約41年ぶりに再見。
アメフトの試合が行われているロサンゼルスのスタジアムに、無差別に人を撃つライフル魔が現れる。それに立ち向かうSWATの動静とスタジアムにいるさまざまな人々の恐怖を描く。公開当時(77年)はパニック映画がはやっていたのでこんなタイトルがつけられたが、原題は「Two-Minute Warning」という。こちらの方がかっこいい。
同種の作品として、ドライブ・イン・シアターに逃げ込んだ殺人犯を描いたピーター・ボグダノビッチの監督デビュー作『殺人者はライフルを持っている』(68)、実際にあった事件をドラマ化したテレビムービー「パニック・イン・テキサスタワー」(75)がある。アメリカは物騒な国だと知らしめたこれらの作品も、遙か昔のものになったが、銃社会のアメリカが抱える問題は今も解決していない。
この映画、雑多な登場人物の描写があちこちに飛び過ぎてストーリーが散漫になっているのだが、その分、ベテラン刑事役のチャールトン・ヘストンの豪快さと、沈着冷静なSWAT隊長を渋く演じたジョン・カサベテスの対照の妙が見どころになる。どこかの大学の先生が、監督としてのカサベテスばかりをやたらと持ち上げたために、俳優としての彼が忘れられがちだが、この時期の彼は、監督作が日本ではあまり公開されていなかったため、渋い俳優として認知されていたのだ。そのカサベテスが妻のジーナ・ローランズと共に、監督作の資金集めのためにこの映画に出たことは随分後になって知った。
この映画を監督したラリー・ピアースは、同時期に、事故で重傷を負った女子スキー選手の再起を描いた『あの空に太陽が』(75)を撮っている。そのためか、同作に主演したマリリン・ハセットとボー・ブリッジスがこの映画にも出ている。二人とも懐かしい顔だ。そんなこんなのあの時代を懐かしく思い出した。
ヘストンのプロフィールは↓
今年のアカデミー賞作品賞は『ムーンライト』。『ラ・ラ・ランド』が受賞と誤発表のハプニングあり。プレゼンターは『俺たちに明日はない』(68)のウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイだった…。
『映画の森』と題したコラムページに「2月の映画」として5本を紹介。
独断と偏見による五つ星満点で評価した。
ラインアップは
時間の繰り返しを用いたひねりが見どころ『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』☆☆
トランプで揺れる今こそ見るべき映画『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』☆☆☆
トム・ハンクスが久しぶりに本領を発揮『王様のためのホログラム』☆☆☆
今年のアカデミー賞の大本命!『ラ・ラ・ランド』☆☆☆☆
古き良きハートウォーム映画の雰囲気を踏襲「素晴らしきかな、人生」☆☆☆
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こりゃあ漫画だわ
ヴィン・ディーゼル扮するエージェント、トリプルXことサンダー・ケイジが15年ぶりに復活。とは言え、同じくNSA(米国家安全保障局)の暗躍を描いた『スノーデン』とは正反対の、見事なまでに能天気なアクション映画。こりゃあ漫画だわ。
エクストリームスポーツ、タトゥーなど、いかれた若者が喜びそうなものをちりばめ、ド派手なアクションを展開させているが、何とも作りが雑で、あまり面白さが感じられない。中国資本との提携の影響もあってか、ドニー・イェンが大活躍を見せるのが救いか。
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
今年のアカデミー賞の大本命!
『ラ・ラ・ランド』
詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1094759
エピローグを見ながら、広瀬正の『エロス もう一つの過去』を思い出した。
再版なった逢坂剛氏の西部小説『アリゾナ無宿』と続編の『逆襲の地平線』を一気に読了。
この2冊は、南北戦争後の米西部を舞台に、17歳の少女ジェニファが、賞金稼ぎ=バウンティハンターのトム・ストーンと正体不明の日本人の通称サグワロと知り合い、共に賞金稼ぎの旅をするという、西部劇ファンにとっては何ともごきげんなロードノベル。『逆襲の地平線』ではもう一人、血気盛んな若いガンマンのジャスティ・キッドが仲間に加わる。
旅を続ける中で、疑似家族のようになっていく彼らの動静が、ジェニファの目で語られるのが好ましい。これは、同じく少女を主人公にした『トゥルー・グリット』(『勇気ある追跡』)にならったものだろうか。
コマンチ族にさらわれた少女を取り戻すという『逆襲の地平線』は、ジョン・フォードの『捜索者』をほうふつとさせるなど、過去の西部劇で描かれたエッセンスがふんだんに盛り込まれているので、読みながら元ネタを考えるのも楽しみの一つ。
また、旅程、風景、地理、気候、料理などのディテールが詳細に書き込まれているのが素晴らしい。日本人がよくぞここまで調べて書いたものだと感心させられた。
日本では昔から西部小説は受けないとされ、書き手は極端に少ないのだが、その意味では、西部劇の魅力がちりばめられたこの2冊は貴重な存在だといえる。
先日、前日談にあたる『果てしなき追跡』が刊行され、サグワロの正体が土方歳三だと明かされたが、できればこの2冊の続きの方を読みたかった。そして、この手は手塚治虫も『シュマリ』で使っていた。
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
古き良きハートウォーム映画の雰囲気を踏襲した
『素晴らしきかな、人生』
詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1093388
フジテレビ、やればできるじゃないか
「ある日突然、電気がなくなったら…」という発想から生まれたコメディータッチの“SF(少し不思議な)話”。一組の家族のサバイバルの様子(東京から自転車で鹿児島を目指す)を通して、物質に依存し過ぎている現代社会に警鐘を鳴らす。音のない世界、不思議な現象によるパニックを用いて東京を大掃除するという点では、広瀬正の『ツィス』を思い出した。
監督は“ハウツーもの”が得意な矢口史靖だが、今回はどちらかと言えば変化球。小日向文世と深津絵里がコミカルな味を生かした好演を見せる。終盤はいささか失速するが、概ねよくできていると感じた。フジテレビ、やればできるじゃないか。
道具立ての豪華さだけで…
1942年、仏領カサブランカで共にミッションを遂行したエージェントのマックス(ブラッド・ピット)とマリアンヌ(マリオン・コティアール)。2人は恋に落ちて結婚し、一人娘を得て英国で幸せな日々を送っていたが、マリアンヌにドイツのスパイ容疑がかかる。
ロバート・ゼメキス監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)や『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)『ザ・ウォーク』(15)など、最新の映像技術を駆使して過去をよみがえらせることを得意とする。本作も、第2次世界大戦を背景に、二大スターの共演で壮大なラブロマンスを展開させた、と言いたいところだが、残念ながら道具立ての豪華さだけで終わってしまった感がある。
それは、何としても妻の疑惑を晴らしたいと考えるマックスの気持ちは分からなくはないのだが、周囲を巻き込んでのあまりにも身勝手な行動に閉口させられ、本当にこれでいいのかという違和感が拭えなくなるからだ。人物設定に失敗したと思うのは俺だけなのか。
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
トム・ハンクスが久しぶりに本領を発揮した
『王様のためのホログラム』
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https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1091996