1、返答のなきこと即ちわれに向く敵意に似たる心と思う
2、みずからを許せぬものと思うとき顔を洗えり幾度となく
3、長電話終えたるのちの窓のそと雨が次第に激しくなりつ
1、何が不満か知らないが、僕が声をかけても返答しない人がいる。また、僕が挨拶しようとすると、視線をそらし、離れて行く人がいる。僕はそんなに敵を作っているのだろうか。そんな思いを一首にした。結句は「なるべし」その方がいいと思う。
2、自分を自分で許せない、としばしば思う。特に夜になると、その思いが募る。過去のことを「過ぎゆき」というが、過去は取り返しがつかない。過去の事実は変えられない。しかし、子供の頃から、「時間がもとに戻ったら」とよく思った。還暦近くなっても、それは、変わらない。ただ、子供のころと違うのは、思い悩むだけでなく、それを昇華する方法を見つけたことだ。その一つ顔を洗う。手を洗うのでは昇華できない。
3、電話に出るのが苦手だ。長電話になるとイライラする。忙しいときに限って長電話がかかってくる。そんなイライラを一首にした。
『現代万葉集』2017年版はNHK出版からの刊行。日本歌人クラブのアンソロジー。
価格2857円+税。出詠者が多く作風も様々。本格的に短歌に取り組みたい人が「結社(同人誌)」を選ぶのに最適。