さむらい小平次のしっくりこない話

世の中いつも、頭のいい人たちが正反対の事を言い合っている。
どっちが正しいか。自らの感性で感じてみよう!

インド放浪 本能の空腹31 カルカッタ!!

2021-06-03 | インド放浪 本能の空腹

画像引用元 そうだ、世界に行こう。バックパッカーの登竜門!インドの寝台列車あるある10選

30年近く前の私のインド一人旅
その時につけていた日記を元にお送りいたしております

長く滞在し、とてもゆっくりと過ごした美しい海のある街、プリー、をいよいよ後にし、『都市文明化の失敗作の街』と謳われるカルカッタへ向けて旅立った、というところまででした

では、続きをどうぞ


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 インドのどこか海辺の小さな街、それはどことも決めず、行き当たりばったりで気に入った街があれば、そこに長く滞在し、住民のようになって過ごしたい、おれは3年間のサラリーマン生活をしていた間、漠然とそんなことを思い描いていた。
 その街で友達を作り、街を歩けば顔見知りとあいさつを交わす、できれば自転車も買いたい、それに乗って街を走りたい、そしてその街を去る時、自転車を貧しい子供に譲りたい、そんなことも考えていた。
 自転車のことを除けば、他のことは全てかなった、それはつまりおれのインド旅行の目的を達した、ということだ、さらに言えばもう日本に帰っても良いのだ。それくらいにプリーで過ごした日々は充実していた。

 だが、それはインドと言う国の片一方しか見ていない、あの喧騒と混沌の極みのような街、カルカッタ、凄まじい数のポン引き、手のない人、足のない人、目がつぶれたようになっている人、両足が無く、上半身だけで手製のスケートボードに乗ってやって来た老人、指が全て溶けて無くなっている人、そんな物乞いがひしめく街、カルカッタ、ゴミだらけの街、カルカッタ、プリーとは真逆の、もう一方のインドの象徴のような街、カルカッタ、おれはその街にただただ圧倒され、ビビりまくり、逃げるようにプリーへ旅立った。詐欺で15万円もボッタクられた上で…。

 カルカッタでどれだけの時間をすごそうか、それは決めていなかった。ただ、あの街で、普通に、日常を過ごせるようになるまで、もう十分だ、そう思えるまではいようと思っていた。


『コヘイジ、なんで一等車でカルカッタへ行くんだ?』

 プリーを旅立つ直前、ロメオがそう言った。金がもったいない、ということだ。ガイドブックにも、インドの列車の旅は二等が良い、ごく普通のインド人と触れ合える、などと出ていた。
 だが、プリーに向かう時乗った二等車、まるでラッシュアワー並みのぎゅうぎゅう詰めの座席、そこで押し合いへし合い窮屈な格好で何とか寝るスペースを確保し、そのままの姿勢で夜の闇を走る列車に随分と長い時間揺られた、もうこりごりだったのだ。『インド人と触れ合える』、いや、『肌まで触れ合える』、そんなのはまっぴらごめんだったのだ。もはやトラウマだ。金がもったいない、と言っても、同じ距離を日本で新幹線に乗れば10倍はするだろう、ケチる理由はなかった。

 一等車は快適だった。一度だけ大男が乗って来たが、すぐに降りた。その時以外はずっと広い空間を独り占めできた。インドの列車旅行は『一等に限る』、そう思った。

『さ、さ、寒い…』

 どこか、高地に入ったのだろうか、プリーでは半そで一枚で全く問題なかったが、車内は突然震えるほどに寒くなった。おれは、カルカッタで、詐欺師『ラーム』と友達になった証の物々交換で、お気に入りの春物ハーフコートと交換した『ナイロン』糸があちこちからむき出しになっている、ラーム曰く『カシミヤのセーター』、をバッグから取り出した。サイズも合わず、ピチピチキツキツのセーターを着る、気のせい、と言われれば否定はできない程度に少しばかり体が温まる。

 やがて列車は高地を抜けたのか、寒さが和らいでいく。それに合わせおれも眠りに就く。

 気づけば朝になっていた。インドの列車の車窓はとにかく緑だ。密林のようなところ、湿地のようなところ、赤茶けた荒涼とした地面が広がる時もあるが、基本的には瑞々しい緑だ。


画像引用元 そうだ、世界に行こう。バックパッカーの登竜門!インドの寝台列車あるある10選

 しばらく走ると、やがてその緑が消えて行く。煤けて朽ち果てそうな建物が徐々に増えていく。さらに走ると、煤けたビルの密集度も増し、線路が幅広く扇状に何本もにも広がり、明らかに大きなターミナル駅が近づいてきたことがわかる。



 遂に戻ってきてしまった。

 おれは気を引き締めて列車を降り、駅の外へ出る。けたたましく鳴り響く車やオートリクシャのクラクション。

 人、人、人、車、車、車、リクシャ、リクシャ、リクシャ!!

 人がはみ出すほどにつめ込まれ、傾きながら走るバス、たちまちおれはその喧騒と混沌に引き摺り込まれていく。

 だが、おれはもうあの時のおれではない!

 『カルカッタ!!!』

 さあ、いざ行かん!!


************************************つづく

カルカッタ、まあ、すごい街でした。日本人旅行者が、やって来たはいいけど、ホテルから一歩も外へ出られなかった、などということが良くある、とガイドブックには出ていました。インドを旅するならば、いきなりカルカッタではなく、まずは少しでもヨーロッパナイズされたデリーから入った方が衝撃が少ない、とも。どんな衝撃が待ち受けているか、次回から少しずつご紹介して参ります。
※引用元を示し載せている画像は、撮影された方の了承を頂いた上で掲載しております。それ以外の「イメージ」としている画像はフリー画像で、あくまでも自分の記憶に近いイメージであり、場所も撮影時期も無関係です。



コメント (2)
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