鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

冬景色図鍔 埋忠彦右衛門

2014-11-15 | 鍔の歴史
冬景色図鍔 埋忠彦右衛門


冬景色図鍔 銘 城州西陣住埋忠彦右衛門

 まさに風景の文様表現。風景の心象表現と言っても良いだろう。洗練された美意識を背景に、陰陽に意匠した透かしと、平面的な象嵌手法の組合せからなる表現の鍔は埋忠明壽に始まると考えられ、その門流の金工は新たな美観を求めて表現世界が広がった。埋忠明壽は平象嵌で有名であるが、古法である布目象嵌も巧みに採り入れていた。装飾手法としての布目象嵌は歴史が古く、また近代に至るまで盛んに用いられた。この鍔は、切羽台周辺の牡丹、その周囲に配した唐草は枝葉というより、牡丹の香りを心象表現しているようだ。笹に積もった雪は、古風な雪輪模様。いまだ六角形の組合せになる雪の結晶図は一般的に採り入れられてはいない時代である。鉄地金銀布目象嵌陰透。