田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『捨身の一撃』

2014-07-28 18:45:39 | 映画いろいろ

 テレビでランドルフ・スコット主演の『捨身の一撃』(A LAWLESS STREET)(55・コロムビア)を。



町民が保安官を裏切る皮肉を描く

 1人で体を張って町の治安を守り続けている初老の保安官(スコット)。だが町の支配を企む賭博場のオーナーと劇場主は殺し屋を雇い保安官の命を狙う。そんな中、長い間離れ離れに暮らしていた保安官の妻(アンジェラ・ランズベリー)が歌手として町に現れる。

 西部劇の約束事を盛り込みながらテンポ良く78分でまとめたジョセフ・H・ルイス監督の職人技が光る一編。真面目過ぎる独善的な保安官の孤独、彼を選んだ町民自らが彼を裏切るという皮肉なテーマは、ゲーリー・クーパーの『真昼の決闘』(52)やヘンリー・フォンダの『ワーロック』(59)などでも描かれたが、アメリカの秩序の根幹を成す“法”や“自警”が持つ矛盾についてあらためて考えさせられるところもある。

 本作では、公開当時、57歳のスコットと30歳のランズベリーが夫婦役を演じている。ランズベリーは、後年の「ジェシカおばさんの事件簿」などでのひょうひょうとした演技が印象深く、本作の歌って踊る若き日の姿は少々意外な感じもするが、イギリス出身の彼女はもともとは歌手で舞台でも活躍した人。むしろこちらの方が本領なのだろう。殺し屋役のマイケル・ペイトがなかなかいい味を出し、劇場主と不倫している牧場主の妻役のジーン・パーカーが色っぽかったことも記しておこう。

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【ほぼ週刊映画コラム】『ゴジラ GODZILLA』

2014-07-26 15:59:32 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

ゴジラを“荒ぶる神”として描いた
『ゴジラ GODZILLA』



名台詞は

「ゴジラだ!」
by芹沢猪四郎博士(渡辺謙)

詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/904516
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『ダイバージェント』

2014-07-25 09:21:34 | 新作映画を見てみた

これからどうなる… 



 近未来、最終戦争を経た人類は、国家、人種、宗教という概念を捨て、16歳時の性格診断テストの結果によって「勇敢」「高潔」「平和」「無欲」「博学」という五つの共同体に分かれて暮らしていた。ところが、中にはどの結果にも当てはまらない異端者(ダイバージェント)と呼ばれる者がいた…。

 本作のヒロインはダイバージェントとなったベアトリス(シャイリーン・ウッドリー)。大枠は、ジェニファー・ローレンス主演の『ハンガーゲーム』シリーズにも似たサバイバルゲーム的なハードなアクションの中に若い女性の成長物語を描き込むというもの。初めから連続ものとして想定されているところも同じだ。

 自分や他人が抱く恐怖のイメージの中に入り込み、それを克服するというアイデアはなかなか面白いし、見終わった後で、ベアトリスはこれからどうなるという興味も湧くが、はぐらかされたような印象が残るのも否めない。アシュレイ・ジャッドが母親役を、ケイト・ウィンスレットが悪役を演じているところに時の流れを感じさせられた。

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「ダメな人間ばかり出てくる映画」『どん底』『生きる』『どですかでん』

2014-07-23 10:04:37 | 名画と野球のコラボ

名画投球術No.2「ダメな人間ばかり出てくる映画を観て安心したい」黒澤明



 “世界のクロサワ”=黒澤明の映画は、その力強さだけが強調されがちで、一見今回のテーマとは対極にあると思われるかもしれないが、実は彼の映画はそのほとんどが「ダメ人間の成長、変身物語」という側面を持っている。多くは未熟な若者が年上の師とも呼ぶべき人物と出会い、変化を遂げていく姿が描かれるのだが、中には今回ご紹介するようなダメ人間ばかりが集まった“群像劇”ものがある。

 だが、黒澤は決して彼らを特別な存在としては描いていない。むしろ共感できる人物=「オレにもこんなところがあるよなあ」として、人間の弱さや悲しさが浮き彫りになってくるところがある。そんな力強さの中に潜む弱さ=人間の真理があったからこそ、彼の映画は世界中で受け入れられたのではないだろうか。

落ち過ぎたフォークボール 『どん底(1957・日本)』 



 江戸の場末の棟割長屋には誰一人として明日に希望を持つ者などいないという自堕落な連中が集まり住んでいた。まさにダメ人間の吹き溜まり。そんな中、一人の巡礼の老人(左ト全)が現れ、彼らにつかの間、希望を説くが、その老人ですら、都合が悪くなるや姿をくらます偽善者であった。そんな彼らは仲間が捕まっても、自殺しても相も変わらず酒に酔い、浮世を忘れてばか囃子に興じるのだった。

 ロシアの文豪、マクシム・ゴーリキーの原作を黒澤が江戸時代に置き換えて映画化。撮影に入る前、俳優たちに雰囲気をつかませるために古今亭志ん生を招いて長屋ものを一席演じさせたのは有名な話。つまり黒澤はゴーリキーの世界を落語のような「ダメ人間たちの開き直りの姿」として描いてみせたのだ。ダメな自分を自覚して開き直れれば人生は案外楽しいものになるかもしれないと…。俳優たちのアンサンブルも見事な一作。

パーフェクトゲーム 『生きる(1952・日本)』 



 市役所生活30年余、間もなく定年を迎えようとする渡辺(志村喬)は、自分が胃がんで余命幾ばくもないことを知って絶望するが、頓挫していた公園建設に余命を注ぐことにより、自分の生きた証を立て、満足しながらその人生を終える。

 この世界に名高い名作を“ダメ人間もの”として紹介するのはいささか抵抗がなくもないが、生きる意義を見いだすまでの渡辺はまさに生きながら死んでいるダメな男だ。その彼が死を間際に生き返る姿に、私たちは人生の無常や悲しさを見るのだ。そして彼の通夜の席で繰り広げられるダメ人間の最たる同僚たちの醜態、渡辺の行為に対する一時の高揚、酔いが覚めた後に再び繰り返される無為な日常にも、私たちは共感を憶えずにはいられない。そして彼らが自分の分身であることに気づき、妙に悲しかったり、安心したりするのである。

ビーンボール 『どですかでん(1970・日本)』

 

 平気で夫婦交換をしてしまうお気楽な2組の夫婦(田中邦衛、吉村実子、井川比佐志、沖山秀子)、理屈ばかりこねてわが子を見殺しにするインテリ浮浪者(三谷昇)、悪妻をかばう顔面神経痛の男(伴淳三郎)、父親が分からない子供たちを笑顔で育てるブラシ職人(三波伸介)…。電車ばかの六ちゃん(頭師佳孝)を狂言回しに、謎のスラム街に住むさまざまな人間模様が描かれていく。

 これまた『どん底』同様、人生に敗れたり絶望したりしたダメ人間たちの悲しくもおかしな群像劇だ。山本周五郎の『季節のない街』を原作に、黒澤が初めて撮ったカラー映画。現在では放送コードに引っ掛かりかねないスレスレのビーンボール映画ではあるが、黒澤自身が撮影終了後に「もう彼らに会えなくなるのかと思うととても淋しかった」と語ったほど思い入れを込めて描いたためか、私たちもまたダメな彼らと別れ難くなる。

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「東京音頭」の中山晋平と黒澤明の『生きる』

2014-07-23 09:36:56 | 映画いろいろ

「東京音頭」の中山晋平と黒澤明の『生きる』

 昨日は神宮球場でヤクルトVS広島戦を観戦。6本のホームランが飛び交う乱打戦で花火も上がった。結果は贔屓の広島が勝ってめでたしめでたし。ところで、神宮球場ではヤクルトが得点した時と7回裏の攻撃前に、いつの間にかチームの応援歌となった「東京音頭」が歌われる。「東京音頭」の作詞は西條八十、作曲は中山晋平だ。というわけで、中山とある映画との関わりについて。
 


 中山晋平は「カチューシャの唄」に代表される大正ロマン期の劇中歌の数々、「しゃぼん玉」「砂山」などの抒情的な童謡、唱歌、ほかにも「東京行進曲」などを手がけた大作曲家。ところが、作曲した曲は今でも有名だが彼の名はほとんど忘れ去られている。

 彼にはその人生を象徴するかのようなこんなエピソードがある。戦後は時流に合わなくなり、作曲もほとんどしなくなった中山。そんな彼が1952年(昭和27)の暮れに、偶然入った場末の映画館(恵比寿説と五反田説あり)で、大正時代に作曲した「ゴンドラの唄」を耳にする。その映画はいわずもがなの黒澤明監督作『生きる』(52)。中山は映画を見た翌日に倒れ、ほどなくして亡くなったという。

 この映画で、がんに侵された主人公の渡辺勘治(志村喬)が、自分が完成させた公園のブランコを漕ぎ、「ゴンドラの唄」を歌いながら満足して旅立っていった姿に、中山は己の人生を重ね合わせたのかもしれない。でき過ぎとも思えるエピソードだが、何か運命的な出会いを語っているようで心に残る。

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【インタビュー】『るろうに剣心 京都大火編』 土屋太鳳

2014-07-23 00:26:55 | インタビュー



 『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』で、御庭番衆の血を引く巻町操を演じた土屋太鳳へのインタビューをアップ。

詳細はこちら↓ 「大好きな映画は『新少林寺』です」
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/885502

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ジェームズ・ガーナー、86歳で逝く

2014-07-21 15:31:36 | 映画いろいろ

『大脱走』のメンバーがまた一人消えた…。

拙著『外国映画男優名鑑』の記事から抜粋して追悼の意としたい。



ジェームズ・ガーナー James Garner

 1928年4月7日、米オクラホマ州ノーマン生まれ。本名ジェームズ・スコット・バムガーナー。185センチ。母はチェロキー族の血を引く。ハイスクール中退後、陸軍に入隊し朝鮮戦争に従軍。除隊後、オクラホマ州立大学に進学。54年にブロードウェーに進出し、56年に映画デビュー。

 陽気で温和。それでいてどこかひょうひょうとした味わいもある。出世作はテレビ西部劇「マーベリック」(57~62)。以後は『大脱走』(63)の調達屋ヘンドリー、レーサーを演じた『グラン・プリ』(66)、『墓石と決闘』(67)のワイアット・アープなどのアクションや西部劇、『夕陽に立つ保安官』(69)『地平線から来た男』(71)『ビクター/ビクトリア』(82)といったコメディーの両面で活躍。両面の魅力を生かしたドラマ「ロックフォードの事件メモ」(74~80)は長寿シリーズとなった。請われて出演したメル・ギブソン製作・主演の『マーヴェリック』(94)では、父親役で見事にギブソンを食って返礼とした。近年も『スペース カウボーイ』(00)や『きみに読む物語』(04)などで渋い演技を披露した。

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『南風(なんぷう)』 

2014-07-21 14:07:06 | 新作映画を見てみた

台湾の観光映画的な面白さで引っ張る 『南風(なんぷう)』 

 

 ファッション誌の編集者の藍子(黒川芽以)は、恋人に振られたばかりか他部署に異動となる。企画ページの取材のため渋々台北を訪れた藍子は、ガイドを買って出た16歳のトントン(テレサ・チー)と共に自転車で台湾を半周する旅に出る。九イ分(キューフン)淡水(タンシュエ)日月譚(リーユエタン)といった台湾の名所をたどりながら行く、日台合作のサイクルロードムービー。監督は萩生田宏治。

 正直なところ、ストーリー展開や演じる俳優たちの演技は今一つだが、台湾の観光映画的な面白さで引っ張っていく。特に、アーチ型の鉄道橋である龍騰断橋、青い客車を利用したホテルなどが印象に残る。

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「第2回80年代早大シネ研上映会」

2014-07-21 13:40:22 | 俺の映画友だち

 友人が参加している「第2回80年代早大シネ研上映会」にお邪魔して2本鑑賞。

『ハーケンクロイツの男』(88)監督・脚本 高橋洋
整形手術を繰り返し、他人になりすましながら逃亡を続けるナチスドイツの残党が日本に潜入…という発想が面白いミステリー。

『死人に口なし』(86)監督・脚本 岩路充子
殺し屋と殺された男の情婦との逃避行を中心に描いたジャパニーズ・ハードボイルド・アクション。マカロニウエスタン風の趣があって楽しめる。

 どちらもフィルムが持つ独特の色調の中に80年代の風景が映し込まれていて懐かしい気分に。あらためて、映画は時代を映し取るものなのだと感じた。

コメント (2)
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“二役映画” 『独裁者』 『めまい』 『底抜け大学教授』

2014-07-21 13:22:03 | 映画いろいろ

『複製された男』にちなんで
思い付くくままに“二役映画”を挙げてみる。

  

『雪之丞変化』(35ほか)監督:衣笠貞之助 二役:林長二郎(長谷川一夫)
『どんぐり頓兵衛』(36)監督:山本嘉次郎 二役:榎本健一
『チャップリンの独裁者』(40)監督・二役:チャールズ・チャップリン
『ダニー・ケイの天国と地獄』(45)監督:H・ブルース・ハンバーストン 二役:ダニー・ケイ
『遥かなる国から来た男』』(56)監督:マルセル・カルネ 二役:ジルベール・ベコー
『一心太助』シリーズ(58ほか)監督:沢島忠 二役:中村錦之助
『めまい』(58)監督:アルフレッド・ヒッチコック 二役:キム・ノバク
『底抜け大学教授』(62)監督・二役:ジェリー・ルイス(『ナッティ・プロフェッサー』(96)監督トム・シャドヤック 二役:エディ・マーフィ)
『キャット・バルー』(65)監督:エリオット・シルバースタイン 二役:リー・マービン
『世にも怪奇な物語』(67)第2話「影を殺した男」監督:ルイ・マル 二役:アラン・ドロン
『愛のメモリー』(76)監督:ブライアン・デ・パルマ 二役:ジュヌビエーブ・ビジョルド
『影武者』(80)監督:黒澤明 二役:仲代達矢
『戦慄の絆』(88)監督:デビッド・クローネンバーグ 二役:ジェレミー・アイアンズ
『デーヴ』(93)監督:アイバン・ライトマン 二役:ケビン・クライン
『Love Letter』(95)監督:岩井俊二 二役:中山美穂
『オースティン・パワーズ』(97)監督ジェイ・ローチ 二役:マイク・マイヤーズ

まだまだたくさんあると思うが…。知っている方はぜひご教授ください。

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