部族民通信HP版(左ブックマーク)に先週掲載した「たはけの果て黄泉の別れイザナギ」(長編詩)を紹介します。長いので全体はここには載せられません。自殺したイザナミの野辺送り、イザナミの死に霊が骸から立ち上り、殿に続くと言う段です。HPに入って全文(PDF)を読んでください。
野辺送り山狗の遠吠えがはなむけ
覚えているかイザナミ、あの日夕べの野辺送り
お前の骸を引く祭り車には付きそう者一人なく
儂が一人、骸のお前が一人のしら葬列だ
お前の青く冷たい身体が白木綿(しらゆう)に
黄麻荒縄きつくくるまれた
その重みを木綿布ごと抱きしめ、
お前を車に置き惜しみ、荷板に置かれず
置かねば進めず進まずに送りができようか
=中略=
その時儂は見た、
骸くるむ白木綿から煙が天に引かれるよに、
愛しいお前がぼうと夕闇に現れた
紺の薄衣(きぬ)単衣、髪は手櫛に梳かれ
後ろに束ね長く腰までひた垂れていた
お前は祭り車のすぐ後ろにたった。
一歩進んで歩みとめ二歩前に出てはとまり
死の悲しみと儂との別れを嘆き、
うつむきに無言のまま肩を震わせた。
いとおしさ見つめ募ってその姿思わず儂は
イザナミと叫んだ
それに応えず顔振り上げずただ肩振るわせて
お前は泣いていたのか。
イザナミとはもう唇(くち)も肩胸乳も愛せない死の別れ。葬列の殿(しんがり)で死を悲しめ、お前の屍に涙を落とせと儂はお前を励ました。
鹿屋野姫が鉦を叩きチーンと響かせた。そしてその場を小さく舞い、男は杖で地を叩く。小声でイザナミイザナミと祈る。
「ハイヤーハレヤー、皆様。イザナミはおのれの死を受けとめられなかった。今一度イザナギに逢いたくて、愛されたくて抱かれたく、捨てられぬ恋の焦がれに想いがあまり、死に霊となってその影を現しました。
野辺送り山狗の遠吠えがはなむけ
覚えているかイザナミ、あの日夕べの野辺送り
お前の骸を引く祭り車には付きそう者一人なく
儂が一人、骸のお前が一人のしら葬列だ
お前の青く冷たい身体が白木綿(しらゆう)に
黄麻荒縄きつくくるまれた
その重みを木綿布ごと抱きしめ、
お前を車に置き惜しみ、荷板に置かれず
置かねば進めず進まずに送りができようか
=中略=
その時儂は見た、
骸くるむ白木綿から煙が天に引かれるよに、
愛しいお前がぼうと夕闇に現れた
紺の薄衣(きぬ)単衣、髪は手櫛に梳かれ
後ろに束ね長く腰までひた垂れていた
お前は祭り車のすぐ後ろにたった。
一歩進んで歩みとめ二歩前に出てはとまり
死の悲しみと儂との別れを嘆き、
うつむきに無言のまま肩を震わせた。
いとおしさ見つめ募ってその姿思わず儂は
イザナミと叫んだ
それに応えず顔振り上げずただ肩振るわせて
お前は泣いていたのか。
イザナミとはもう唇(くち)も肩胸乳も愛せない死の別れ。葬列の殿(しんがり)で死を悲しめ、お前の屍に涙を落とせと儂はお前を励ました。
鹿屋野姫が鉦を叩きチーンと響かせた。そしてその場を小さく舞い、男は杖で地を叩く。小声でイザナミイザナミと祈る。
「ハイヤーハレヤー、皆様。イザナミはおのれの死を受けとめられなかった。今一度イザナギに逢いたくて、愛されたくて抱かれたく、捨てられぬ恋の焦がれに想いがあまり、死に霊となってその影を現しました。