田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

デビッド・リンチの映画『デューン/砂の惑星』

2025-01-18 09:03:19 | 映画いろいろ

『デューン/砂の惑星』(84)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b60e8b752785bcf80f3c3f0ffe1de8ed


 リンチに関しては、『デューン/砂の惑星』で幻滅し、代表作と言われる『ブルーベルベット』(86)『ワイルド・アット・ハート』(90)を見逃し、WOWOWでやっていた「ツイン・ピークス」のブームにも乗れず、途中で見るのをやめた。というわけで、個人的には相性の悪い監督だった。

 最近のリンチは、ドキュメンタリー『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』(22)で製作総指揮を務めたり、スピルバーグの『フェイブルマンズ』(22)でジョン・フォードを演じたりしていた。


『フェイブルマンズ』余話
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6a036aa86db6be8f2db7ebae00d86d56

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デビッド・リンチの映画『エレファント・マン』

2025-01-17 09:51:51 | 映画いろいろ

『エレファント・マン』(80)(1981.5.30.有楽座)

慈善と偽善は紙一重

 この映画の予告編を見た時からすでに魅せられていたのだが、その期待通りの素晴らしい映画だった。ジョン・メリック(ジョン・ハート)という19世紀のロンドンに実在し、その奇形ぶりから「エレファント・マン」と呼ばれた人物を題材にしている。

 メリックの奇異な見た目故に、周囲の人間たちが彼に抱く優越感や浮かべる嘲笑、彼を利用する醜さがあらわになる。一方、メリックは見た目は醜いが、崇高さや優しさを持っているという矛盾がある。これらを通して、人間本来の姿とは一体何なのかを問い掛ける。

 全編、胸が締め付けられるような、何とも言えない悲しさに貫かれた映画だが、妙にじめじめしていないのはメリックを一人の人間として描き切ったからだろう。

 メリックは「私はエレファントではない。アニマルでもない。人間なんだ」と叫ぶ。彼のこの叫びがこの映画を救っている。周りがどう扱おうが、彼は最後まで人間として生きたのだということ。

 一方、メリックを見世物として引っ張り回すバイツ(フレディ・ジョーンズ)も、メリックに優越感を持って接するケンドール夫人(アン・バンクロフト)も、警備員や病院の人々も、皆悲しいほど人間くさい。そして恐らく自分も彼らと同類なのだ。メリックの良き理解者となるフレディ医師(アンソニー・ホプキンス)にしても、偽善者と言えなくもない。それは彼が「私は善い人間なのか、それとも悪い人間なのか」と悩む場面にも象徴される。

 この映画のテーマは黒澤明の『生きる』(52)と似ていなくもない。どちらも人間の尊さ、崇高さ、醜さ、ずるさという両極を見せながら、生きることや人間のあるべき姿を問い掛けてくるところがある。メリックをバイツの手下から逃がしてやる小人が「本当に幸せがほしいのは俺たちなんだ」と言うシーンも印象に残る。

 ジョン・ハートはもちろん、アンソニー・ホプキンス、アン・バンクロフト、ジョン・ギールグッド、ウェンディ・ヒラー、フレディ・ジョーンズがそれぞれ見事な演技を見せる。

 モノクロ画面の魅力を最大限に生かしたフレディ・フランシスのカメラワーク、フェイドインとフェイドアウトを使ってそれぞれのシーンに余韻を残す効果も素晴らしい。監督のデビッド・リンチはまだ33歳とのこと。その若さにしてこの映画を撮ったのはお見事。この映画のプロデューサーにメル・ブルックスが名を連ねていたのには驚いた。


当時のテレビ予告編にはなぜか『フィスト』(78)の音楽が使われていた。
https://www.youtube.com/watch?v=4QrZoyBTDWs


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『男はつらいよ 葛飾立志篇』『明治侠客伝 三代目襲名』

2025-01-10 00:21:43 | 映画いろいろ

『男はつらいよ 葛飾立志篇』(75)(2010.7.17.浅草名画座)

 久しぶりに映画館で寅さんと再会。今回は寅さんが樫山文枝演じる大学の助手にほれて学問に目覚めるのだが、東大法学部卒のインテリである山田洋次が描く、無学な寅さんが持つ滑稽さや悲しみ、そして無学故のたくましさという二律背反がこのシリーズに深みを与えていると感じた。

 個人的には、シリーズの舞台である葛飾・柴又の隣町に引っ越してきてから1年がたち、「男はつらいよ」シリーズへの親しみがさらに増した。それと共に、年を取るにつれて山田洋次の人間描写の確かさや細かいシーンのうまさに気がつくようになった。


『明治侠客伝 三代目襲名』(65)

 時代劇(様式美)と実録やくざもの(リアリズム)の間に挟まれた徒花のような東映任侠映画の代表作。加藤泰監督のローアングルへのこだわり、鶴田浩二のどこまでも説教くさいセリフ回し、ある意味で娘の寺島しのぶよりもずっと生々しい藤純子、いかにも憎々しい悪役の安部徹と大木実の存在感、冒頭でアラカンを刺す脇役・汐路章のすご味、まだマイワールドを構築する前の丹波哲郎の怪しい演技など見どころ満載で楽しんだ。

 なぜかピストルを持っている客人の藤山寛美、ラストの出入りに赴く鶴田浩二が馬に乗って行くところや貨物列車からぬーっと姿を現すシーンには西部劇的な趣きもある。

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『スティーヴン・スピルバーグ IMAX映画祭』

2024-12-29 10:56:35 | 映画いろいろ

 1月10日の『ジョーズ』(75)を皮切りに、『E.T.』(82)が1月24日、『ジュラシック・パーク 3D』(90)が1月31日から公開される。


『ジョーズ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e3f4e551d4ef9c382ae37997f36f4764

『E.T.』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/76ee67233b378c6d90ff3f3f72ead767

『ジュラシック・パーク』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/89211f1b761ac9e3c309ffe2b17c4b4b

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『人生劇場』永島敏行 その2

2024-12-22 09:44:30 | 映画いろいろ

『人生劇場』(83)

 青成瓢吉(永島敏行)は故郷を離れ、東京の早稲田大学で学生生活を送っていた。学生運動に熱中した瓢吉は、お袖(松坂慶子)と出会い愛し合うようになるが、やがて別れる。

 その後、作家を目指す瓢吉は、ある日、同じく作家志望の照代(森下愛子)と出会う。小説の懸賞で一席と二席を分け合った2人は、同棲生活を始める。そして2人のヨーロッパへの取材旅行が決まり、出向いた出版社のパーティで瓢吉と別れて女郎になったお袖と再会。お袖はすっかり変わり果てていた。

 尾崎士郎の同名小説、13回目の映画化。深作欣二が「愛慾篇」、佐藤純彌が「青春篇」、中島貞夫が「残侠篇」をそれぞれ担当して一本にまとめた珍しいタイプの映画。尾崎の遺族が侠客を中心として描いたそれまでの映画に難色を示したこともあり、この映画は青成瓢吉を中心としたものになっている。

 松坂、森下、中井貴恵の濡れ場のほか、吉良常に若山富三郎、飛車角に松方弘樹、宮川に風間杜夫、青成瓢太郎に三船敏郎というキャストも話題を呼んだ。大正時代の話ながら、瓢吉役の永島をはじめとするキャストや撮り方などに、作られた80年代初頭の映画界を取り巻く雰囲気が色濃く出ているのが面白い。永島は、松坂とは『事件』(78)、森下とは『サード』(78)でも共演している。

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『レイト・フォー・デイナー』

2024-12-17 09:44:26 | 映画いろいろ

『レイト・フォー・デイナー』(91)(1993.5.3.ビデオ)

 1962年。悪徳不動産にだまされ、あげくに誘拐犯に仕立て上げられたウィリー(ブライアン・ウィマー)と義弟のフランク(ピーター・バーグ)。彼らは、故郷を捨てての逃亡の途中で偶然出会った医学博士(ボー・ブランディン)によって冷凍睡眠にかけられてしまう。2人が冷凍から覚めたのは29年後だった。監督W・D・リクター。

 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズをルーズにしたような、いかにもB級といった感じの時間差を描いた映画。最初のうちは、出てくる俳優たちの素人っぽい演技に困惑していたのだが、途中からそのルーズさや素人っぽさが妙な味わいを出し始めた。これだから映画の良し悪しは最後まで見ないと分からない。

 例えば、ジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)を見た時の、見始めの戸惑いが妙な懐かしさに変化した感慨と似ているような気がした。おまけにリンダ・ロンシュタットの「(I Love You)For Sentimental Reasons」がバックに流れるラストシーンは、もろにフランク・キャプラタッチの心地よさがあり、最初の戸惑いを忘れてほのぼのとさせられてしまった。

 公開中のメル・ギブソン主演の『フォーエヴァー・ヤング 時を超えた告白』(92)も冷凍睡眠もの。タイムマシンものの後はフローズンがはやりのようで。こうも手を変え品を変えで時を超えた愛を描くということは、現実が殺伐としているせいなのか。いずれにせよ、映画だから表現できる夢の魔法にほかならない。

 この映画でも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』同様、時間差ネタとしてレーガン元大統領がコケにされていた。自分たちが選んだ大統領をここまでコケにするのをすごいと言うべきか。


(I Love You)For Sentimental Reasons
https://www.youtube.com/watch?v=kbE8Ns35GaI

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「丸ノ内線・ゴジラ70周年記念 東京メトロオリジナル24時間券」

2024-12-15 19:52:47 | 映画いろいろ

 丸ノ内線の駅構内で「丸ノ内線・ゴジラ70周年記念 東京メトロオリジナル24時間券」のポスターが目についた。でも『キングコング対ゴジラ』(62)で丸ノ内線を襲ったのはコングの方だったぞ。

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『二百三高地』

2024-12-15 16:45:47 | 映画いろいろ

 インタビューの関連で久しぶりにテレビ版「二百三高地 愛は死にますか」(81)の方を再見した。


『二百三高地』(80)(1980.9.7.蒲田トーエイ)

 『思えば遠くへ来たもんだ』『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(蒲田ロキシー)からはしごをして、久しぶりに1日に3本も映画を見た。しかもこの映画は3時間余り。きっと途中で飽きるだろうと高をくくっていたのだが、思わず引き込まれてしまった。

 見る前は、なぜ今時日露戦争下の肉弾戦を映画化したのかという疑問があり、それは最後まで引っかかったのだが、この映画は平板の戦争映画とは一味違っていた。

 それは、戦争を国家的な人物(明治天皇(三船敏郎)、伊藤博文(森繫久彌)、乃木希典(仲代達矢)、児玉源太郎(丹波哲郎)…)とわれわれ庶民の両極から描いている点だ。普通の戦争映画は、戦争をゲームのように前者の側から描いたものが多い。この映画も前者を描いた場面は確かに重厚だが、例えば、ラストの乃木の落涙シーンなどはさしたる感動もなく古めかしささえ感じる。

 ところが、対する後者(庶民)が実によく描かれている。小賀(あおい輝彦力演!)というインテリの小学校教師が主人公なのだが、この平和主義者が戦場で変わっていくさま、あるいは内地に残したに子どもに一目会いたいと一度は脱走を試みるが、やがては友たちと一緒に帰りたいと言いながら死んでいく染物職人の米川(長谷川明男が泣かせる)、バイタリティあふれる豆腐屋の九市(新沼謙治)、気のいいやくざの牛若(佐藤允)、幇間の梅谷(湯原昌幸)など、さまざまな人物が丁寧に描かれている。故に彼らが死んでいく戦場の地獄図には怒りを禁じ得ない。

 それは戦争を国家的な人物たちのゲームとしてではなく、その駒になって死んでいく者たちに重きを置いて描いているからだろう。彼らの姿はあまりにも悲惨であり、残酷であり、理不尽である。戦争はゲームではないのだ。その点が絞り出されているこの映画は見事だと言っていい。監督の舛田利雄、脚本の笠原和夫に拍手を送りたいと思う。さだまさしの「防人の詩」も映画の内容とマッチしていた。

 「戦場には体面も規約もありません。あるのは生きるか死ぬか、それだけです。死んでいく兵たちには国家も軍司令官も命令も軍紀もそんなもんは一切無縁です。焦熱地獄の底で鬼となって焼かれてゆく苦痛があるだけです。その苦痛を乃木式の軍人精神で救えますか」小賀が上官に向かって叫ぶこのセリフが、この映画の核だと言ってもいい。

 そして牛若が乃木に向かって言うこの一言も。「わしら消耗品ですけに」

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中山美穂『Love Letter』

2024-12-07 20:17:08 | 映画いろいろ

中山美穂といえばやはりこの映画になる。

『Love Letter』(95)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3b4d1fc09d00ddd18310d37f9a473e23


『青春18×2 君へと続く道』
台湾ではこの映画はとても人気があるらしい。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4800c4a5b73c6dc4f926d0a67ea9eb36

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「最後の秘密 スピルバーグ 映画と人生」(NHK)

2024-12-03 09:56:47 | 映画いろいろ

「STEVEN SPIELBERG,THE NEW HOLLYWOOD Prodigy」(24・仏・独・ルクセンブルク)

 ハリウッドを代表する映画監督でプロデューサーのスティーブン・スピルバーグ。半世紀以上にわたり第一線で活躍を続けてきた彼が、自らの人生と映画、創作の源を明かすドキュメンタリー。 

 「私の映画はどれも個人的で多くは家族がテーマ」と語るスピルバーグ。人格形成期に体験した両親の離婚や、ユダヤ系アメリカ人であるために味わった差別など、心の傷を反映した作品を多く手がけてきた。映画を作ることで傷を乗り越えてきたスピルバーグが「最後の秘密」を明かす。


 自伝的な『フェイブルマンズ』(22)は言わずもがなだが、例えば、『未知との遭遇』(77)の主人公でUFOを目撃したことでおかしくなる電気技師ロイ(リチャード・ドレイファス)の家庭は崩壊。サブ主人公のジリアン(メリンダ・ディロン)はシングルマザー。『E.T.』(82)の主人公の母メアリー(ディー・ウォレス)も事実上はシングルマザーだ。これらはスピルバーグ自身の両親の姿を反映させたものだろう。

 一方、『ポルターガイスト』(82)『グレムリン』(84)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)『ハリーとヘンダスン一家』(87)といった製作に回った映画の家族は両親がそろっているのも偶然とは思えない。

 ここに「インディ・ジョーンズ」シリーズの根底に流れる“ナチス嫌い”も含めて考えると、スピルバーグはSFファンタジーや冒険活劇の奥に個人的な思いを潜ませてきた監督だと言えるだろう。


『レディ・プレイヤー1』祭り
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/886ceb63df4452ecfdf7065128abc607


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