歴史修正主義と人種差別と
僕は毎日、ブログと連携したフェイスブックとツイッターで、社会問題についての発信をしている。
集団的自衛権の問題、「従軍慰安婦」の問題、南京大虐殺の問題、日本の戦争責任の問題、核兵器廃絶の問題。なぜかと言えば、安倍政権の「戦後レジームからの脱却」に危機感を抱くからだ。
戦後日本は、ポツダム宣言を受け入れることからはじまった。それは軍国主義を一掃すること、日本の戦争責任を認めることだった。しかし、安部首相の「戦後レジームからの脱却」は、戦後日本の前提条件を考慮に入れないかに見える。軍国主義の復活を思わせる。
そこでこうした発信をしているのだが、その中心は、歴史修正主義と解釈改憲へ反対の意思表示だ。ツイッターでは、いわゆる「ネトウョ」や右翼に絡まれる場合も多い。
その「ネトウヨ」とやり合うなかで、気づいたことがある。歴史修正主義とレイシズム(主として中国人、朝鮮人に対する人種差別)とが不可分に結びついているのだ。仮にその「ネトウヨ」を「彼」と呼ぼう。
彼は言う。「『従軍慰安婦』は朝日新聞の捏造だ。」「歴史修正主義は捏造された歴史をもとにもどすのであって、問題はない。」
しかし、彼の言うことに説得力はない。「従軍慰安婦」問題は、朝日新聞以外に史料や証言があり、事実を争う余地はない。安部内閣が「河野談話」の検証(見直し)を目指しておきながら、見直せなかった。レイシズムについても国連をはじめ、欧米の各国から批判の声が上がっている。
ツイッターで、彼にそのことを伝えたが話しにならない。朝日新聞の「従軍慰安婦」の訂正記事を「鬼の首をとったように」繰り返すだけ。歴史修正主義が国際的に批判されていることを話しても、「それは各国のメディアに潜入した朝鮮人の仕業だ。そうこうしているうちに朝鮮人の思惑にはまってしまう。」と言う。(何と荒唐無稽な)。
「かの福沢諭吉も朝鮮人に近づかないように言っている。」とこう来る。福沢諭吉は「東洋盟主論「脱亜論」で日本の侵略行為を正当化した人物で「紙幣の肖像画からはずそう」という意見もある、と言ったところ、「それは福島瑞穂の意見か『赤旗』の意見か」と言う。思想史の常識も彼には通じない。
そして彼の情報源は、週刊誌と三流出版社の出す、「嫌韓」「嫌中」(いわゆるヘイト本)の書物だった。
偏見と人種差別で、彼の意見は満たされていた。彼は退職者らしく、ほとんど一日中、ツイッターのツイート返しをしてくるので、いささか僕も疲れた。
「もうやめませんか。歴史修正主義とレイシズムが結びついているのを、知っただけで充分勉強になりました。ブロックさせていただきます。」これで彼との会話は終わった。
それにしても驚きだ。朝鮮や中国に対する差別意識が形成されたのは、日清・日露戦争のあとだ。そして歴史修正主義は現代の思想だ。100年以上前の思想と現代の思想が結びついて、社会に根強くはびこっている。そんな時代錯誤の思考が、いまの、右翼、「ネトウヨ」の思考の根底にある。そして彼らの気に入らない意見はすべて左翼の思想だという決めつけ。
こういう傾向が一掃されない限り、「日本は人権後進国」「日本は自国の歴史に真向かわない国」と国際社会から批判され続けるだろう。