プレＳＥ、「少額訴訟」 第三章 その４

「部長、久し振りですね。ようこそいらっしゃいました。」

富田は歩きながら答えた。

「きれいなビルだね。」

「ええ、できてまだ一年位らしいです。」

「いつからいるの。」

「僕は三ヶ月くらいですけど、
　うちがクレジットさんと一緒に移ったのは半年くらい前ですね。」

「増えてんの、人数。」

「いえ、減らされてますよ。
　渋谷も縮小で、分散しててもしようがないんでこっちへ来たって訳です。」

日元クレジットは、日元アイシスにとってのビッグユーザーの一つである。

３年ほど前には新システムの開発プロジェクトを組織して、
日元アイシスからも大勢の人員が参加していた。
御厨もシステムの要件定義や基本計画、基本設計に参画した経緯がある。

しかし、その開発も終わり、
システムの維持コスト削減のため外部の人員は徐々に減らしている。
日元アイシスにも人員の削減を求められていた。

「なるほどね。」

「今日は例のやつですか。苅田さんにも話してありますし、やります？　」

「良いね。」

「じゃ、ちょっと待ってください。」

富田は、再び先ほどの方向へ向かい、両袖机に座っている男性に声を掛けた。
苅田氏だった。

彼は立ち上がって御厨の方を見て軽く会釈をした。
御厨もそれに応えた。

苅田はバインダーを持って、行く方向を示しながら御厨にも来るよう手招きした。

行く先の正面の受付の近くには、四人用の小さい打合せブースがあり、
そこで、苅田、富田、御厨の三人が打ち合わせることになった。

「苅田さん、お久しぶりです。」

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