鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

唐草文に桐紋図太刀鐔 Tsuba

2011-06-18 | 鐔の歴史
唐草文に桐紋図太刀鐔  (鐔の歴史)




唐草文に桐紋図太刀鐔 室町時代

 小太刀の拵に装着されている鐔、山銅地を薄手に仕立て、鐔の厚さが八ミリほどの中空の造り込みのため、外観は小振りでがっしりとした感があるのだが、殊のほか軽い。総体のバランスを考慮したものであろう。深い切り込みの木瓜形に四方猪目を透かしている。浅い毛彫で五三桐紋と唐草文を配し、金色絵として華麗。高級武将の所持という感じはなく、むしろ戦場で扱い易い寸法であることから、中あるいは上級武将の太刀の添え差しのような形で実用とされた小太刀であったと考えられる。総金具も同様の簡素な造り込みであり、高級品ではないにもかかわらず、状態良く遺されている。この拵に収められた刀剣類は何であろうか。もちろんこの時代に大小の小という脇差は存在しない。腰刀から脇差へ、あるいは小太刀から脇差へと変遷してゆく過程の武具であると言えよう。大変に貴重な資料である。□