蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

ジョークと霊魂への畏怖の関連 終 最古のジョーク発表

2008年10月24日 | 小説
人類の進化史上、3万年前の前後に何が起こったか。たとえば芸術の発生が見られる。ドイツ(シュタデール地方)で発見された象牙の彫刻、獅子の頭を持つ人間像(3万年ないし3万3千年前)、他にも動物の像が発見されている。有名なラスコーの壁画は少しくだって1万7千年前となるが、それ以前3万年前後と推定される壁画(記号)の痕跡はフランス、スペイン各地で発見されている。
前出の「心の先史時代」(ミズン著松浦、牧野訳)ではこうした考古学の発見の成果をふまえて、心の発達を推理している。3万年前の人類に技術・博物学・社会知能・言語能力がひとつの知能(これを一般知能と言ってる)に統合されて芸術が発生したのだと。その発生メカニズムとは;
サピエンス人はライオンを知っている、動物ではもっとも強く雄牛すら引きずり倒せる(博物学)。そのライオンを象牙を削って(技術)表現できる(これが表象能力、ミズンに言わせれば言語能力)、ライオン頭に人間の胴と脚をつけ部族の酋長を表現した(社会知能)。知能知識の全体を統合する一般知能が進んでこそライオンマンの芸術が可能になった。同時期には旧人に属する(=このあたりはまだ不明)ネアンデルタール人が地理的にも近接して生息していた。彼らの博物学はサピエンス以上、技術能力は劣るが悪くない、社会知能も脳の大きさから複雑な構造を創造し維持していたはずである。しかし表象能力は今の所発見されていない。初歩的な言語力はあったかも知れないが、削った象牙を「これはライオンを表現している」と言うほどの力はなかった。さらに全体を融和する一般知能が脳のブローカ領域の未成熟のため発達しなかった。(以上は心の…からの受け売りをまぜて)
では霊魂については;
ロシア・ヌンギールで発見された先史時代の墓(2万8千年前と推定)ではサピエンスの老人他2人が埋葬されているが、紐に通された2963個のビーズが頸と胸元を飾っていた。別一体にはなんと4903個のより小さいビーズ(加工はさらに難しい)が。
埋葬する心の背景として、人の死を特別な事象として受け止めている。肉体の死であるが、心・精神は死んでいない。霊魂となって別の世界に向かう。そのために財産であるビーズや着衣(こちらは発見されてないが)で飾り立てて、旅立ちの餞とする。
この例を埋葬の儀礼」が発生したのも3万年前前後。技術・社会・(おそらく)言語のビックバン的発達が見られた時期に霊魂への信仰、宗教の萌芽が見られた。これはミズン流にいえば分割されていた知能フラグメント(これがネアンデルタール人のレベル)、が一般知能の元に融和された成果となります。
カンガルーがパブに行かない理由が実は高すぎる値段のせいだったとのジョークでこのブログ編が始まったのですが、その「不条理性」の面白さと「霊魂への畏怖」が同じ時期に、同じく知能ビックバンで始まったと考えさせられた「心の…」でした。

最後にとっておきを。3万年前と分類される人類最古のジョークが考古学の最新の成果として発表されました。
3万年前のイラク部族民連合国のシャニダール地方のある村。オリンピック競技大会が開催された。そこに一般参加で山奥に住む毛むくじゃらの「ネアン人」が飛び込んだ。「位置についてヨーイドン」でぶっちぎり速く、グレコローマンでも反則なしに相手をぶん投げる。あっという間に全種目金メダル。放送記者のインタビューがあった、
「ネアン人の参加は初めてですが」
「そりゃそうさ、参加費用が5ドルするんで」と答えた。(大笑ただし3万年前)
以上はジョークで始まりましたのでジョークで終わった、お粗末ながら(+ω+;)

(ネアンデルタール人が埋葬儀礼を行ったと言う説もありますが定説には至らない)
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