Who I am

その日、フィリピン・スタッフは退屈していた。
にっぽん丸が今治港に寄港した日、多くの乗客は朝から今治市内観光へ。
おかげで、船の屋上に在る温水プールに隣接するゴディバ・アイスの売店は開店休業状態。
　　　　　　　　　　
そんな処に、車椅子の夫婦がやってきた。
　「　なるほど！　乗船客が居ない間に、静かに日光浴でもするつもりかなぁ？
　　　　よく見たら、スイートの客みたいだが　・・・　。　」
ところが、夫婦はプールサイドまで車椅子で向かっている。
　「　な、な、何するつもりだろう？
　　　　まるで、テレビで見た　“パラリンピック”　みたいな光景にも見えるけど？　」
そうこう眺めていると、車椅子の男性が、プールの乗降用のパイプを掴んだ。
　「　まさか！　ネ～？　」　店員は、ビビりながら推移を見つめた。
立つのさえおぼつかない障がい者の老人　・・・　。
それなのに、足先を水に浸けようとしているではないか。　
　「　男性がプールに転けたら、このオレが救助に行かねば！　」
フィリピン店員は、不安にかられて凝視した。
　　　　　　　　　
奥さんが笑顔で見ている中、男性はプールの水に足をつけて温度を感じているようだ。
そして、水に浸かり始めた後、まさかの歩行を始めた。
プールの縁をつかまりながら、歩いて２周もしている。
　「　なるほど、高齢者施設の浅いプールでの歩きリハビリみたいなもんか？
　　　　　水中散歩でもしているみたいだ！　」
　　　　　　　　
ひとしきり歩き回った男性は、顔をベチャっと水に浸けた！
　「　ヤバい？　歩き疲れて、溺れているのか？　助けないといけない！？　」
だが　・・・　男性は、プール壁を蹴って泳ぎ出した！！
と、ここまでは、フィリピン乗員から見た、ヒゲ最初のにっぽん丸プール体験でした。
　　　　　　　　　
そして２０２０年、ヒゲは狙っていたのです。
再びにっぽん丸に乗船して、この温水プールで泳ぐことを。
次なる目標は、水面上でマンボウよろしくプカプカ泳ぎ。
両手を少し開いて、体を真っ直ぐ伸ばし、胸を張ると、小さい頃は何故か浮いたのです。
障害者になってからは、常に地球の引力を体全体に感じていた。
身体が重い！
ひょっとして、水面なら違う状態になれないか！？
そんな想いです。
　　　　　　　　　　　
あの大嫌いな金満ZOZO社長は、宇宙で金をばら撒きながらの無重力。
じゃあ、金ZEROヒゲは、重力に逆らいながら、浮力を使って浮遊状態を楽しめないか！？
ひょっとして、左足が少し不自由でも、昔鍛えたナンとかで萬坊に成れるかも？
目標は高く！！　パリのパラリンピックの水泳代表に！？　
夢みたいな嘘みたいな話で、ワクワクで～す。　（爆笑）
　　　　　　　　　　　　　　
そんな切望が、次のクルーズでの予定でしたが　・・・　。
コロナ禍マンボウが出て来てキャンセルに。　　

　　　　　
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