鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

児島高徳図鐔 後藤春乗 Shunjo-Goto Tsuba

2011-06-02 | 
児島高徳図鐔 後藤春乗


児島高徳図鐔 銘 後藤春乗(花押)

 武士の生き様や合戦を題とした装剣具では『太平記』にも取材されることがある。比較的多いのは、後醍醐天皇が隠岐に流される最中、これを救出しようと児島高徳が画策した場面。
 後醍醐天皇は元弘元年に挙兵。ところが裏切り者が出て露見。笠置山に逃れたもののここも陥落、ついに捕らわれる。隠岐に移送されるその天皇の一行が美作に至った頃のとある夜、救出を目的にその寝所まで高徳が忍び寄るが、ついに果たされなかった。ただ、高徳は天皇に意志を伝える目的で、桜の幹に漢詩を刻したという。警護の武士はこの詩に首を捻るばかりであったが、天皇は理解し、逆転の時が来ることを待ったという。桜の鮮やかに咲く頃であった。
 後藤春乗は後藤七郎右衛門家の三代目。京都に活躍した武家金工の一人。後藤家というと赤銅魚子地高彫色絵表現になる小柄笄目貫を専ら製作していたが、江戸時代後期には鉄地などを用い、鐔なども遺している。