腕時計修理専門店・トゥールビヨン店主のブログです
腕時計の修理の詳細や腕時計のトリビア、店主の個人的な趣味の話などを気の向くままに書いております。
 



土用の丑の日。


高校を出てから6年間台湾の台北に住んでいた。

行った当初は右も左も分からず、語学学校と宿舎の往復だった。

毎日の食事は宿舎の近くの定食屋のような店で、壁に書かれているメニューを端から指を指して注文していた。

幸い「〇〇〇麺」とか「△△飯」、「牛肉〇〇」「鶏腿△△」などの表記なので大体の予想はついたが、中には激辛で全く食べれないのが出てくる日もあった。

「これは美味い」というのが何品か見つかったので、それをローテーションで注文する日々が続いた。

数か月も経つと、日常生活する程度の北京語は何とか話せるようになった。

学校と宿舎以外の所へも足を延ばした。

見るもの聞くもの全てが新鮮だった。


宿舎は“国際青年活動中心”と言う長期滞在の留学生や短期旅行者向けのユースホステルだったが、そこで出会った日本人の人に「鰻の美味しいお店があるから連れて行ってあげるよ」と誘われた。
(柳田さん、お元気ですか?)

日本を離れて半年以上が経った頃だろうか。

それまでは全く意識になかった“日本食”が急に恋しくなった。


連れて行ってもらったのが普段学生が行かない台北の夜の繁華街。

森林北路から中山北路を入って行ったスナックやカラオケ店が軒を連ねる場所だった。

その一角にその店はあった。


肥前屋。

店の換気扇からは煙と一緒に鰻のタレの焦げた匂いが出ていて、その匂いだけで嬉しかった。

店は小さく、結構年配のお父さんとお母さんが切盛りしていた。

うな重を注文した。


待つことしばし、うな重と御味噌汁、お新香が運ばれてきた。

お味噌汁の何と美味しいこと。

五臓六腑にしみわたる。

やっぱり味噌汁は日本人のソウルフードなんだなぁ...


そしてうな重。


嗚呼、言葉にならない。

無我夢中で食べた。


値段は普段宿舎の近くで食べている「〇〇麺」の5倍くらいしたと思う(それでも当時のレートで1000円くらいだったろうか)が、それでも大満足だった。


学生の身分でそうそう行けなかったが、半年に1回くらい日本食(鰻)が恋しくなったら肥前屋さんに食べに行った。


30年ほど前の話。


ネットで“台北 肥前屋”と検索するとちゃんと出てくるので、今も店をされているんだなぁ。

店の写真を見ても全く思い出せない。

店内はもっと狭かったように思ったが...



だが、あの時のうな重の味は忘れない腕時計修理専門店トゥールビヨン店主

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