岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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「遥かな友へ」(原発、兵器産業に勤務する友へ)

2015年01月26日 23時59分59秒 | 政治経済論・メモ
X君へ


 君の勤務する企業を、原子力産業、兵器産業と言えば君は怒るだろうね。これは『』つきにしておきたい。何故って君の会社は、原発や兵器だけを製造しているわけではないからね。


 でも君の会社は、原発のタービンと兵器を生産しているのは間違いないだろう?

 原発の方から話をしようか。原子力の平和利用。僕も東日本大震災での福島第一原発の、原子力災害が発生するまで可能だと思っていたよ。少なくとも可能性はあると考えていた。安全な開発を望みながらね。

 しかし、この考えは、3・11以降180度変わった。原子力は人類が制御出来ないエネルギーだ。制御するには、幾多の実験と失敗を繰り返していくだろう。科学は、実験と失敗を繰り返しながら進歩してきた。だが原子力開発の失敗は、大きなリスクがある。

 原発の安全性を担保するはずだった「五つの壁」は電源喪失によって、いとも簡単に役に立たなくなった。排出される放射性物質の処理方法も未確立だ。放射性物質から放射線が出なくなるまで、気の遠くなるような時間がかかる。それまで安全に保管されるという絶対的保障はない。

 日本中の原発が停止してから2年経った。その間、節電と自然再生エネルギーで、何とかしのいで来たよね。こうしているあいだに、エンジニアである君を含めた科学者が総力をあげて、自然再生エネルギーの開発に取り掛かってほしいと思う。


 君は産業界が原発がないために打撃を受けていると、実例を挙げてメールを送ってきた。そのことの真偽を判断する材料を僕はもっていない。こういうのは君を疑っているのではないんだ。原子力は安全だ、絶対事故は起きない、挙句の果て、「プルトニウムは飲んでも安全だ」という科学者までいたよね。(たしか東電関係の科学者だった。ツイッターで魚拓をとっている人がいるよ。)

 こういう危険があるから、原子力産業を、「死の灰の商人」と呼ぶひともいるんだ。この言葉は君には不愉快だろう。だがそれほど原子力開発には信用がないんだ。

 あらゆることを科学技術で制御できるというのは、人間の奢りだよ。だから科学で自然を征服できるなんて言うひとは、今はもういない。だからこんなリスクを負うのなら、原発がなくても、経済がまわっていくように、君の持てる力を発揮してほしいのだ。

 原発から撤退して、君の会社は利益が減るかも知れない。君の給料はさがるかも知れない。だけどここは私的利益より、安全を優先してほしい。放射性廃棄物が放射線を出さなくなるまで、深刻な事故が今後絶対怒らないと君は責任もって言えるのかい?

 言えないだろう?だからこそ原発からは撤退して欲しいと僕は考える。


 次に武器の話をしよう。武器は人間を殺傷するのを目的とする。君は防御兵器もあって、自分の会社は正面装備は製造していないとメールを送ってきたよね。だけど新兵器が軍事的緊張を高めることもあるのさ。もしそうなった場合、君はどう責任をとるのかい?君の会社はどう責任をとるのかい?

 まして中東地域など、紛争地域の国に武器を輸出したり、安全保障のパートナーシップの協定を結んではいけないのだよ。防御の兵器を作る技術があれば、攻撃型兵器も作れる。

 だから世の人は兵器産業を「死の商人」と呼ぶんだ。武器の輸出は、世界の紛争を激化させ、日本を戦争の当事者にしかねない。

 「座して死を待つのか」「家の戸締りはするもんだ」というのは、改憲や軍備強化を主張する人の常套句だ。現実的に資源もない日本をどこの国が攻めてくると聞いたら、「日本を攻める国は日本の国家を否定するのだから、日本人は皆殺しになるか、奴隷状態にされる。だから資源がなくてもせめて来る国はせめてくる。」あまりにも荒唐無稽ではないかい!

 そして一番気になるのは君の言葉から、「危険なものを扱っている」というニュアンスが感じられないことだ。だから僕は、原発に反対だし、兵器の製造、輸出にも反対なのだ。

 原子力産業、兵器産業が「成長戦略」にでもなったら、日本は、原発や戦争がなければ生きて行けない国になる。原発や武器を、首相がトップセールスをしている状況では、なおさら危ない。

 せめて君が、悩みながら仕事をするように、願っているよ。





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