『オールウェイズ』(89)(1990.4.17.日本劇場)
今度は霊界がはやり
森林火災消火隊のパイロット・ピート(リチャード・ドレイファス)は、消火作業中、親友のアル(ジョン・グッドマン)を救うが、自分は墜落死する。天使のハップ(オードリー・ヘプバーン)に導かれたピートは消防飛行士養成所の青年テッド(ブラッド・ジョンソン)の守護霊となるが、テッドは、ピートの恋人だったドリンダ(ホリー・ハンター)のことが好きになってしまう。ピートはドリンダの幸せを願うが…。
一時ブームだったスペースオペラが下火になったと思ったら、今度は洋の東西を問わず霊界ブームなのか。例えば、『異人たちとの夏』(88)『フィールド・オブ・ドリームス』(89)、そしてこの映画、(丹波哲郎の『大霊界』(89)も入るか?)と、生者と死者との絡みを描いた映画が目に付く。そうした流れを、ヒットメーカーのスピルバーグが放っておくはずもなく、出るべくして出てきた映画という気はする。
ここのところ、映画で夢を語るには、宇宙にまで話を持っていかなければならなかったが、とりあえず、地球内には戻ってきたといったところか。宇宙映画の火付け役の一人であるスピルバーグが、この映画を撮ったのも象徴的だ。
ところで、スピルバーグが売れっ子監督になってから、これほど話題に上らず、半ば無視されて公開された映画はなかったのだが、その半面、彼がヒットメーカーになる前の、素直な自分に必死に回帰しようとしている節がうかがえる映画になっている。
これは、行くところまで行ってしまったコッポラが、必死になって元の自分に戻ろうともがいている姿と重なるところがある。それ故、死後に恋人が他の相手とくっつく手助けをさせられる主人公、というストーリー設定の切なさが胸に迫ってきた。
先頃、来日公演を行ったポール・マッカートニーの「ディス・ワン」という曲は「今、好きだと言わないと手遅れになって後悔するよ」と歌われていたが、それを映画として描くと、こんな形になるのかなあと思った。スピルバーグとポールがつながったと、勝手に思って喜ぶオレは変なのか。
この映画のキーとなった曲は「煙が目にしみる」だった。劇中でこの曲を見事に歌ったのが、かのJ・D・サウザーだったことをエンドクレジットで知らされた。これだから、エンドクレジットが終わるまで席を立ってはいけません。『フィールド・オブ・ドリームス』の「For our Parents」を見ずに席を立って悔しい思いをした人も多かったらしいから。
【今の一言】この映画のすぐ後に、同種の『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)がヒットして、ますますこの映画の影が薄くなった。自分は意地になって『オールウェイズ』派を名乗ったのだが、これは『未知との遭遇』(77)と『スター・ウォーズ』(77)の時と同じだと思ったものだった。
『ゴースト/ニューヨークの幻』
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