蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

長編の鬼灯を遠くに投げよ開始の知らせ

2008年10月19日 | 小説
長編小説連載の知らせ

部族民通信として10月5日からHPとブログを解説した渡来部です。詩の掲載に続き小説の連載を始めます。10月20日(ないし21日)から、総量550枚(400字換算)の「鬼灯を遠くに投げよ」を開始します。

すでに詩として掲載されている「鬼灯…」は幼くして死んだ子の姉と母が子転生再生を願い、鬼灯を夕焼けに向かって投げるとの詩です。この詩を元に小説がほぼ完成しています。前述にあるとおり長いのでどのようにHPで掲載するか悩んでいましたが、ここは正攻法、すなわち全ページを順に掲載すると結論を出しました。1週間に2回アップロードし50枚ほど消化して、10週(プラス)で完載となります。ぜひお楽しみに。
ただしブログには全ページの掲載無理かと思います。またブログは横書きなので、縦書きが鉄則の(と勝手に信じています)文芸作品はなじめません。

ブログにはアップデートの案内とダイジェストを案内いたします。
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鬼灯を遠くに投げよの後半です

2008年10月19日 | 小説

前半は一昨日にブログしました。

母と娘、幼い子(弟)が死んだ。鬼灯を夕焼けに向かって投げれば
その子は再生すると娘が母に迫る。遠くに投げてと…

 3
娘が続ける
お母さん、私はいまでも思い出します
去年の秋のこの時この場所
弟いれてあたし達三人
忘れはしない人気ない河原
あの時赤い鬼灯摘みました
その赤が夕焼けに染まり
目の前の空が突然に赤く染めかわり
弟はアカボーと泣きました
そのあと十日二十日たって
弟は
遠くに旅立ついまわの時に
唇青く頬青白く手先が震え
励ましの一言を聞き取れず
眼だけが赤く腫れていた。
あの赤い空の先には弟がいる
投げられた鬼灯が向かうのは
 一人眠りについている私の弟
 あなたに投げられた鬼灯を唇で捉え
 きっと頬が赤く染まり蘇るでしょう

 いつの日か再会を果たすその時に私は弟を見分けられるだろうか。一年と十日も経った今だって横顔を忘れてしまった。
鬼灯色の再会を待ち唇の赤さ頬の赤さで見分けつけよう。

この世で生きる私たちは死者への思いを祈りにこめて、再会の瞬間を生きる間待ち続け、鬼灯をあの青く赤く染まった西の空に投げよう。
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