鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

猛虎図鐔 常重 Tsuneshige Tsuba

2014-11-04 | 鍔の歴史
猛虎図鐔 常重


猛虎図鐔 常重

 常重は江戸の奈良派の金工。奈良派が良く用いた真鍮地の質感と渋い色調が活かされた作。地面は鋤き込んだ部分に鏨を打ち込んで荒々しい空気感を創出している。これは、先に紹介したような、腐らかしによるものではなく、明らかに鏨の打ち込み。切羽台部分を見ても判るように、鏨による点の連続が揃っている。鋤き込んだ部分にも大小の鏨を打ち込んでいる。とにかく迫力がある。このように背景に動きがあると、主題が自然と浮かび上がり、主題が明確になる。地の表現とはこのような意味合いがある。後藤家の魚子地には背景を省略する場合と、明らかに砂浜などを意図する場合があり、各々に活かされている。それは金工作品すべてにおいても言えることであり、この石目地にも多様な表情があることを感じとりたい。

鈴虫図小柄 江川斎桂宗隣 Sorin Kozuka

2014-11-04 | 鍔の歴史
鈴虫図小柄 江川斎桂宗隣


鈴虫図小柄 江川斎桂宗隣(花押)

 魚子地は、江戸時代後期に至ると、写真のように綺麗に揃った仕上がりとなる。もちろんすべての魚子地が同じような美しさではない。魚子地の技術者の技量の違いによって出来が異なる。このように揃うと、写真撮影するとモアレが生じる。印刷や現代のデジタルカメラでは、撮像部分が綺麗に揃った点の連続であるため、同様に魚子地が揃っていると、魚子地とカメラの撮像素子が干渉し合って縞文様ができてしまうのである。そのくらい美しいということ。