峰猫屋敷

覚え書と自己満足の場所

タイムスリップレストラン

2008年08月23日 16時07分12秒 | 最近の出来事
まだ8月だというのに肌寒い日となった今日、三男を連れて義祖母の墓参りに行った。
お彼岸の頃は人出も多く墓石の間に色鮮やかな花があちこちに見られる霊園だが、お盆と彼岸の間にあたる今ごろは小ざっぱりとしている。
ましてや10月末のような気候に小雨も降っているのだから、義祖母のように命日でもなければ墓参りに来る人は少なくて当然かもしれない。

墓参りを終え、バス停で時刻表を見ている間にバスが来た。
時間があれば霊園近くにあるファミレスで食事をしようと思ったが、とりあえずJRの駅まで行くことにした。

霊園最寄のJR駅付近でファミレスを見かけたことはないが、駅前の小さなデパートの中にレストランがあったので、そこで済ますことにした。

三男と、エスカレーターをひとつひとつトロトロ上って6階まで辿り着くと、その1つ上の階にあるレストラン閉鎖のお知らせを見つけた。

前に入ったときも、既に傾いた雰囲気はあった。
入り口で食券を買う、昔ながらのデパートの食堂の雰囲気で、机の上には百円入れてレバーを引くと占いの紙が出てくる機械があった。

「ああ~、とうとう潰れちゃったんだ」
と、思いながら、またトロトロとエスカレーターを降りる。

駅前を見回すが、立ち食いソバのようなところしかない。
そこで8階建ての大手スーパーに入ってみると、最上階に中華レストランがあった。
私は三男と、エスカレーターを8階までノロノロと上った。
古い建物なのか、エスカレーターの乗り継ぎごとに天井が低くて、ジョージなら確実にその都度、頭をぶつけるだろう。
ジョージって誰だか知らないが。

駅前の某大手スーパーだというのに、その店はどことなく暗くて人が少ない。
まさか8階のレストランも潰れてやしないか…と、危惧しながら行ってみると、そこは営業していた。
時間は12時ちょっと過ぎ。
ふつうならレストランが混みあう時間だ。

中に入ると、ガラガラだった。
入り口に立っていると、定年をとうに過ぎたであろう茶色いカツラ風髪型の、長身のウエイターさんが窓際の席に案内してくれた。
三男は味噌ラーメンと若鶏の唐揚げを。
私は焼ソバを注文した。

店内には懐かしいような安っぽさが漂い、机の上には百円占いの機械が置かれていた。
ところどころに、「おいしい水はセルフサービスでお願いします」と書いてある。

判読できない上に、判読できたとしても知らない人のサイン色紙が
どこかに飾ってありそうな気がして店内を見回したが、それは無かった。

料理は厨房からコック姿のおじいさんが運んでくれた。
私の注文した焼ソバは堅麺にあんかけが掛かっていた。
肉は入っていないのは私にとっては嬉しいが、あんかけが妙に甘い。
美味しくない。 というより、まずい。

味にうるさい長男が、いつも私の料理に文句をつけるたびに、
「うるさい。そのくらい想像力で補え!」 と思うのだが、
その自慢の想像力ですら克服できずに、カラシと酢とラー油の力を借りた。

口直しにアイスクリームを注文した。
サービスなのか、食べきるのにウンザリするほど山盛りだった。
しかもあまり美味しいアイスじゃなかった。

会計しようとレジの前に行ったが、だれもいない。
三男は 「ベルを押せばいいじゃないか」 と、レジ台にある呼び鈴を押そうとしたが、
客が数人続けて入って来ていたため、忙しそうなので待っていた。
厨房のコックさんも運びをやるくらいだから、従業員もひどく少ないようだ。
しばらく待っていると、長身のカツラ風茶髪のウエイターさんが料理を運ぶために出てきて、私に気がついた。

「少々お待ちください」 と言って料理を運び終えると、すぐにレジに来て会計してくれた。
自分で計算したより安かったので、「あれ?」と思い、レストランを出ながらレシートを見た。
アイスクリームの値段が入ってない。

「まずかったんだから、いいじゃん。 ラッキー♪」 という声と、
「だめだよ。 ちゃんと払おうよ」 という声が胸に去来する。

このレストラン、美味しくはないが、ウエイターさんは常に精一杯サービスしようとしてくれている。
三男の注文がなかなか決まらなくても、イライラする様子もなく、じっと待っていてくれた。
私の後ろにいた足の悪いおじいさんは、何も言わなくてもレジではなく、席で会計していた。
コックさんも一所懸命に出来ることをやっていた。

私はレシートを手にレジに戻り、
「これ、アイスクリームが入ってないようなんですけど」 と告げた。
ウエイターさんは眼鏡を出してレシートを見て、
「そのようです」 といい、追加のお金を払う私に、
「ありがとうございます」 と丁寧に何度も言ってくれた。