田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『愛が微笑む時』(93)

2016-03-31 09:53:26 | All About おすすめ映画

ダウニー・Jr.が一人四役で見せる

 『トレマーズ』(89)『シティ・スリッカーズ』(91)に続いてロン・アンダーウッドが監督した“ゴースト・コメディ”です。

 出産直前で病院へ急ぐ夫婦を乗せた車がバスと衝突。事故で亡くなった4人の乗客(チャールズ・グローディン、カイラ・セジウィックら)が幽霊となって、事故時に生まれたトーマスのお守り役になります。

 1950年代を舞台にしたこの導入部のノスタルジックな雰囲気がなかなかいいのです。

 やがてトーマスの将来を気遣った4人は身を隠しますが、成人したトーマス(ロバート・ダウニーJr.)は彼らの存在を忘れて無慈悲な仕事人間に。

 そんな中、成仏の時が迫った4人は、トーマスに乗り移ってこの世に思い残したあれこれを達成しようとします。

 ここからこの映画はコメディとしての真価を発揮します。4人に乗り移られたダウニーJr.が一人で四役を演じて大いに笑わせてくれるのです。

 同時期に『チャーリー』(93)で喜劇王チャールズ・チャップリンを見事に演じた、彼ならではの芸当です。

 そして笑った後にはトーマスと4人による心温まる人情話も用意されています。

 スティーブン・ビショップが歌う主題歌「Heart and Souls」もメロウな名曲です。

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『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』(90)

2016-03-30 11:29:52 | All About おすすめ映画

西部劇入門編



 マーティ(マイケル・J・フォックス)とドク(クリストファー・ロイド)を主人公にしたタイムトラベル・シリーズの完結編です。このシリーズは、タイムマシンを使って、1作目はマーティと彼の両親、2作目は悪役のビフ、この3作目はドクの人生に収拾をつけたとも言えます。

今回の主舞台となるのは西部開拓時代です。マーティはこの時代ではクリント・イーストウッドを名乗ります。服装も『荒野の用心棒』(64)のイーストウッドを意識したもの。最後の宿敵ビフとの対決にも『荒野の用心棒』のパロディが用意されています。これらは西部劇の代名詞がイーストウッドなのだと宣言しているようなものです。

 加えて「銃はどこで覚えた」と聞かれたマーティが「セブンイレブン(ゲームセンター)さ」と答えるなど小ネタも効いています。また、女教師クララ(メアリー・ステインバーゲン)とドクの恋は、ジョン・フォード監督の名作『荒野の決闘』(46)パロディです。ほかにも西部の町の風景、SLを使ったアクションなど西部劇の要素を満載しています。

 製作のスピルバーグと監督のロバート・ゼメキスは、さまざまな事情から西部劇が撮れない現状を憂いて、例え変則的な形であっても撮るべきだと考えたといいます。今は、西部劇と聞くと古臭いと感じる人も少なくないようですが、この映画を入門編としてぜひほかの西部劇にも触れてみてください。

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『天国に行けないパパ』(90)

2016-03-29 08:31:23 | All About おすすめ映画

神のいたずらが積極的な人生を



 この映画の主人公は、定年間際の窓際刑事バート(ダブニー・コールマン)です。彼は無事に年金を手にするために安全第一がモットーの男。危ない捜査があれば、何かと理由をつけて回避します。ところが、保険に加入するための健康診断を受けたところ、医師から「難病に侵されているのであと2週間の命だ」と宣告されてしまいます。原題の「Short Time」はここから付けられています。

 死を覚悟したバートは自らの人生を見詰め直し、元妻(テリー・ガー)とまだ幼い子供のために何が残せるかを考え、派手に殉職して多額の保険金を得ることを思いつきます。かくして、一転、危険な事件に進んで乗り出すバートでしたが、皮肉なことに殉職するどころか次々と手柄を立ててしまいます。

 優れたコメディの多くは、当事者は真剣なのに他人から見れば喜劇に映るというギャップから生まれますが、この映画はその最たる物。実はバートは難病ではないのですが、誤診という神のいたずらが、逆に積極的な人生をもたらし幸せを運んでくる様子を描いたハートウォーミングなコメディになっています。カーチェイスなどのアクションシーンに手を抜いていないところも高ポイント。バート役のコールマンが実にいい味を出しています。

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『レインメーカー』(97)

2016-03-28 08:31:12 | All About おすすめ映画

正義に目覚めていく青年の法廷ドラマ




 悪徳弁護士ブルーザー(ミッキー・ローク)に雇われた弁護士志願のルーディ(マット・デイモン)。彼は、白血病の子供を抱える貧しい一家と保険会社との訴訟に関わることで正義に目覚めていきます。

 フランシス・フォード・コッポラ監督は、ジョン・グリシャムの複雑な原作を新米弁護士の成長物語として整理し、法廷での駆け引きを最大の見どころとしました。

 「ボーン~」シリーズで肉体改造をする前のデイモンには、純朴な田舎の青年役がよく似合います。彼を取り巻く、ローク、ダニー・デビート、ジョン・ボイト、ダニー・グローバー、ロイ・シャイダーら、海千山千の俳優たちの演技も見ものです。また、この映画は往年の名女優テレサ・ライトの遺作になりました。

 もともと「レインメーカー」という言葉には、雨を降らせて収穫をもたらしてくれる人という意味があります。転じて、法曹界では高額な報酬をもたらす依頼人を連れてくる弁護士のことを差す隠語となりました。

 この映画のタイトルの場合は、主人公ルーディの変化を象徴する言葉として、両方の意味が込められています。タイトルの意味を知ると、さらに深く映画を楽しむことができます。

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【ほぼ週刊映画コラム】『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』

2016-03-26 20:17:02 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

アメリカが抱えるジレンマを如実に反映した
『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1042611
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『スニーカーズ』

2016-03-25 08:44:27 | All About おすすめ映画

『スニーカーズ』(93)

ハイテク冒険泥棒映画

 1969年、大学生のビジョッブとコズモが政府や大統領を扱う銀行にハッキングし、大金を福祉機関に寄付しますが、コズモだけが逮捕されてしまいます

 時は流れ、「スニーカーズ」という秘密のハイテク専門家集団を組織したビジョッブ(ロバート・レッドフォード)のもとに、国家安全保障局から超性能の暗号解読機を盗み出す仕事が舞い込みます。それは悪のハッカー組織のボスとなったコズモ(ベン・キングスレー)との)との再会と対決を意味していました。

 この映画の最大の見どころは、リーダーのビショップをはじめ、元CIA(シドニー・ポワチエ)、コンピューターマニア(リバー・フェニックス)、メカのプロ(ダン・エイクロイド)、オーディオの天才(デビッド・ストラザーン)といった、スニーカーズの個性豊かなメンバーによるチームワークです。

 同じくレッドフォード主演の『ホット・ロック』(72)のその後を描いたような趣があって楽しめます。加えて『フィールド・オブ・ドリームス』(89)のフィル・アルデン・ロビンソン監督が、ストーリーを二転三転させるダマシのテクニック、ハイテクの落とし穴、ヒューマンな味わい、夢の成就といった素材を手際良くまとめています。

 公開当時はこの映画で描かれたようなハッカーという存在が今ほど現実的ではありませんでした。また、ビジョッブとコズモにビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの姿が重なるところもあります。そう考えると、この映画は近未来を予期したものだったとも思えるのです。

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『泥の河』

2016-03-24 10:43:45 | All About おすすめ映画

『泥の河』(81) (1981.6.11.東急名画座)

モノクロで昭和30年代初頭を再現

 この映画は、宮本輝の作家デビュー作を、小栗康平が自主製作の体裁で監督したものです。

 昭和30年代初頭の大阪を舞台に、川べりの食堂で暮らす少年と、対岸に繋がれた廓舟の姉弟との出会いと別れを描きます。小栗監督は、原作の世界を生かすにはモノクロ、スタンダードサイズで撮ることが適当だと考えました。そして製作当時はすでに珍しいものになっていたモノクロフィルムでの撮影を、ベテランカメラマンの安藤庄平が担当し、数々の撮影賞に輝きました。

 戦争の影を引きずって生きる大人たちを田村高廣、藤田弓子、加賀まりこらが好演。オーディションで選ばれた子役たちも見事に昭和30年代の子供を演じました。

 ラストシーンで、去っていく廓舟をどこまでも追っていく少年の姿は『禁じられた遊び』(52)のラストの少女の姿とも重なります。この映画は、直接戦争を描いたものではありませんが、形の違う反戦映画だとも言えるのです。

 時代に逆行するような形で撮られたこの映画が、堂々とアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたことも大きな出来事でした。

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『古書街キネマの案内人 おもいで映画の謎、解き明かします』(大泉貴)

2016-03-23 10:21:55 | ブックレビュー

『古書街キネマの案内人 おもいで映画の謎、解き明かします』 (大泉貴 ・宝島社文庫)を読了。



 大学生の多比良龍司は、映画にまつわる悩みを解決する“キネマの案内人”六浦すばるにひかれ、名画座「神保町オデヲン」でアルバイトを始めるが…。29歳という、自分から見れば十分な“若者”による、名画座を舞台にした4話構成の連作短編集。名画座のモデルは神保町シアターで、ノスタルジックな味わいを出そうと努力した跡がうかがえる。

 主人公の龍司のモデルは恐らく作者自身だろう。映画館やフィルムについての描写は実体験がなければ書けないところがある。遥か昔の学生時代の4年間、旧東洋現像所(現イマジカ)でアルバイトに励んだ我が体験とも重なるところがあった。

 さて、それぞれの話の“主役”となる映画は、『E.T.』『羅生門』『イングロリアス・バスターズ』『私の鶯』。それぞれの映画に対する人々の思いが、すばるの言葉を借りて明かされるという謎解きの要素もある。

 古い映画についてはさまざまな映画本やインターネットから得た知識や情報を基にしているのだろうが、その映画を見ていなくても、あるいは作られた時代や背景を直接知らなくても、こうしたライトノベルが書けてしまうのだから今の若者はすごいと言うべきか。これは小説を書くと言うよりも、ゲームのストーリーを考えるような感覚から生まれてくるものなのかな。もちろん?と思える描写も少なくないが、読みながら、ここにも“映画愛”があると感じてうれしくなった。

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『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』

2016-03-22 09:00:00 | 新作映画を見てみた

これならシャーロキアンも満足か



 探偵を引退後、93歳となったシャーロック・ホームズ(イアン・マッケラン)が、老いと闘いながら、引退の原因となった事件を回顧する。アーサー・コナン・ドイル原作の「名探偵シャーロック・ホームズ」のパスティーシュ(作風模倣)映画。監督は『ドリームガールズ』(06)などのビル・コンドン、脚本はジェフリー・ハッチャー。

 ワトソンら、友は皆亡くなり、一人生き残った老人の孤独と後悔の日々に一筋の光を差す少年との交流、ヒッチコックの『めまい』(58)を思わせる、過去の切ない事件の回想などが、英国ミステリー独特の深い味わいの中に描かれる。

 マッケランはもとより、ホームズの世話をする親子を演じたローラ・リニーとマイロ・パーカーが好演を見せる。『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』(85)で若き日のホームズを演じたニコラス・ロウが、劇中映画でホームズを演じるサービスもある。また、真田広之が登場する日本でのエピソードは静岡県の大井川鉄道や千葉県の佐原でロケが行われたという。

 これならシャーロキアン(ホームズの熱狂的なファン)も満足かという出来栄えだ。

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タイムトラベル映画

2016-03-21 15:25:57 | 映画いろいろ



 『僕だけがいない街』のストーリーの核は、「主人公が大人の意識と記憶を持ったまま、子供のころの自分の体に戻る」というところにある。一口にタイムトラベルと言っても、いろいろな種類があるようで、この主人公のような、特殊能力を使っての時間旅行は「タイムリープ」と呼ばれる。

 ほかにタイムリープを扱った映画は、『時をかける少女』(83)『未来の想い出』(92)『バタフライ・エフェクト』(04)『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(13)などがある。

 そのほか、「タイムトラベル」は、時間旅行全体のほかに、タイムマシンなど何らかの装置を使っての時間旅行を差すので、元祖『タイムマシン』(59)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『ターミネーター』シリーズ、『12モンキーズ』(95)、『ルーパー』(12)などがこれにあたる。

 片や「タイムスリップ」は、事故や災害など無作為な自然の力による時間旅行を表わすので、『戦国自衛隊』『ファイナル・カウントダウン』(80)『ある日どこかで』(80)などがこの種別に入る。

 もう一つ、同じ時間を何度も繰り返す=時間の反復は「タイムループ」と呼ばれる。これは描き方によってはまさに“ネバーエンディング・ストーリー”にもなるわけだが、『恋はデジャ・ブ』(93)『タイムアクセル12:01』(93)『ターン』(01)『ミッション:8ミニッツ』(11)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)など、どちらかと言えば、ここに佳作が集中しているような気もする。

 ところで、『12モンキーズ』で、過去と未来を行き来するブルース・ウィリス扮する主人公が、ヒッチコックの『めまい』(58)を見ながらこんなセリフを言う。「過去も映画を見るのと似ている。映画は同じなのに、見る自分が変わると違う映画に見える」と。もともと映画には現在、過去、未来のどこにでも行けるタイムトラベル的な要素があるが、このセリフを聞いた時に、映画を見ること自体が一種のタイムトラベルなのかもしれないと思ったものだった。

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