忘れられない優しい言葉がある。
45歳の時 脳腫瘍(聴神経腫瘍)が出来 1年前ぐらいから片方の耳が聞こえなくなってお医者さんに通っていたが その原因を見つけることが出来ていなかった。いよいよ足元がおぼつかなくなり友達に話したら大阪市内の病院を紹介してくれて そこではすぐに「聴神経腫瘍で教科書通りの進行をたどっている」と言われ、すぐ手術となった。 腫瘍は 脳幹近くまで達するほど大きくなって顔面神経にまで張り付いていて、それを顕微鏡を見ながらきれいに除去するのに 顔面神経が傷ついてしまった。 それ以来 顔左半分に麻痺が残り 瞼を閉じたり、瞬きすることが出来なくなり 顔がゆがんでしまった。 外を歩くのが辛かった。 そんな時 初めてのお医者さんに行かねばならないことがあった。 老先生は私の顔を見て驚かれたが 私の話を聞いて 命を救ってもらえたことを つくづくと「よかったねえ~」と言われた。本当に心の底から絞り出すような言葉だった。 あれほど心にしみた言葉は いまだに経験したことがない。 たった一言なのに どんなにその優しさが嬉しかったことか。
昨日、かかりつけ医にいつものお薬が無くなったので行った。その時先生に「今度 2月10日に 乳癌の検診に行ってきます。手術をしてもらって9年になります。」と言ったら 先生は「10年たったらもう卒業だ。 あの時はお父さん(夫)は生きていたね」と言われた。「うん ずいぶん心配してオロオロしていたようだけれど。 あの時 私が先に逝っていたら 困っただろうな」 「そらそうや。お母さんは最後まで家でよくやったよ。」「先生にそう言ってもらうのが一番うれしいわ」 「お父さんもきっとそう思っているよ」 と言われた。 先生が今も忘れすにそう思ってくれているのは 私にはとてもうれしい言葉だった。 一年間 話すことも、食べることも、動くことも一切できなかった夫だったが 私は24時間ずっとそばにいて時間を共有できたことが 本当に良い時を過ごすことが出来たと 今振り返る。
それにしても どちらもお医者さんからの言葉が こんなに心に響くのを 本当に感謝している。