松樹に馬図鐔 (鍔の歴史)
松樹に馬図鐔 東雨
構成が頗る良い作品である。川辺に佇む老松。その傍らに寝そべる馬、走る馬がいるというだけの風景だが、その構成が頗る良い。二度も重ねて言うほどに良い。このような意匠を生み出したところに安親の凄さがあるのだ。
切羽台厚を中心として左右に枝を伸ばす松樹の逞しさは、馬のそれに重ねられよう。馬もまた並んで疾駆するという構成ではなく、身体の一部だけを見せてその全体を想像させる趣向。寝そべる馬もただ寝ているだけでありながら動きが感じられる。また、用いられている金はごくわずかでありながら、画面を引き締めている。
では、この鐔の面白さは構図の奇抜さだけであろうか。筆者は、一本松といえば能舞台の背後に象徴的に描かれている松樹を思い浮かべる。政随の磯馴松とは明らかに異質に思える。斬新とはいえ、古典がその背後に潜んでいるように感じられるのである。
鉄地に薄手の高彫、耳を打ち返している。75ミリ。
松樹に馬図鐔 東雨
構成が頗る良い作品である。川辺に佇む老松。その傍らに寝そべる馬、走る馬がいるというだけの風景だが、その構成が頗る良い。二度も重ねて言うほどに良い。このような意匠を生み出したところに安親の凄さがあるのだ。
切羽台厚を中心として左右に枝を伸ばす松樹の逞しさは、馬のそれに重ねられよう。馬もまた並んで疾駆するという構成ではなく、身体の一部だけを見せてその全体を想像させる趣向。寝そべる馬もただ寝ているだけでありながら動きが感じられる。また、用いられている金はごくわずかでありながら、画面を引き締めている。
では、この鐔の面白さは構図の奇抜さだけであろうか。筆者は、一本松といえば能舞台の背後に象徴的に描かれている松樹を思い浮かべる。政随の磯馴松とは明らかに異質に思える。斬新とはいえ、古典がその背後に潜んでいるように感じられるのである。
鉄地に薄手の高彫、耳を打ち返している。75ミリ。