岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

「詩人の聲」:2015年5月(2)

2015年06月02日 23時59分59秒 | 短歌の周辺
天童大人プロデュース「詩人の聲」2015年5月(2)


7、筏丸けいこ 5月23日(土)於)真美ローズガーデン

 筏丸は32回目の公演。屋外なので風に薔薇は揺れたが、聲は揺れない。しっかりとした聲、揺るぎないリズムで、リフレインが効いている。しかも繊細。

 作品に厚みと重量感があり、歯切れのよい作風だ。またリズムが快い。筏丸は祭り好き。その気風のよさが作品に現れている。

 作品のコンテンツは、人間の葛藤、生と死、人間の迷い、自己の存在の確認と、問い、エゴとのたたかい。こうした人間の精神の在り方が作品化されてる。作品で表現されているのは鳥、犬、ネズミ、植物だが、それぞれが人間を、暗示している。人間の在り方を深め、作品の主題が明確だ。

 そのコンテンツが、「筏丸節」とも言えるフォルムを持っている。コンテンツ、フォルムともに、作者の独自性が花開いている。詩歌は音声の芸術とつくづく思う。

 新詩集を考えているそうだが、それに向かってスパートがかかるだろう。


8、長谷川忍  5月26日(火)於)ギャルリー東京ユニマテ


 長谷川は27回目の公演。安定したリズムで、力まない聲が力強く響く。6月には詩集を出すそうだが、収録予定の作品を聲に載せ、作品を磨いている。

 先ずは新作5編が読まれた。都会人のわれとは何かという問い。都会人の思想、悲しみ、孤独、都会に住む詩人の内面。これらが明確に作品化されている。この5編は新詩集に収録予定はないが、新しい境地が早くもあらわれている。6月の詩集が楽しみだが、その次の詩集も楽しみだ。

 詩集の収録予定の作品。長谷川の作品の特徴は、都市生活者の抒情。それを都市を故郷とするような捉え方で作品化している。そのなかでも人間関係の葛藤、都会人の喜怒哀楽、愛情、悲しみ、などが滲み出るものだ。

 作品全体が、生活派と呼べる性格を持っている。


9、川津望   5月30日(土)於)キャシュキャシュダール

 川津は6回目の公演。静かな聲で作品がしなやかにくるまれるように読まれていく。だが緩急もつけられ、切迫した作品は切迫したリズムで読まれる。

 透明感があり、冷涼な深みのある作品、重厚で厚みのある作品。抒情の質が鮮明だ。

 作品のコンテンツは、人間の苦悩、自己嫌悪、人間の生死、空虚感、不安感。対人関係の苦悩。人間の悲しみ。これらが、くっきりと奥の深い世界を作りつつある。

 だが自分を必要以上に傷つける作品、俗語が中途半端にとりいれられている作品、もやもやとした作品が時おりまざる。この辺をどうするかが、課題だろう。しかし先は明るい。

 作者本人が迷い、悩みながら、作品を創作し、聲を出している。「これでいいのか」と常に自分に問いかけている。これは大きい。だが考え過ぎないよう心掛けるのがいいと思う。





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