『付き合ってください』
『えっ。』
突然の告白に驚いた。けど、川島健吾くんはいつだって真面目だ。だから、冗談を言ってごまかす事なんてできない。
「ダメかな?」
ちょっと申し訳なさそうに尋ねる川島君をちらっと見ると、ちょっと困った顔をしてる。
私が無理を言うときによくする顔だ。
「あっ、なんか・・・意外な展開に、驚いちゃった。」
とっさに言い返せたけど、ぜんぜん上手くない。
変な返事をしても川島君はいつも優しい。ごめんね川島。なんか答えなきゃ。
「う~ん・・・・・・。川島君て、すごく丁寧に英語教えてくれるし、喋っていても楽しいけど・・・・・・。なんて言うか・・・・・・。彼氏っていう目で見てなかったし・・・・・・。う~ん。なっていったらいいのかなぁ。」
横目で確認。あ~。やっぱ、よわってるよぉ。言い合いになって気まずくなったことはあるけど、こういうのはなかったから、なんか緊張してきた。
とりあえず、リラックス。手を組んで身体を伸ばすといいと誰かが言ってたっけ。
「う~ん。」
なるほど、身体を伸ばしてみると確かに落ち着く。でも川島君の緊張は継続中。
「あ~。やっぱり困るよね。突然そんなこと言われても。」
川島君すごく困ってる。こんな川島君を見るのは初めてかもしれない。
「・・・。なんか焦っちゃった。」
「そうだよねぇ・・・。やっぱり、好きな人がいるの ?」
どうしよう。そんなことを聞いてくるなんて思いもしなかった。
弱ったな。ごまかす事も出来るけど、それじゃあ、ますます気まずくなる。
やっぱ、ここは、嘘をつかずに言おう。
「あ~。うん。ずっと気になっている人はいるんだよね。その人の事を追って、進学したしね。」
ますます困った顔をする川島。ごめんね。でも、事実だから仕方ないよ。
先輩との出会いは中学1年生の3学期の終わり頃だったと思う。小学生の延長が抜け切れてなかった私は、学校の階段で、友達と、はしゃぎながら駆け下りてて、転びそうになった事があった。身体のバランスを崩し、ヤバいって思ったその時、偶然にも階段を上ってきた、1こ上の圭介先輩が、私をガシッと受け止めてくれた。それは、少女漫画のような展開で、ときめかないわけがなく、いきなり好きになってしまった。
そして、サッカー部だったことも知って、ますます好きになり、2年の2月にはチョコレートを渡した。でも、先輩はかっこよくてモテてたから、彼女になれないんだろうなと思いながらも、この想いが、いつか届くんじゃないかと思って、先輩の進学した高校へ私も進学した。
高校に入学してからも、ストーカーにはならない程度に、試合を観に行って応援したり、手紙を渡したりしていたから、その努力の甲斐もあってか、時々、カラオケに誘ってもらったり、LINEしたりする中にはなったけど、彼女というポジションには程遠いなと感じていた。それは、二宮佐紀さんという、この周辺の高校生の中では知らない人はいないという位、美人な人がいつもそばにいたからだ。二宮さんはサッカー部のマネージャーと言う立場だから、先輩との距離が近いとも思えたけれど、側から見ていると、「彼女」にしか見えない時もあった。だから、二宮佐紀さんと話をするチャンスが巡ってきたとき、思いきって、先輩との関係を聞いてみたけれど、二宮さんは、
「彼女じゃないよ」
と、圧倒的な笑顔で、涼しげに否定した。でも、私からすれば、簡単に信じられるわけがなかった。
だから、私のもやもやした気持ちは、先輩が卒業してからもずっと続いていた。いつか、はっきりさせなきゃと思っていた。そこへ、川島君の告白。私の頭の中は、おもちゃで散らかっている子供部屋のようになってしまった。
「そうかぁ・・・・・・。」
「うん。」
どうするだろ。諦めてくれるかな。でも、それはそれで、なんか寂しい気がする。
変な感じ。これは、今まで、感じた事のない気持ち。
どうしよう。まずは、先輩の気持ちを聞いた方がいいかな。それで、「友達」とか「可愛い後輩」とか言われちゃったら、悲しすぎるし。どうしたい私っ!
「そっ、そりゃ、そうだよね。好きな人がいない方が変だよね。平川さんは可愛いから、モテるしね。」
川島くん,珍しくきょどってる。それに、今そんなこと言われていも、どう答えていいか分かんないよ。かと言って、何も返事しないっていうの悪いしなぁ。もう、普通に答えちゃえ。
「いやぁ。そうでもないよ。」
「・・・そ、そうなんだ。」
ごめんね川島。余裕がない私にはこれが精いっぱい。もじもじしていると、川島君、思いつめた顔で話をつづけた。
「あのっ、平川さん。」
「うん ?」
「付き合っている人がいないんだったら、僕の事・・・考えてくれないかな ? 返事は急がないよ。気になる人に告白してからでもいいよ。それくらい僕は、平川さんの事が好きなんだ。」
うわぁぁ。マジヤバい。今日の川島君、いつもと違うよぉ。
川島君は、良い友達。それははっきりしてる。話も聞いてくれるし、勉強も教えてくれるし、その場の空気を読んでくれる。男子だけど、女子っぽい感覚があるのか、一緒にいても楽。
だから、川島君の気持ちを聞いた時、頭が真っ白になった。しかも、ちょっと嬉しいって気持ちもある。
私が告白されてるんだから、ここは甘えても悪くはない。
けど、テレもあって、真面目に答えられない。もう、いつもの感じでいこう。
「わかった。わかったよ。川島がそこまで言うなら・・・・・・。じゃあ・・・、考える時間もらっていい ?」
いやっ!はずかしい! 顔が熱い。こんな顔、川島君に見られたくない。
早く、ママの車にのってしまおう。そう決めた私は、川島君の一歩前に出て、返事を待たずに、足を速めた。
「もちろん。」
「なんか、ごめんね。中途半端になって。」
「僕の方こそ。」
「じゃあ、また明日ね。」
「うん。また明日。」
「バイバーイ。」
振り返りながら手を振って、ぎごちない笑顔で答える。こんなの、今までになかったな。
車に乗り込むと、私は反射的に、「ママ、早く帰ろっ! 」って、言ってしまった。
「あやちゃん。どうしたの ? 顔が赤いよ。熱でもあるの。」
なにも知らないママは心配してくれてるけど、告白されたなんて恥ずかしっくって言えない。
「いいから早く。」
ママ何も聞かず「はい。はい。」と、返事をして車を動かした。
川島君が立っている姿が見えたけど、余裕なんてない。
「あやちゃん。川島君、手を振ってるよ。」
「わかってるって。」
照れている事をママに知られたくなくって、ちょっとキレ気味に答えて、川島君の方は見ずに、カバンの中からスマホを取り出して、圭介先輩にLINEを送った。
「明日、少しだけ時間ありますか? お話したいことがあります」
『えっ。』
突然の告白に驚いた。けど、川島健吾くんはいつだって真面目だ。だから、冗談を言ってごまかす事なんてできない。
「ダメかな?」
ちょっと申し訳なさそうに尋ねる川島君をちらっと見ると、ちょっと困った顔をしてる。
私が無理を言うときによくする顔だ。
「あっ、なんか・・・意外な展開に、驚いちゃった。」
とっさに言い返せたけど、ぜんぜん上手くない。
変な返事をしても川島君はいつも優しい。ごめんね川島。なんか答えなきゃ。
「う~ん・・・・・・。川島君て、すごく丁寧に英語教えてくれるし、喋っていても楽しいけど・・・・・・。なんて言うか・・・・・・。彼氏っていう目で見てなかったし・・・・・・。う~ん。なっていったらいいのかなぁ。」
横目で確認。あ~。やっぱ、よわってるよぉ。言い合いになって気まずくなったことはあるけど、こういうのはなかったから、なんか緊張してきた。
とりあえず、リラックス。手を組んで身体を伸ばすといいと誰かが言ってたっけ。
「う~ん。」
なるほど、身体を伸ばしてみると確かに落ち着く。でも川島君の緊張は継続中。
「あ~。やっぱり困るよね。突然そんなこと言われても。」
川島君すごく困ってる。こんな川島君を見るのは初めてかもしれない。
「・・・。なんか焦っちゃった。」
「そうだよねぇ・・・。やっぱり、好きな人がいるの ?」
どうしよう。そんなことを聞いてくるなんて思いもしなかった。
弱ったな。ごまかす事も出来るけど、それじゃあ、ますます気まずくなる。
やっぱ、ここは、嘘をつかずに言おう。
「あ~。うん。ずっと気になっている人はいるんだよね。その人の事を追って、進学したしね。」
ますます困った顔をする川島。ごめんね。でも、事実だから仕方ないよ。
先輩との出会いは中学1年生の3学期の終わり頃だったと思う。小学生の延長が抜け切れてなかった私は、学校の階段で、友達と、はしゃぎながら駆け下りてて、転びそうになった事があった。身体のバランスを崩し、ヤバいって思ったその時、偶然にも階段を上ってきた、1こ上の圭介先輩が、私をガシッと受け止めてくれた。それは、少女漫画のような展開で、ときめかないわけがなく、いきなり好きになってしまった。
そして、サッカー部だったことも知って、ますます好きになり、2年の2月にはチョコレートを渡した。でも、先輩はかっこよくてモテてたから、彼女になれないんだろうなと思いながらも、この想いが、いつか届くんじゃないかと思って、先輩の進学した高校へ私も進学した。
高校に入学してからも、ストーカーにはならない程度に、試合を観に行って応援したり、手紙を渡したりしていたから、その努力の甲斐もあってか、時々、カラオケに誘ってもらったり、LINEしたりする中にはなったけど、彼女というポジションには程遠いなと感じていた。それは、二宮佐紀さんという、この周辺の高校生の中では知らない人はいないという位、美人な人がいつもそばにいたからだ。二宮さんはサッカー部のマネージャーと言う立場だから、先輩との距離が近いとも思えたけれど、側から見ていると、「彼女」にしか見えない時もあった。だから、二宮佐紀さんと話をするチャンスが巡ってきたとき、思いきって、先輩との関係を聞いてみたけれど、二宮さんは、
「彼女じゃないよ」
と、圧倒的な笑顔で、涼しげに否定した。でも、私からすれば、簡単に信じられるわけがなかった。
だから、私のもやもやした気持ちは、先輩が卒業してからもずっと続いていた。いつか、はっきりさせなきゃと思っていた。そこへ、川島君の告白。私の頭の中は、おもちゃで散らかっている子供部屋のようになってしまった。
「そうかぁ・・・・・・。」
「うん。」
どうするだろ。諦めてくれるかな。でも、それはそれで、なんか寂しい気がする。
変な感じ。これは、今まで、感じた事のない気持ち。
どうしよう。まずは、先輩の気持ちを聞いた方がいいかな。それで、「友達」とか「可愛い後輩」とか言われちゃったら、悲しすぎるし。どうしたい私っ!
「そっ、そりゃ、そうだよね。好きな人がいない方が変だよね。平川さんは可愛いから、モテるしね。」
川島くん,珍しくきょどってる。それに、今そんなこと言われていも、どう答えていいか分かんないよ。かと言って、何も返事しないっていうの悪いしなぁ。もう、普通に答えちゃえ。
「いやぁ。そうでもないよ。」
「・・・そ、そうなんだ。」
ごめんね川島。余裕がない私にはこれが精いっぱい。もじもじしていると、川島君、思いつめた顔で話をつづけた。
「あのっ、平川さん。」
「うん ?」
「付き合っている人がいないんだったら、僕の事・・・考えてくれないかな ? 返事は急がないよ。気になる人に告白してからでもいいよ。それくらい僕は、平川さんの事が好きなんだ。」
うわぁぁ。マジヤバい。今日の川島君、いつもと違うよぉ。
川島君は、良い友達。それははっきりしてる。話も聞いてくれるし、勉強も教えてくれるし、その場の空気を読んでくれる。男子だけど、女子っぽい感覚があるのか、一緒にいても楽。
だから、川島君の気持ちを聞いた時、頭が真っ白になった。しかも、ちょっと嬉しいって気持ちもある。
私が告白されてるんだから、ここは甘えても悪くはない。
けど、テレもあって、真面目に答えられない。もう、いつもの感じでいこう。
「わかった。わかったよ。川島がそこまで言うなら・・・・・・。じゃあ・・・、考える時間もらっていい ?」
いやっ!はずかしい! 顔が熱い。こんな顔、川島君に見られたくない。
早く、ママの車にのってしまおう。そう決めた私は、川島君の一歩前に出て、返事を待たずに、足を速めた。
「もちろん。」
「なんか、ごめんね。中途半端になって。」
「僕の方こそ。」
「じゃあ、また明日ね。」
「うん。また明日。」
「バイバーイ。」
振り返りながら手を振って、ぎごちない笑顔で答える。こんなの、今までになかったな。
車に乗り込むと、私は反射的に、「ママ、早く帰ろっ! 」って、言ってしまった。
「あやちゃん。どうしたの ? 顔が赤いよ。熱でもあるの。」
なにも知らないママは心配してくれてるけど、告白されたなんて恥ずかしっくって言えない。
「いいから早く。」
ママ何も聞かず「はい。はい。」と、返事をして車を動かした。
川島君が立っている姿が見えたけど、余裕なんてない。
「あやちゃん。川島君、手を振ってるよ。」
「わかってるって。」
照れている事をママに知られたくなくって、ちょっとキレ気味に答えて、川島君の方は見ずに、カバンの中からスマホを取り出して、圭介先輩にLINEを送った。
「明日、少しだけ時間ありますか? お話したいことがあります」