今月の市民劇場は井上ひさしさん追悼公演という事であの「父と暮らせば」でした。
時代は昭和20年代の広島、原爆の投下から2~3年後丁度私が生まれた頃です。
原爆で父を亡くし、倒れた家の下敷きになった父を助ける事が出来なかったり、大事な親友が運命のいたずらで亡くなり自分が生き残った事に罪悪感を抱く女性が亡くなった父との会話を通じて生きる道を選んでいく物語です。
原作の素晴らしさもあるが私は映画の宮沢りえさんの演技にも魅せられ何度も映画を見ています。
「生き残った自分は恋なんかしちゃいけないと言う娘に幽霊となって出てきた父がコケテッシュに笑を誘いつつ娘を応援する。
切なくて、市井の人々の苦しみがやんわりと伝わってくる作品、さすが井上ひさしさんだと何度も頷きました。
声高に原爆の被害を訴えるのもいいがこの作品のように親子の感情を共に描きながら原爆の悲惨さを訴えるのもこころにずんと響くものがある。
原爆で一瞬の内に焼かれた親にしてみれば言いおきたかったことも子の幸せを導く事も出来ない無念な気持ちがありそれを井上ひさしさんは代弁したかったのだと思う。
舞台は父親役の辻 萬長さんのほうが引き立っていたが親の気持ちを笑いの中に取り込みつつ上手く演技されていた。
世界の流れが核廃絶に向かう中でこの舞台を見ることができ有意義だった。