田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ハイネケン 誘拐の代償』と誘拐映画

2015-06-30 10:24:34 | 新作映画を見てみた

アンソニー・ホプキンスの腹芸を見る映画



 1983年、オランダ・アムステルダム。大手ビール会社ハイネケンの経営者が、5人組の若者たちによって誘拐される。誘拐犯たちは巨額の身代金を要求するが…、という実話に基づく“誘拐物”。

 老獪な人質(アンソニー・ホプキンス)対素人の誘拐犯たち(ジム・スタージェス、サム・ワーシントンら)という妙な構図に興味が湧いたが、事件の経過や時間の流れ、犯人たちの迷いや変心の描き方が雑なのが難点。犯罪を描く映画でこれは痛いミスだと言えよう。

 また、格差社会への批判を描くでもなく、老ハイネケンが犯人たちに語る「裕福には二通りある。莫大な金を手にするか、大勢の友人を持つかだ。両方手にすることはできない」というセリフだけで全てが集約されてしまう感もある。という訳で、残念ながら、ホプキンスの腹芸を見る映画という印象しか残らない。

 ところで、この映画を見ても、誘拐は割に合わない犯罪だということがよく分かるのだが、リーアム・ニーソン主演、スコット・フランク監督の『誘拐の掟』(14)、 実話を基に、チャップリンの遺体を“誘拐”した二人組の姿をコミカルに描く、グザビエ・ヴォーヴォワ監督の『チャップリンからの贈りもの』(14)と“誘拐物”の公開が続く。誘拐はそれ自体がドラマチックだから映画の題材としては取り上げやすいということなのだろうか。

 過去にもさまざまな“誘拐映画”があったので、思い付くままに書き出してみる。

 『天国と地獄』(63)黒澤明、『喜劇 大誘拐』(76)前田陽一、『誘拐報道』(82)伊藤俊也、『大誘拐』(91)岡本喜八、『誘拐』(97)大河原孝夫、『踊る大捜査線 THE MOVIE』(98)本広克行、『八日目の蝉』(11)成島出

 『暗殺者の家』(34)アルフレッド・ヒッチコック、『バルカン超特急』(38)アルフレッド・ヒッチコック、『知りすぎていた男』(56)アルフレッド・ヒッチコック、『捜索者』(56)ジョン・フォード、『雨の午後の降霊祭』(64)ブライアン・フォーブス、『コレクター』(65)ウィリアム・ワイラー、『傷だらけの挽歌』(71)ロバート・アルドリッチ、『オリエント急行殺人事件』(74)シドニー・ルメット、『愛のメモリー』(76)ブライアン・デ・パルマ、『ミッシング』(82)コスタ・ガブラス、『パーフェクト・ワールド』(93)クリント・イーストウッド、『身代金』(96)ロン・ハワード、『ファーゴ』(96)ジョエル・コーエン、『フライト・プラン』(05)ロベルト・シュヴェンケ、、『96時間』(08)ピエール・モレル、『それでも夜は明ける』(14)スティーブ・マックィーン

 他にもたくさんあると思われるが…。今日はここまでに。

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【ほぼ週刊映画コラム】『悪党に粛清を』

2015-06-27 20:28:45 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

西部劇の伝統を踏まえて作られた
『悪党に粛清を』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1004385
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【ほぼ週刊映画コラム】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

2015-06-20 19:42:21 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

30年ぶりに“狂気=マッド”の世界が復活
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』



今週の名セリフは↓

「俺に残された本能が“生きろ”と叫ぶ」
byマックス・ロカタンスキー(トム・ハーディー)


詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1003363
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『靴職人と魔法のミシン』

2015-06-17 10:32:32 | 新作映画を見てみた

俳優の演技力で見せるファンタジー



 ニューヨークの下町ロウアー・イースト・サイドの片隅で小さな靴の修理店を営む、ユダヤ系の平凡な男マックス(アダム・サンドラー)。行方不明となった父(ダスティン・ホフマン)の代わりに、隣の床屋(スティーブ・ブシェミ)が何かと彼の世話を焼く。

 ある日マックスは、先祖伝来の旧型ミシンで修理した靴を履くと、靴の持ち主に変身できることを知る。変身を楽しむマックスだが、やがて街を揺るがす地上げ騒動に巻き込まれていく。

 『扉をたたく人』(08)を監督し、『ミリオンダラー・アーム』(14)の脚本を書いたトム・マッカーシー監督作。特撮ではなく俳優の演技力で見せるファンタジーという設定は好ましいが、肝心の人物描写やディテールが雑なところが残念。

 また本作は、ウディ・アレンの諸作同様、ユダヤ人たちの風俗習慣が色濃く描かれ、興味深くはあるのだが、日本人には分からないところも多い。コメディーとして楽しむにはそこがネックになる。



 ところで、ニューヨークの下町を舞台にしたファンタジーで、同じく地上げ屋の存在を描いた映画として、スピルバーグ製作の『ニューヨーク東8番街の奇跡』(87)を思い出した。これを機に、久しぶりに見直してみようかな。

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【ほぼ週刊映画コラム】『海街diary』

2015-06-13 19:24:59 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

広瀬すずが素晴らしい!
『海街diary』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1002339
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『サイの季節』バフマン・ゴバディ監督に取材

2015-06-10 08:47:30 | BIG ISSUE ビッグイシュー

 『ペルシャ猫を誰も知らない』(09)を撮影後、イランを離れ亡命生活を送るクルド人監督バフマン・ゴバディ。彼のトルコで撮影された新作『サイの季節』が7月11日から公開される。主人公のサヘルは、イラン革命に運命を翻弄された実在のクルド人詩人サデッグ・ギャマンガールをモデルに創造された。

 1979年、イランで親米王政に異を唱えるイスラム教シーア派による革命が勃発。詩人のサヘルは、ある男の企みによって反革命的な詩を発表した罪で投獄される。サヘルは30年間の獄中生活を強いられ、妻には彼の“死亡”が伝えられていた。釈放されたサヘルは、妻がイスタンブールで暮らしていることを突き止めるが…というストーリーだ。



 来日したゴバディ監督に、主人公のサヘルは監督自身の姿を投影させたキャラクターなのか? 不思議なタイトルの意味は? 『酔っぱらった馬の時間』(00)『亀も空を飛ぶ』(04)『ペルシャ猫を誰も知らない』、そして本作とタイトルに必ず動物の名前を入れる理由は? そして、本作に込めた思い、などを聞いた。

 日本が大好きだというゴバディ監督は「一番好きな映画は黒澤明の『セブン・サムライ(七人の侍)』。黒澤、小津安二郎、小林正樹らは、日本の監督というよりも、アジアの監督だと思っています。私は世界各地に行くたびに、アジアにはこんなにすごい監督がいると自慢しています」と語っていた。本作は、マーティン・スコセッシが提供し、主人公サヘルの妻役でモニカ・ベルッチが出演している。

 詳細は7月15日発売のビッグイシュー日本版をご覧ください。

http://www.bigissue.jp/

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『アクト・オブ・キリング』 『ルック・オブ・サイレンス』

2015-06-09 09:55:32 | BIG ISSUE ビッグイシュー

 アメリカのドキュメンタリー作家ジョシュア・オッペンハイマーが監督した『アクト・オブ・キリング』(12)は、1965年にインドネシアで行われた大量虐殺の実行者たちに取材し、彼らが自ら虐殺シーンを演じる映画製作の現場にカメラを向けた。

 この前代未聞の手法は殺人を正当化する心理的なメカニズムを明らかにし、見る者に大きな衝撃を与えた。

 殺人を正当化する心理的なメカニズムとは、例えば、映画の冒頭に引用された「殺人は許されない。犯した者は罰せられる。鼓笛を鳴らして、大勢を殺す場合を除いて」というボルテールの言葉。

 「一人殺せば悪党で、百万人殺せば英雄になる。数が殺人を正当化する」とした『チャップリンの殺人狂時代』(47)のセリフ。

 『ハンナ・アーレント』(12)に登場した、ナチスドイツの高官として多くのユダヤ人を強制収容所に送りながら、思考を放棄して命令に従っただけの平凡な小役人とされたアイヒマンの姿などにも象徴されるだろう。

 

 その『アクト・オブ・キリング』の続編とも言える『ルック・オブ・サイレンス』が7月4日から日本で公開される。

 この映画では、兄を殺されたアディ・ルクンさんが、加害者たちに虐殺の真意を問う姿が映し出される。

 来日したアディさんに事件から長い時を経て、なぜ加害者たちと直接会おうと考えたのか、映画に出て変化したこと、インドネシアの現状などについて話を聞いた。

 詳細は7月1日発売のビッグイシュー日本版をご覧ください。↓
http://www.bigissue.jp/

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【ほぼ週刊映画コラム】『ピッチ・パーフェクト』『踊るアイラブユー』

2015-06-06 20:30:07 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

1980年代を強く意識した音楽映画
『ピッチ・パーフェクト』と『踊るアイラブユー』

 

詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1001308
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