田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『フロントランナー』

2018-11-30 11:55:03 | 新作映画を見てみた
 1988年、米コロラド州。ジョン・F・ケネディの再来と言われ、大統領選挙の最有力候補=フロントランナーに躍り出たゲイリー・ハート(ヒュー・ジャックマン)。だがマイアミ・ヘラルド紙がつかんだスキャンダルが報道されると事態は一変する。



 政治家に対する報道のルールや、候補者の政策よりも人柄を重視する国民感情の変化へのターニングポイントとなった事件を、シニカルな視点が信条のジェイソン・ライトマン監督がスピーディーに描く。ジャックマンが抑えた演技で、カリスマ政治家役を好演している。

 ライトマンは政治劇としては『候補者ビル・マッケイ』(72)『コンドル』(75)『大統領の陰謀』(76)『ネットワーク』(76)などを、群像劇としてはロバート・アルトマンの諸作を参考にしたのだという。確かにこの映画、描いた時代は80年代後半なのに、どこか70年代の香りがするのだ。

 そして、もしハートが大統領になっていたら…と考えさせるこの映画の奥には、やはり今のトランプ政権に対する不審感が潜んでいると思われる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ボヘミアン・ラプソディ』“胸アツ”応援上映

2018-11-30 09:11:25 | 映画いろいろ
 妻が友人と一緒にTOHOシネマズ日本橋で『ボヘミアン・ラプソディ』の“胸アツ”応援上映を見てきた。



 生粋のクイーンファンである妻の友人は、最初はラミ・マレックがミック・ジャガーに似ていると感じたそうだが、見ている間にちゃんとフレディになっていったので感動したという。

 拍手、手拍子、発声オーケーで、歌の場面では日本語の字幕とともに英語の歌詞も表示されるとのこと。コンサートさながらの盛り上がりで、みんなで大合唱。ラストは涙する者も多かったという。若い観客が多かったと聞いて、何だかうれしくなった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「水もれ甲介」『ペコロスの母に会いに行く』

2018-11-30 08:16:14 | 映画いろいろ


 女優の赤木春恵が亡くなった。人情味のある役から意地悪な役まで、多彩な役を演じた名脇役。中でも、「水もれ甲介」(74)の“おっかさん”が絶品だった。あのドラマの甲介(石立鉄男)も、忠さん(名古屋章)も、竹さん(谷村昌彦)もすでに亡い。大河ドラマ「おんな太閤記」(81)の大政所もよかったなあ。

 89歳で映画初主演を果たした【映画コラム】“老人力”の素晴らしさを示した『ペコロスの母に会いに行く』↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/59351
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『遥かなる山の呼び声』

2018-11-29 22:15:28 | 映画いろいろ
 先日、NHKで『遥かなる山の呼び声』のリメークドラマをやっていた。高倉健と倍賞千恵子は阿部寛と常盤貴子に代わり、ハナ肇が好演した虻田を筧利夫が演じていた。随分と設定を変え、今風にアレンジしてはいたが、やはり昔の映画にはかなわないと感じた。

 『遥かなる山の呼び声』(1980.7.13.中野武蔵野館 併映は『冬の華』)
そうだ「健さん大会」だったんだ…。



 題名を見た時から、きっと『シェーン』(53)のような映画なんだろうなあとは思っていた。北海道の大自然をバックに、酪農を営む母子のもとに、謎の風来坊が現れて…という設定で、山田洋次独特の世界が展開する。酪農の厳しさに関する描写も随所に見られ、北海道にこだわってきた山田監督の思いがにじみ出るところもある。

 高倉健、倍賞千恵子が見事な演技を見せるほか、子役の吉岡秀隆が実に豊かな表情を見せ、笑いや涙を誘う。中でも草競馬のシーンは、何度も映画化された『無法松の一生』の運動会の場面をほうふつとさせるような名場面。とはいえ、健さんに、たまには、前科のない、過去をひきずっていない、普通の人をやってもらいたい気もする。
 
 彼らに加えて、過去の山田映画を支えてきたハナ肇、渥美清、武田鉄矢らが次々と登場して花を添える。特に中盤の鈴木瑞穂とラストのハナ肇が泣かせるぜ。

 名セリフ「もう他人と思ってないから…」「あの虻田がねえ」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『暗殺の森』『ラストタンゴ・イン・パリ』

2018-11-29 11:30:56 | 映画いろいろ
『暗殺の森』(1979.3.2.)



 ファシストになった主人公(ジャン・ルイ・トランティニアン)の生き方を通して、ファシズムの異常さや、空しさを表現している。若妻役のドミニク・サンダが当時19歳とは信じ難い。

 【今の一言】という簡単なメモを見て、今の自分は昔の自分に「だからどうした?」と問いたくなる。

 ベルトルッチの訃報を目にして以来、なぜかガトー・バルビエリ作曲の『ラストタンゴ・イン・パリ』が耳について離れない。
https://www.youtube.com/watch?v=41A-hN89m4I

マーロン・ブランドのプロフィール↓


マリア・シュナイダーのプロフィール↓

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【インタビュー】『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』アリソン・スドル&ダン・フォグラー

2018-11-29 08:27:10 | インタビュー

「クイニーとジェイコブの絆の強さに説得力を持たせようと思いました」



https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1171293

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『西部の男』

2018-11-29 06:56:50 | 1950年代小型パンフレット

『西部の男』(40)(1993.9.6.)

 流れ者のコール(ゲーリー・クーパー)は、悪徳判事と呼ばれるロイ・ビーン(ウォルター・ブレナン)と知り合う。開拓時代のテキサスを舞台に男たちの愛憎と裏切りを描いた西部劇。監督はウィリアム・ワイラー。



 前に見たのはおよそ20年前。ワイラー作品なのにほとんど印象に残っておらず、同じくクーパー主演の『西部の人』(58)の存在もあるので、一体どちらを見たのかも定かではなくなって、とても気に掛かっていた。

 ところが、先頃読んだ『夢想の研究』(瀬戸川猛資)で、この映画についての一文を目にして安心した。そういえばラストは劇場での対決だったことを思い出したのである。そして、この映画がなぜ当時中学生だった自分の印象に残らなかったのかという疑問についての答えもあった。

 以下、引用
 「~西部劇として邪道なのである。ロイ・ビーンと流れ者の友情と対決、という骨組みはオーソドックスなのだが、ビーン判事をイギリスの舞台女優リリー・ラングトリーに恋い焦がれる老人に仕立てて、異様なるロマンティシズムを盛り込んでいるのだ。狂的なファン心理やフェティシズムまで描かれているのだから、どう見ても西部劇として好ましくない」

 「が、ワイラー監督はそれを“男の純情”として昇華、不思議なおもしろさを生み出している。劇場の幕が上がり、舞台上のクーパーと客席のブレナンが決闘、という有名なクライマックスもよかった。そのあとで、本当にリリーが姿を現すくだりは、さらによかった。これを観れば、ジョン・ヒューストンがポール・ニューマン主演で作った『ロイ・ビーン』など、ただの二番煎じでしかないことがわかる」

 そうか、あまりにも西部劇的ではなかったために中学生の心には残らなかったのだ。これで多少は胸のつかえがおりた。ただ『ロイ・ビーン』(72)は好きな映画だけに、二番煎じ説にはまいった。思えば昔の映画は深い。

ゲーリー・クーパーのプロフィールは↓


ウォルター・ブレナンのプロフィールは↓

パンフレット(51・国際出版社)の主な内容
解説/物語/ウィリアム・ワイラーを評傳式に(淀川長治)/ゲイリー・クーパー(双葉十三郎)/鑑賞講座「西部の男」(田村幸彦) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『1900年』

2018-11-28 20:20:59 | 映画いろいろ
『1900年』(1982.12.1.新宿シネマ2)



 最終日の最終回に飛び込み、5時間あまり立ちっ放し。年に3回の映画半額デーは、映画のはしごをすることにしているのだが、この映画の立ち見は、さすがに肉体的にはつらかった。だが、それだけの労力を要しながらも、見終わって満足感を得たということは、この映画に見る者を引き付ける力があったということなのだろう。

 この映画は、1900年のイタリアで、ほとんど同時に生を受けた地主と小作人の息子という相反する2人の家系を軸にして、第一次世界大戦、ファシズムの台頭から第二次世界大戦の終了までのイタリア現代史を語っていく。

 先に見た、クロード・ルルーシュの『愛と哀しみのボレロ』(81)が、欧米各国の近代史をうわべだけ描いて、それをラストでひとまとめにし、無理を感じさせたのに比べると、この映画は舞台をイタリアの一地方に絞ってたっぷりと見せてくれる。その中から、地主と農民、それぞれの変遷や、ファシズムの残酷さ、民衆のたくましさなどが浮かび上がってくるのだ。
 
 冒頭、赤旗の農民たちに小突き回される黒シャツ隊のドナルド・サザーランドの姿が映る。後半に映る彼のファシストとしての残虐行為をまだ見ていないわれわれにとっては、これもひどく残酷な行為に見えた。つまり黒シャツ隊も赤旗も、貧しさのあまり行き着くところは暴力であるということ。

 そして、ラストで元地主のロバート・デ・ニーロが吐く「地主は生きている」というセリフに象徴されるように、ファシズムが終わっても、特権階級と農民、支配者と被支配者という構図は変わらない。地主の代わりに、新たに解放軍という名の支配者が誕生しただけなのだ。

 この映画の舞台であるイタリア、そしてドイツと日本は、第二次大戦中にファシズムを推進した同盟国だった。それを考えると、イタリアでこの映画が作られ、ドイツでは『ブリキの太鼓』(81)が作られと、他の二国では映画の中でファシズムの本質を描いているというのに、日本ではそうした映画が見当たらないのはつくづく残念だ。

 【今の一言】横浜にあるノベチェントという映画館の名前は、この映画の原題から取られているのだとか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ラストエンペラー』

2018-11-28 05:12:53 | 映画いろいろ

『ラストエンペラー』(87)(1988.1.29.松竹セントラル)



 あのベルトルッチが中国を舞台にした映画を撮ると知った時は少々戸惑った。それは、これまでの彼の作品群と中国とが全く結び付かない気がしたからなのだが、見てみると思ったほどには違和感はなく、2時間45分という大作ながら、飽きることなく見ることができた。

 何より、溥儀という人物の、数奇で悲劇的な人生、そして動乱期の中国という題材そのものが、すでにドラマとしての面白さを十分に持っている。それをイタリア人のベルトルッチがどう描いたかが問題なわけだが、多少の疑問は残るにしても、この題材をこれだけの規模で描いた映画はかつてなかったのだから、素直にベルトルッチの力量を讃えるべきだろう。

 加えて、この映画の核は子役もさることながら、溥儀役のジョン・ローンの好演にある。彼なくしてこの映画の成功はなかったと言っても過言ではない。

 さて、ひたすら歴史にもてあそばれ、皇帝から一市民へと落ちぶれた溥儀の一生とは何だったのか。その答えの一端が、ラストに映る玉座に隠されたコオロギの入った小箱に象徴される。

 かつて皇帝として住んだ紫禁城で、今は一介の庭師となった彼の自由になるものは、子供の頃に隠したこの小箱一つだけという皮肉と空しさ。最後まで孤独で、かつては栄華を極めながらも、結局は母の愛も、子供の頃の夢さえも手に入れられなかった男の一生。小箱は『市民ケーン』(41)のローズバッド(バラのつぼみ)であり、紫禁城はザナドゥだったのだ。



【今の一言】実際、この映画の音楽を担当し、甘粕正彦を演じた坂本龍一は、撮影前に製作のジェレミー・トーマスから『市民ケーン』を見るように言われたという。

 All About おすすめ映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8921aa4e08f5a1d6bcc30e60553a425f

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『孤独な天使たち』

2018-11-27 12:20:36 | 映画いろいろ
 ベルトルッチも逝ってしまった…。彼の監督作についてはいくつかメモが残っている。まずは遺作となった

『孤独な天使たち』(2013.4.4.)



 ベルナルド・ベルトルッチ、10年ぶりの監督復帰作。両親が旅行に出掛けた1週間、地下室に潜んだ少年と異母姉の姿を描く。

 ベルトルッチの映画にしては、随分とこじんまりとしていて驚いたが、地下室という閉ざされた空間での秘密の行為は『ラストタンゴ・イン・パリ』(72)を思い起こさせ、麻薬中毒の姉を見守る弟というのは、同じく麻薬中毒の息子を見守る母という『ルナ』(79)の逆パターンでもあり、実は彼がこだわり続けてきたエディプスコンプレックス的な母性について描いた作品だとも言えるのでは、と感じた。

 何より地下室のセットがいい。劇中に流れるデビッド・ボウイの「スペイス・オディティ」のイタリア語バージョンも印象的だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする