鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

菊花図鐔 太刀師 Tachishi Tsuba

2014-11-01 | 鍔の歴史
古美術品というと絵画や焼物、漆製品が多くの方々の興味の対象とされているようです。金工作品というと、良く判らないと言われる方も多いようです。さらに日本刀に関わる装剣小道具となると、少々距離を置きたいという方も多いようです。そこで、少しでも装剣金工について多くの方々に理解してもらい、多様な魅力を感じていただこうと始めたのがブログです。説明する当方も、金工の入口におられる方々に対し、どこから手を付け、どのように金工作品を説明したらよいのか、未だに迷いながら進めています。今は技術的な面で捉え、特に金工作品の繊細な表情を見逃されないよう、鑑賞の様々な要点について述べています。もっと名品を出してほしいという声もありますが、名品ばかりが良いとは言えないのが現実です。安価な作品にも魅力溢れるものがあります。金工作品を紹介する立場にある私たちは、私たちがかつて抱いていたような、金工に興味を抱き始めた方々の新鮮なあるいは自由な、視線や感じ方などを摘み取ってしまわないよう、心を広く持ちたいと改めて感じているところです。

菊花図鐔 太刀師


菊花図鐔 太刀師

 時代の上がる太刀師の作。山銅地高彫。この魚子地も古拙と言って良いのだろうか、味わい格別のものがある。魚子の丸みは充分にあるのだが、揃っていない。それでも縦に並べようと試みているのが判る。内側に装着されている大切羽の魚子地は一際小さいが故、石目地状に見える。でも小さな半球の連続である。高彫の後に魚子地処理をしている。斬り込んだ鏨の強みも同様に、古風な処理が魅力の作である。