鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

蝦蟇仙人図鐔 政随 Masayuki Tsuba

2011-09-24 | 鍔の歴史
蝦蟇仙人図鐔 (鍔の歴史)


蝦蟇仙人図鐔 乙柳軒政随

 奈良派四天王のひとり浜野政随の、蝦蟇を大胆に写実描写した鐔。迫力に満ち満ちている。図柄に凄みがある。実は、この蝦蟇の高彫は極端に肉の高い実体的描法になり、鐔面から飛び出している。まさにそこにいるような表現である。
 江戸時代、蝦蟇仙人あるいは蝦蟇を操る伝承は、我が国において歌舞伎の演題『自来也』に発展している。今ではマンガのキャラクター(ナルトのガマブン太)にも採られているように、確かに存在が面白い。誰も秘術を使い、敵を翻弄する、そんな役割を担いたいもの。荒唐無稽とはいえ、大きな憧れでもある。現代においてもこのような話が好まれるのだから、江戸時代にはどれほどのものであったろうか。73.8ミリ。


仙人図鐔 随友(花押)

 随友なる金工は銘鑑に出てこない。知名度の低い金工ながら、この鐔を見ても判る通り、頗る上手な工である。赤銅地高彫に金銀の色絵。正確な構成で精密な彫刻と表面処理により、人物が際立っている。ここでも高彫と肉合彫を組み合わせた描法であり、立体感に満ちている。