田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『カフェ・ド・フロール』

2015-03-28 20:29:11 | 新作映画を見てみた



“禁じ手”テーマを消化しきれず

 『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)のジャン=マルク・ヴァル監督が11年に撮った作品。

 1969年のパリで暮らすシングルマザー(バネッサ・パラディ)とダウン症の息子、現代のモントリオールで暮らすDJと恋人、そして別れた妻。異なる二つの時代を交錯させながら、彼らに関する不思議なつながりと愛の形を描く。

 マルク・ヴァル監督は輪廻転生、前世や魂の存在など、答えのない“禁じ手”とも言うべきテーマに挑んでいるが、もとより消化しきれずに支離滅裂となり、後半はオカルトもどきの様相を呈していく。

 その分、パラディの狂気と妖気を感じさせる演技が際立つが、結局のところ、奇策を用いた“怪作”という印象にとどまる。

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【ほぼ週刊映画コラム】野球映画の“ベストナイン”

2015-03-28 19:22:13 | ほぼ週刊映画コラム

TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

球春到来! 野球映画の“ベストナイン”を紹介

詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/992252

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【インタビュー】『サンドラの週末』のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督

2015-03-27 10:24:51 | BIG ISSUE ビッグイシュー

『ある子供』(05)公開時以来、約10年ぶりに
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督にインタビュー取材。



今回はマリオン・コティアール主演の『サンドラの週末』について。

映画の内容は
病が癒え、仕事に復帰する予定だったサンドラは、ある金曜日に突然解雇を言い渡される。
解雇を覆すには、半数以上の同僚が、自分たちのボーナスを諦めてサンドラの復職に投票する以外に方法はない。
投票日は月曜。こうして同僚を必死に説得して回るサンドラの長い週末が始まった。

原題は「2日と1晩」。
サンドラの運命は一体どうなるのかというサスペンスの要素もある。

孤独ではない主人公、希望のあるラストシーン、音楽の使い方など、
作風のさまざまな“変化”を中心に聞いた。

詳細は後ほど。

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『陽だまりハウスでマラソンを』

2015-03-24 18:18:29 | 新作映画を見てみた

人生の最後をどう迎えるべきか…



 妻と共に老人ホームに入所した元五輪マラソンの金メダリスト、パウル。ホームでの暮らしに不満を持った彼は、ベルリン・マラソンへの出場を目指してトレーニングを始めるが…。

 パウルを演じたディーター・ハラーフォルデンについては全く知らなかったが、ドイツを代表する大ベテランの喜劇俳優とのこと。彼の頑張りとそれを支える妻役のタチア・ザイプトの控えめな演技という対象の妙が印象に残る。

 本作は、ホームの老人たちの群像劇として見てもなかなか面白い。パウルに感化され、生気を取り戻していく彼らの姿は『コクーン』(85)、善を成そうとしながら悪になってしまう管理側の姿は『カッコーの巣の上で』(75)をほうふつとさせる。人生の最後をどう迎えるべきかについて考えさせられるところもある。

『人生はマラソンだ!』などマラソンを扱った映画については こちら↓
http://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/71bc835a7c3e6b3ef0d98d1f38d0dd7a

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【ほぼ週刊映画コラム】『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』

2015-03-21 19:04:47 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

名優ロビン・ウィリアムズをしのぶ
『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』
本作はミッキー・ルーニーの遺作でもある。



今週の名セリフは↓

「Smile, my boy. It's sunrise.」
byデディ・ルーズベルト(ロビン・ウィリアムズ)


詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/991496
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【インタビュー】『小さき声のカノン』鎌仲ひとみ監督

2015-03-17 10:26:25 | BIG ISSUE ビッグイシュー

『THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本版259号』
『小さき声のカノン』鎌仲ひとみ監督に取材したインタビュー記事が掲載。
今号の表紙はリース・ウィザースプーン。



本作は、
福島原発の事故後、福島で家族一緒に暮らすことを選択した母親たちが、
葛藤しながらも子どもたちを守るための方法を模索し続ける姿、
またその支援に携わる人々の姿を描いたドキュメンタリー映画。

恥ずかしながら、この映画を通して、
保養(放射能汚染の高い地域に住んでいる子どもたちを、
一定期間、汚染のない地域で過ごさせることで、体内の放射性物質を排出し、
病気になるリスクを軽減すること)が行われていることを初めて知った。

街で販売員の方を見掛けられましたらぜひご購入、ご一読ください。
ビッグイシュー日本版の詳細はこちら↓
http://www.bigissue.jp/


『小さき声のカノン―選択する人々』のホームページはこちら↓
http://kamanaka.com/canon/

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『ブルックリンの恋人たち』

2015-03-16 19:41:00 | 新作映画を見てみた

“迷作”と出会ってしまった時は…



 フラニー(アン・ハサウェイ)は、交通事故で昏睡状態に陥ったミュージシャン志望の弟の足跡をたどる中、弟が憧れていたミュージシャンのジェームズ(ジョニー・フリン)と出会う。

 ニューヨークを舞台に、音楽を介して出会った男女の物語を描き、しかも旬の女優が主演した小品という点では、キーラ・ナイトレイの『はじまりのうた』にも通じるものがあるが、出来の方は大違い。フラニーの心境の変化、ジェームズとの関係の描き方が中途半端でよく分からないし、肝心の音楽の魅力も薄い。

こうした“迷作”と出会ってしまった時は、「どんな映画でも必ず何か一つは見どころがあります。それはストーリーとは直接関係ないシーンかもしれない、または脇役、小道具、なんでもいいんです。とにかく自分で何かを見付けることが大切なんです」という、淀川長治先生の助言を思い出すことにしている。

 今回は、フラニーの母親役のメアリー・スティーンバージェンの存在と、フラニーが“心の歌”としてアメリカの「アイ・ニード・ユー」を歌うところを見どころとした。

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【ほぼ週刊映画コラム】『イミテーション・ゲーム~』  『博士と彼女のセオリー』

2015-03-14 20:45:14 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

単なる昔話では終わらない
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』と『博士と彼女のセオリー』

 

今週の名台詞は↓

「時として、誰もが想像しないような人物が偉業を成し遂げる」
by『イミテーション・ゲーム』アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)

「さあ、時間を巻き戻すんだ」
by『博士と彼女のセオリー』スティーブン・ホーキング(エディ・レッドメイン)


詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/990706
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『キネマの神様』(原田マハ)を再読

2015-03-13 09:27:28 | ブックレビュー

 金城一紀の『映画篇』に続いて、原田マハの『キネマの神様』を再読。



 「ああ、おれはほんとに映画が好きだ。映画が好きで、映画を観続ける人生でよかった」「ずいぶん映画を観てきたつもりだったけど、おれが死んでからも、数えきれないくらいの名作が、生まれてくるんだろうな。ああ、畜生。それ、全部観たいなあ」

 などのセリフに象徴される、映画と映画館への愛に満ちた好編。何度読んでも“キネマの神”の存在を信じたくなるようなパワーを感じる。本作に登場する架空の名画座「テアトル銀幕」の場所は市ヶ谷だが、お隣の飯田橋に実在するギンレイホールとイメージが重なるところがある。

 以前読んだ時よりも、名画座を取り巻く状況はさらに悪化し、閉館を余儀なくされた所も少なくない。現実は厳しく、本作で描かれるフランク・キャプラの映画のような、神業のような奇跡は起こらないが、だからこそ、解説で片桐はいりが書いたように、「正しい事実より、楽しい作り話の方が好き」なのだ。

以前取材した「違いのわかる映画館」飯田橋ギンレイホールはこちら↓
http://season.enjoytokyo.jp/cinema/vol08.html

作中や解説にも登場するシネスイッチ銀座(旧銀座文化)はこちら↓
http://season.enjoytokyo.jp/cinema/vol12.html

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ポーランドに名匠が多い理由は?

2015-03-12 09:23:48 | BIG ISSUE ビッグイシュー

『パプーシャの黒い瞳』のヨアンナ・コス=クラウゼ監督とこんな話をした。



 「ポーランド映画界はアンジェイ・ワイダ、イェジー・カワレロウィッチ、ロマン・ポランスキー、クシシュトフ・キェシロフスキ、女性ではアニエスカ・ホランド…と、世界的な名匠を数多く生み出しています。その理由はどこにあるとお考えですか」

 すると彼女はこう答えた。

 「一番の理由は教育だと思います。ポーランドには国立の映画大学(ウッチ)があり、そこで教えていた人たちが素晴らしかったのです。彼らは皆二十歳ぐらいの時に戦争を経験したので、若者でありながらとても成熟していました。そのことがポーランド映画の知的、心理的な部分に影響を与え、高水準な映画を生み出すことにつながったのだと思います」

 「もう一つは、映画が作られた第二次大戦後の時代や政治的な背景が大きく影響しています。あの時代は物事に対して正直に発言することがなかなか難しかったので、監督たちは検閲の目をかいくぐりながら、いかに真実を物語るかということを考え、その中から、いい意味での映画的な狡猾さやテクニックを身に付けていったのです」

 なるほど。

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