前身に当たる日本初の地下鉄工事の様子を描く。

 大変興味深い内容なのだが、思いの外、読むのに時間が掛かった。

それは、例えば、

経営者仲間のうちには、
―地下の早川、地上の五島。
とならび称する者もいるし、あるいはまた、
―東の早川、西の五島。
と見る者もいる。

のように、やたらと改行が多く、改行後に―を使ってむやみに強調してみたり、

翌日から、一般向け営業開始。
(どうかな)
徳次は、じつは危惧していた。

のように、心の声を()で入れるたりするから、集中できず、とても読みにくかったのだ。この人は『銀河鉄道の父』でも同じような文体だった。目の付け所がよく話も面白いのに、残念な気がする。


 銀座駅に早川の銅像がある。また、荒俣宏原作、実相寺昭雄監督の『帝都物語』(88)では、宍戸錠が早川を演じていた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「午後のロードショー」『羊たちの沈黙』

2024-01-31 07:11:27 | ブラウン管の映画館

『羊たちの沈黙』(91)

「BSシネマ」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f49c4503afd3fb205dcbc765634faab2

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ブギの女王・笠置シヅ子 心ズキズキワクワクああしんど』(砂古口早苗)

2024-01-30 22:51:22 | ブックレビュー

 朝ドラ「ブギウギ」の原案本で、著者は笠置シヅ子と同郷のライター砂古口早苗氏。笠置について初めて書かれた評伝だという。

 笠置への強い思い入れをにじませながら、さまざまに人に取材し、いろいろな参考文献に当たって、実によく調べて書かれている。特に服部良一やエノケン、美空ひばりとのくだりは、教えられることも多く、興味深く読むことができた。それだけに時折人名に誤植があったのが残念。自分も気を付けなければと自戒させられた。

 歴史ドラマもそうだが、こうした評伝も、誰の側や立場から見るかで全く違うものになる。そこに筆者の主観が入るからだ。例えば、著者は竹中労の『美空ひばり』での笠置に関する記述に疑問を呈しているが、それはあくまでも笠置の側から見れば…ということになる。もとより、さまざまな登場人物に対して八方美人では評伝は書けないから、人物の描写の仕方やバランスが大事になるのだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

2024-01-30 09:02:46 | 新作映画を見てみた

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(2024.1.17.東宝東和試写室)

 弟が誘拐され、行方不明となった悲しい記憶から立ち直れずにいるマイク(ジョシュ・ハッチャーソン)。妹のアビーの親代わりとして生計を立てるため、廃墟となったレストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の夜間警備員として働くことに。

 「モニターを監視するだけ」という簡単な仕事のはずだったが、妹を連れて深夜勤務に就いたマイクは、かつてそのレストランの人気者だった機械仕掛けのマスコットたちが動き出す姿を目撃。マスコットたちはかわいらしい姿から一転して凶暴化し、マイクや廃墟への侵入者を襲い始める。

 世界的ヒットを記録した同名ホラーゲームを、ブラムハウス・プロダクション製作で映画化。監督はエマ・タミ。原作ゲームの開発者スコット・カーソンが製作・脚本に名を連ねる。エリザベス・レイル、マシュー・リラードが共演。

 マイクが何度も見る夢や黒幕の正体などの謎解きの方に力が注がれ、ホラー描写は薄め。巨大マスコットたちに霊がひょう依して…というのは、ゆるキャラが悪さをするようなものなので、そのギャップが面白い。

 とはいえ、多層的な夢が現実に影響を与えるという部分はクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(10)、誘拐、夢と子どもの霊が事件の鍵を握るという設定は、同じくブラムハウスが製作したジョー・ヒル原作の『ブラック・フォン』(21)を思わせるところもある。


『ブラック・フォン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/807735980da480695aea5e0890f71d36

『インセプション』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/68645068755f69c638f1cd3d429daf7b

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

2024-01-30 08:43:24 | 新作映画を見てみた

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(2024.1.29.オンライン試写)

 コロナ禍の2020年、マサチューセッツ州の会社員キース・ギル(ポール・ダノ)は、全財産の5万ドルをゲームストップ社の株につぎ込んでいた。アメリカ各地の実店舗でゲームソフトを販売する同社は時代遅れで倒産間近とささやかれていたが、キースは赤いはちまきにネコのTシャツ姿の「ローリング・キティ」という名で動画を配信し、同社の株が過小評価されているとネット掲示板で訴え掛けた。

 すると、彼の主張に共感した大勢の個人投資家がゲームストップ株を買い始め、21年初頭に株価は大暴騰。同社を空売りしてひともうけを狙っていた大富豪たちは大きな損失をこうむった。この事件は連日メディアをにぎわせ、キースは一躍時の人となるが…。

 SNSを通じて団結した個人投資家たちが金融マーケットを席巻し、社会現象を巻き起こした「ゲームストップ株騒動」の実話を映画化。ベン・メズリックのノンフィクションを基にクレイグ・ギレスピーが監督を務め、前代未聞の事件の内幕をユーモアたっぷりに描く。

 ピート・デビッドソン、ビンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、シャイリーン・ウッドリー、デイン・デハーン、セス・ローゲンらが共演。

 まず、2020年9月から翌年の2月までに起こった出来事を、すぐさま映画化してしまうという素早さには恐れ入ったが、株取引の世界は複雑で難解なので、どうしても『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)のように説明が多くなり、テンポも悪くなる。株取引はドラマチックなので映画向きかと思われるが、実は映画にはしにくい題材だと思う。

 ところが、この映画は、コロナ禍という特殊な状況下、情報のやり取りはネットの掲示板やSNS、株取引はパソコンやスマホで行うという現状を見せながら、主人公のギルを中心に、実際に株の売買に参加していた女子大生や看護師、ゲームストップ実店舗に勤める従業員といった市井の人々と投資家たちの動静を並行してテンポよく描いている。

 それ故、庶民(個人)対富豪の闘いという図式が分かりやすく示され、しかも溜飲が下がる逆転劇でもあるので、投資や株のことがあまり分からなくても楽しめる映画になっている。株取引を扱った映画にしては、よく整理されているという印象を受けた。


『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8833b58cf38ee292073da2f6570b9b3f

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4859918fcf829ede7299b640a0cad5df

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『映画の森』「2024年 1月の映画」

2024-01-30 00:06:01 | 映画の森

共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)12月25日号で、『映画の森』と題したコラムページに「2024年1月の映画」として、5本の映画を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

アクションスター共演のシリーズ第4弾
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』☆☆

DCヒーロー「アクアマン」の続編
『アクアマン/失われた王国』☆☆

舞台は9割のネオンが姿を消した香港
『燈火(ネオン)は消えず』☆☆☆☆

同名漫画を実写映画化
『ゴールデンカムイ』☆☆

ジェンダーを意識した一人の女性の冒険譚
『哀れなるものたち』☆☆☆

クリックで拡大↓

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『おとなのデジタルTVナビ』2024.3月号

2024-01-29 17:34:41 | おとなのデジタルTVナビ

『おとなのデジタルTVナビ』(2024.3月号)


「劇場へ行こう!」(新作映画紹介)


「BS松竹東急」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ドラマウォッチ】「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」(第3話)

2024-01-29 09:31:27 | ドラマウォッチ

「西島秀俊、ニットが似合い過ぎる」
「ラストの芦田愛菜ちゃんのシーン、鳥肌がたった」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1420698

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東急文化会館(建築家・坂倉準三)

2024-01-29 09:15:42 | 違いのわかる映画館

「日曜美術館」(NHK Eテレ)で「戦後新宿・渋谷をつくった建築家 坂倉準三」をやっていた。

 板倉が設計したものといえば、新宿駅西口広場や渋谷の東急文化会館など、さまざまな建築物がある。渋谷ヒカリエが誕生する際に、レッツ・エンジョイ東京の「渋谷Hikarie誕生物語」(11)という連載企画で、多数の関係者にインタビューをした。その初回がヒカリエの前身にあたる東急文化会館(1956(昭和31)年開業、2003(平成15)年閉館)についてだったので、その際、会館内の映画館や坂倉のことも少し調べたのだった。

(2011.3.23.)

 かつての東急文化会館の跡地に新たな文化施設ヒカリエができるとのこと。東急文化会館には4つの映画館があった。まさに今でいうシネコンだ。わが映画日記によれば、いろんな映画をここで見ていた。

B1F「東急レックス」(渋谷東急3)
『007/サンダーボール作戦』(65)『アラビアのロレンス』(62)『時をかける少女/探偵物語』(83)『ワン・カップ・オブ・コーヒー』(90)『ボディガード』(92)『サンドロット/僕らがいた夏』(93)『パーフェクト・ワールド』(93)『愛が微笑む時』(93)『タイムコップ』(94)『未来は今』(94)『アミスタッド』(97)『ビーン』(97)『ブルース・ブラザース2000』(98)『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』(99)

1F「渋谷パンテオン」 
『サンダーバード』(66)『タワーリング・インフェルノ』(74)『2001年宇宙の旅』(68)『アラビアのロレンス』『E.T.』(82)『戦場のメリークリスマス』(83)『トワイライトゾーン/超次元の体験』(83)『インナー・スペース』(87)『パルプ・フィクション』(94)

5F「渋谷東急」「三省堂書店」(映画関係の本をよく買った)
『燃えよドラゴン』(73)『エクソシスト』(73)『風と共に去りぬ』(39)『家』(76)『スーパーマンⅢ/電子の要塞』(83)『ステイン・アライブ』(83)『許されざる者』(92)『デーヴ』(93)『コンタクト』(97)『ロスト・イン・スペース』(98)

6F「東急名画座」(渋谷東急2)
『伯爵夫人』(67)『招かれざる客』(67)『バリー・リンドン』(75)『課外授業』(75)『エデンの東』(55)『ヤング・ゼネレーション』(79)『チャイナ・シンドローム』(79)『泥の河』(81)『嘆きの天使』(30)『遠野物語/おこんじょうるり』(82)『黒い瞳』(87)『ザ・ファーム 法律事務所』(93)『今そこにある危機』(94)『キャスパー』(95)『トゥルーマン・ショー』(98)

8F「五島プラネタリウム」


「旧神奈川県立近代美術館 鎌倉」を改修して再利用した「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」鶴岡八幡宮の境内にある。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d6f6c36f4196eea2f3db8ae2a7b72c61

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『神さま待って!お花が咲くから』

2024-01-28 10:26:57 | 新作映画を見てみた

『神さま待って!お花が咲くから』(2024.1.27.オンライン試写)

 小児がんで幼い頃から入退院を繰り返してきた11歳の少女・森上翔華(新倉聖菜)は、主治医の脇坂(北原里英)の許しを得て、6年生の1学期から再び学校へ通うことに。

 しかし期待に胸を膨らませて登校した彼女が目にしたのは、まとまらないクラスと自信を失った気弱な担任教師(秋本帆華)の姿だった。奇跡を信じる翔華は、周りを笑顔に変えていくことを決意。そんな彼女の存在は、次第に多くの人たちの心に変化をもたらしていく。

 広島県の福山を舞台に、小児がんを患いながらも、12年の生涯を明るく生き、絵本『そらまめかぞくのピクニック』を残した少女のエピソードを基に描く。

 オーディションで選ばれた新倉が映画初出演で主役を務め、翔華の両親を布川敏和と渡辺梓、小学校の校長を高畑淳子、入院患者を曽我廼家寛太郎、病院に現れる謎の女性を竹下景子が演じる。監督は『天心』(13)『ある町の高い煙突』(19)と“実録もの”を撮った松村克弥。今回も形は違うが実録ものだった。

 子どもを主人公にしたいわゆる“難病もの”は数多く作られており、見ていてつらくなるのは必定。この映画も主人公の翔華が明るくポジティブに振る舞い、新倉も好演を見せるので、余計けなげに見えてやるせない思いがした。

 製作意図としては、翔華が周囲に与えた影響を通して、彼女が確かに生きた証しを描きたかったのだろう。その点では、ジョン・タートルトーブ監督、ジョン・トラボルタ主演の『フェノミナン』(96)のことを思い出した。


『フェノミナン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0324a6ed6f5bee15a99b3c53843bb98b

明治人の気骨や芸術家魂を浮かび上がらせた『天心』
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/60783

『ある町の高い煙突』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ef0fb4c7c7980b91252fb1e31664892a

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする