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既存不適格の改修

2021-12-28 09:53:05 | 観察
大阪でガソリンを撒いて放火し、25名の被害者を出した放火殺人事件。
犯人も脳に障害を受け未だ重篤な容態らしいから、事件の真相解明は難しいのかもしれない。

事件が起こった直後にも散々言われたことだが、このビルは階段が一カ所でスプリンクラーもない。
いわゆる既存不適格であるが、それをいまさらながら「大阪の放火ビルは既存不適格だった」とか、
「既存不適格の改修を急ぐべきだ」とか声高に取り上げている所があった。

建築基準法は事故や事件や天変地異に合わせて見直しがされている。
どんどん基準がきつくなっているが、それはそれで良いことだと思う。

しかし、建物の立地や地盤によって必要以上に過大な性能、いわゆるオーバースペックは必要なのか。
建物の価格が高くなるだけで必要でもない性能を有するビルになる。

昔の建築基準法では建物は2.7m以上の道路に接していなければならなかった。
今はそれが4mになっている。
新築は4m以上の道路に面して建てられるが、古い基準の建物を建て直そうとすると、道幅を広げるしかない。
住宅密集地では事実上不可能。

さらに建築基準法の将来の改定を見越して先取りした仕様にするのは無理筋。
例えば、延焼を防ぐため、隣のビルとは10mあけて建てることと言われたらどうするか。
10m以上の幅の道路に面し、2mの歩道を有し、さらに歩道から2m以上離して建設することと言われたら。
そんなことになるはずない、と言えるだろうか。
新しく建てる建物は、条件が厳しくても建てることはできるが、基準に合わない建物は合わせよ、と言われたら、
ビルを取り壊すしかない。



階段は今は2カ所以上となっているが、これが3カ所以上になったらどうするか。
後付けで非常階段を付けるしかないが、土地にそれができるだけの余裕がない建物は。

スプリンクラーを付けろとか、排煙設備を付けろとか、火災報知機を付けろなどなら金は掛かってもできなくはない。
そういう改修はどんどんやったらいい。
また正面の窓に非常梯子や、滑り台式の脱出路を付けることも可能かもしれない。
地域のビルの幾つかでやれるなら、隣のビルに移っていける避難通路を付けられかもしれない。

でも今回のビルのように階段1カ所は不適格だから、もう一カ所つけろと言われたらどうする。
奥の壁は構造壁で窓はなく、正面は道路に接しているので、とても階段は付けられない。
つまり既存不適格の改修と言っても物によって、物理的に出来る出来ないがある。

例えば、階段の幅は何cm以上の規定がある。
手すりを付けよとの規定もある。
しかし、手すりを付けると幅が規定を下回ってしまう場合はどうすればいいのか。
既存不適格がダメなら、現在の階端を取り壊し新しく基準にあった階段を付け直す必要が出てくる。
建物の構造や耐震基準上、階段を壊すと建物全体がダメになることも考えられる。

そんなこんなでケースバイケースとなり、これは良い、これはダメの判断が難しいので、
建設当時の基準にあっていればそのままでいいことにしよう、となっている。
既存不適格ビルだから被害が大きくなったのは事実としても、このビルだけの責任ではない。
(できる範囲の改修をしていないとすれば問題はある)



何年か前に耐震偽装が問題になり、耐震基準に満たないビルは取り壊された。
それはそれで文句はないが、建て直しに至らなかったが旧建築基準法で建てられ、既存不適格のビルは山ほどあったはずだ。
「うちのビルは耐震偽装していないから大丈夫」ではなく、緩い基準だったからそのままでOKになっているだけ。
世の中に既存不適格は山のようにあると言う事実を忘れてはいけない。

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