岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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「集団的安全保障」と「集団的自衛権」とは異なる!

2015年06月19日 23時59分59秒 | 政治経済論・メモ
20世紀に人類は「二つの世界大戦」を経験した。1914年から1919年の第一次世界大戦と、1939年から1945年の第二次世界大戦である。

 第一次世界大戦が始まったときドイツでもロシアでもフランスでも戦争指導者たちは戦争が数週間で終わるものと考えていた。しかし戦争は、戦車、毒ガス、飛行機、潜水艦、火炎放射器などの近代兵器の試用によって、長期戦、持久戦となって、戦死者は2000万人に及んだ。これまでの戦争とは桁外れの戦死者が出た。

 第二次世界大戦も同様である。空母、原爆、レーダー、ロケット弾などの使用のため、戦死者は6000万人もに及んだ。

 そこで二つの大戦の終了後に国際組織が作られた。第一次世界大戦後の国際連盟と、第二次世界大戦語の国際連合である。この二つの国際組織は世界大戦の再来を防ごうとしたもので、仮想敵国を持たない「集団的安全保障」である。これは、大国の思惑で運営が左右されるなど、戦争防止に万能ではないが、重要な役割を担っていた。

 第一次世界大戦後の「毒ガス禁止条約」、20世紀末の「対人地雷禁止条約」などの締結に大きな役割を果たした。「集団的安全保障」の概念が生まれたのは、国際連盟が最初である。

 これに対して「集団的自衛権」は性格がまったく違う。ありていに言えば、軍事同盟、軍事ブロックなのだ。

 第一次大戦前の、イギリスとドイツの軍拡競争、覇権争いを背景とした、三国協商(イギリス、フランス、ロシア)、三国同盟(ドイツ、オーストリア、イタリア)。この二つの軍事同盟はお互いを仮想敵国として、第一次世界大戦の遠因となった。日本は、日英同盟を理由に参戦した。アジアのドイツ領植民地を始め、地中海まで軍隊を派遣した。

 第二次世界大戦前の、日独伊三国軍事同盟は、三国がソ連を仮想敵国とし、イギリス、フランス、アメリカといった、植民地大国に対し、植民地の再分割を要求した。

 第二次世界大戦後の、北大西洋条約機構、ワルシャワ条約機構は、アメリカ、ソ連をそれぞれ中心とした軍事同盟だ。この二大軍事ブロックが、お互いを仮想敵国として、核兵器を搭載したミサイルを対峙させ(アメリカのトマホーク、ソ連のSS20)、軍拡競争の原因となった。冷戦終結後、これらの国から、発展途上国に武器が流れだし、国際紛争の原因となっている。

 もし仮に、アメリカが中東諸国を攻撃し、ホルムズ海峡が機雷で封鎖された場合、日本は「集団的自衛権を「発動し」、掃海艦を派遣すると言う。そうなると日本はアメリカとの交戦国の敵国と見做される。これが、軍事ブロックの危険性をあきらかにしているだろう。

 また安倍総理は「朝鮮有事の際の、邦人保護、救出のためのアメリカの艦船を、自衛隊が護衛すると言うが、「朝鮮有事」とは、アメリカが朝鮮半島で戦闘行為を行うという事で、それを回避するために努力するのが、日本に課せられた課題だろう。

 日清戦争、満州事変を振り返るまでもなく、「邦人保護」が戦争開始の口実として使われたのも考慮するべきだろう。

 そしてこれが最も重要なのだが、「集団的自衛権」は、東西冷戦を背景にアメリカの強い意向を受けて、中南米諸国が、国連憲章に入れさせたもので、与党の幹部が言うように、自由権、平等権のような「自然権」ではないのである。

 国連には国際連盟とは違って、国連軍という武力制裁の手段がある。国連は仮想敵を持たないから集団的安全保障と言えるだろう。これは万能ではないが果たすべき役割がある。だがアメリカを中心とする、多国籍軍、有志連合は集団的安全保障とは言えないだろう。軍事行動の規制に国連の安全保障理事会の意向が投影されないからだ。

参考文献:「集団的自衛権と日本国憲法」(浅井基文著)、「二つの大戦」(江口圭一著)、「世界史再入門」(浜林正夫著)、三省堂「世界史小辞典」、歴史学研究会「日本史年表」、「戦後史」(中村政則著)。




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