田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『手紙は憶えている』のアトム・エゴヤン監督

2016-09-30 20:47:51 | BIG ISSUE ビッグイシュー

 『手紙は憶えている』のアトム・エゴヤン監督に電話インタビュー(もちろん通訳を介して)。

 70年前、アウシュビッツ収容所で家族を殺された90歳のセヴ(クリストファー・プラマー)は、収容所仲間のマックス(マーティン・ランドー)が書いた手紙を頼りに復讐の旅に出る。

 認知症を患うセヴは、果たして目的を果たすことができるのか…というストーリーだ。

 重いテーマを描いているが、ミステリーと一人の老人の旅の物語を融合させた娯楽作として見ることもできる。監督の話の端々からヒッチコックが大好きなことが伝わってきた。

 詳細は後ほど。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』

2016-09-27 09:28:30 | ビートルズ



 1970年の『レット・イット・ビー』から46年、『ザ・ビートルズ・アンソロジー』から21年ぶりのアップル公式作品。63~66年、英リバプールのキャバーン・クラブ時代から米サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地、キャンドルスティックパーク公演まで(日本武道館公演もちらりと映る)のツアー活動期を中心に、4人や関係者、著名人のインタビューを交えながら構成している。

 監督のロン・ハワードは、ビートルズを媒介にして60年代を描こうと試みている。その点ではいささか物足りないものがあるが、ウーピー・ゴールドバーグやシガーニ―・ウィーバーが、まるで少女に戻ったかのように夢中になってビートルズを語る姿は感動的。ウーピーが語る「彼らは黒人でも白人でもない。そんなこととは関係のない“ビートルズ”だったのよ!」という一言が印象に残る。

 ライブシーンは、世界初公開映像といううたい文句の割には、すでに見たことのあるものがほとんどだったが、今回はデジタルリマスターで音と映像がクリアになり、ビートルズのライブバンドとしての質の高さを改めて感じることができる。それだけでもこの映画を見る価値はある。特にリンゴのドラムが素晴らしいことに気づかされた。

 それにしても、今よりもずっと粗悪な音響設備の中で、よくぞここまでのクオリティ(歌と演奏)を保ったものだとつくづく思う。すさまじい歓声の中で、お粗末な1本のスタンドマイクに顔を寄せ合いながら必死にハーモニーをつける、ジョンとポール、ポールとジョージ、ジョージとジョン…その姿を見ているとなぜか切なくなってくる。

 本編終了後に、ニューヨーク・メッツの本拠地、シエイ・スタジアムでのライブ映像が流れる。こちらは、77年に『THE BEATLES/シェアスタジアム』として「マジカル・ミステリー・ツアー」と同時上映された時以来の再会。本編同様に、音と映像は一部加工も加えられて驚くほどクリアになっていた。

 薬のせいなのか、もはやライブに嫌気がさしていたためか、目の下にくまをつくり、驚くほどやつれた表情で演奏するジョンとポールの姿が印象的。何度見てもラストの「アイム・ダウン」はぶっ飛んでるぜ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『映画の森』「2016年9月の映画」

2016-09-26 23:54:37 | 映画の森
共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)9月26日号で、
『映画の森』と題したコラムページに「9月の映画」として5本を紹介。
独断と偏見による五つ星満点で評価した。

ラインアップは

日本では珍しいピカレスク(悪漢)映画『後妻業の女』☆☆☆
インドの風景としゃれた会話が見どころ『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』☆☆
ゲーム感覚で見せる“ニュー時代劇”の続編『超高速!参勤交代リターンズ』☆☆☆
『E.T.』をほうふつとさせるが…『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」☆☆
講釈師、見てきたようなうそをつき『真田十勇士』☆☆☆☆

クリックすると拡大します↓



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『真田十勇士』

2016-09-25 09:29:07 | 新作映画を見てみた
講釈師、見てきたようなうそをつき



講談や読み物から派生し、幾度も劇化や映像化がなされてきた真田十勇士の物語。
今回は、名将の誉れ高い真田幸村が実は腰抜けだったら…という舞台劇を映画化。
脚本はマキノノゾミだが、どちらかと言えば三谷幸喜が思いつきそうな発想だ。

映画全体のテーマは、幸村(加藤雅也)を英雄に仕立て上げようとする猿飛佐助(中村勘九郎)のせりふにある
「うそもつき通せば誠になる」。
そこに敗者の意地や美学を盛り込んでいる。

もとより、歴史には諸説があり、どれが真実なのかは分からない。
だからこそ、さまざまな解釈が生まれ、創作が入り込む余地が生じる。
その点でこの映画には「講釈師、見てきたようなうそをつき」の精神を貫いた面白さがある。

冒頭、幸村と十勇士との出会いの物語をアニメーションで見せ、
エンドクレジットでは紙芝居風に彼らのその後を見せるなど、遊び心も満載。
評判の大河ドラマ「真田丸」よりも一足早く、大坂の陣の攻防が見られる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ほぼ週刊映画コラム】『ハドソン川の奇跡』

2016-09-24 20:12:52 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

最近では珍しい気持ちのいいアメリカ賛歌
『ハドソン川の奇跡』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1068879
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『涙の数だけ笑おうよ 林家かん平奮闘記』

2016-09-20 08:00:16 | 新作映画を見てみた

落語家の性(さが)



 脳いっ血で倒れ、リハビリを続けながら高座に上がり続ける車いすの落語家・林家かん平の姿を追ったドキュメンタリー。竹藤恵一郎監督の先輩にあたる友人に薦められて見てみた。落語家が主人公の『寝ずの番』(06)を監督し、『落語娘』(08)では落語家を演じた津川雅彦がナレーターを務めている。

 まず、一見したところはお涙頂戴や際物になりかねない題材なのに、全くそうした視点では描いていない監督の姿勢にすがすがしさを感じた。
もちろんそれは、かん平のひょうひょうとしていて、暗さや悲惨さを感じさせない性格や、落語家らしく言葉の端々に差し挟むユーモアなどに負うところが大きいのだろう。

 それ故、不謹慎とは思いつつも、その言動に笑わされる場面がたびたびあるし、身障者の話というよりも、一人の落語家の芸道話として見ることができる。とは言え、何としても人を笑わせようとするところに落語家の性(さが)を感じて切なくなるところもある。かん平を励まし続けながら先に亡くなった江戸家猫八の姿に涙した。


 映画の余勢を駆って、帰りに久しぶりに末廣亭を訪れた。(メモを取らず、記憶を頼りにしているので演目が違っているかもしれない)

9.18.昼の部 中入り
柳家燕弥…金明竹
すず風にゃん子・金魚(漫才)
三遊亭若圓歌…(新作)
五街道雲助(休演)…猫の皿
ペペ桜井(ギター漫談)
柳家権太楼…代書屋

夜の部
春風亭朝之助…
東京ガールズ(漫談)
三遊亭丈二…(新作)
春風亭勢朝…(新作)
笑組(漫才)
古今亭菊春…目黒の秋刀魚
三遊亭歌る多…片棒
林家ぺー(漫談)
春風亭一朝…笠碁
柳家小満ん…親子酒

中入り
柳家ろぺえ…もぐら泥
三増紋之助(曲ごま)
桂ひな太郎…(新作)
夢月亭清麿…時の過ぎ行くままに(新作)
林家正楽(紙切り)
春風亭一之輔…初天神

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『トレジャー オトナタチの贈り物。』

2016-09-19 08:04:07 | 新作映画を見てみた
見る者を戸惑わせる妙ちくりんな映画



ルーマニアのブカレストに住むコスティは、ある日隣人から曽祖父が実家の庭に埋めた宝探しへの協力を求められる。
そして金属探知機の業者も加えて、三人の中年男による宝探しが始まるが…。

ルーマニア発のシニカルな人間喜劇。
カンヌ映画祭「ある視点」部門の「ある才能賞」受賞作とのことだが、
あまりにもスローなテンポゆえ、睡魔に襲われ、
だらだらとした会話の間(ま)と金属探知機の音にイライラさせられる。
全ては作り手の狙い通りなのか…。

見る者を戸惑わせる妙ちくりんな映画。
まいりました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『聲の形』京都アニメーション

2016-09-18 08:00:53 | 新作映画を見てみた

アニメの効用



 原作は大今良時の漫画。製作は京都アニメーションで、山田尚子が監督している。

 視覚障害のため、いじめを受ける少女・硝子と、いじめの中心人物として周囲から孤立する将也。高校生になって再会した二人の動静を中心に、彼らと同級生たちの、孤独と友情、後悔、絶望と希望、愛と憎しみなどの二律背反が描かれる。

 不器用でもどかしい少年少女たちの青春像だが、かつての自分にも思い当たる節があり、思いのほか入り込めた。孤独な将也の心象表現として、クラスメートの顔にバッテンを貼り付けるというアイデアも秀逸だ。

 とは言え、初めのうちは、現実感のあるストーリーと現実感の薄いアニメキャラとのギャップに違和感を憶えた。ところが、慣れてくるとこのミスマッチが妙味へと変化し始め、やがて、この話を実写で生身の俳優が演じたらそれはそれで見るのがつらいだろうなと感じるまでになり、最後は、なるほど、アニメの効用とはこういうところにあるのかと改めて気づかされた次第。

 『君の名は。』と並んで今年のアニメ映画の収穫と言えるのではないだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ほぼ週刊映画コラム】『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』

2016-09-17 18:18:33 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

『E.T.』をほうふつとさせるが…
『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1067875
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【インタビュー】『歌声にのった少年』ハニ・アブ・アサド監督

2016-09-16 20:56:02 | BIG ISSUE ビッグイシュー

『THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本』295号
『歌声にのった少年』のハニ・アブ・アサド監督へのインタビュー記事掲載。

 

実在のパレスチナ・ガザ地区出身の歌手、ムハンマド・アッサーフの半生を映画化。
『パラダイス・ナウ』(05)『オマールの壁』(13)と本作は、コインの表と裏(生と死)を描いた三部作だそうだ。
監督は「この映画をパレスチナへの窓として見てみてほしい」と語っていた。

表紙は『われらが背きし者』のユアン・マクレガー。
街で販売員の方を見掛けましたら、ぜひお買い求めください。

ビッグイシュー日本のホームページは↓
http://www.bigissue.jp/latest/index.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする