鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

虎の子渡し図小柄 利壽 Toshinaga  Kozuka

2011-09-17 | 鍔の歴史
虎の子渡し図小柄 (鍔の歴史)



虎の子渡し図小柄 利壽(花押)

 利壽の虎は凄い。獅子図にもみられるように、表情が険しく目が鋭く、地から実体的に飛び出してきそうなほどに高彫の肉の量感が高い。安親の虎と比較してみれば一目瞭然。もちろん荒れ狂う川を渡ろうとする姿と洞窟に佇む姿とでは主題も異なろうが、本質が違っている。鉄地高彫に金象嵌。
 利壽は奈良三作の一人で、安親、乗意とともに江戸金工の祖ともなった名人。鉄地や真鍮地高彫色絵象嵌の手法で和漢の歴史人物や風景図を採り、武家の伝統的な美意識を表現した。


虎の子渡し図小柄 乙柳軒味墨(花押)

 下は同図を採った、同じ奈良系の浜野家四代味墨政信の小柄。虎の目がいい。ゆったりと泳ぐ姿には川を恐れる様子が感じられず、堂々としている。