新型コロナウイルスが中国で猛威を振るっている。日本でも感染が拡大しつつある。使い捨てマスクが店頭から姿を消した。マスクを手作りするガーゼも品薄。防護服に至っては生産が追い付かず、福島の原発の廃炉作業の現場では、防護服が入手できずにレインウェアで代用するということだ。
確かに危険な状態だが、冷静に行動したいと思う。
ここにきて様々な不手際、勘違いが広がっている。政府による初期対応が後手後手にまわって、ちまたでは「クルーズ船の搭乗者を上陸させるな」という声も聞かれる。
政府は中国の武漢がえりの人を対象に、体温の高い人を自己申告させ、ウイルス検査をした。感染が拡大したクルーズ船を横浜港に長期停泊させ、上陸させない措置をとった。
だがこれが誤りだった。高熱を申告して検査が陽性となれば隔離される。ビジネスマンは職場を休まねばならない。全員の体温検査をするべきだった。またクルーズ船の件。早い段階で全員検査を実施し、陽性反応の人は、設備の整った医療施設に入院させ、陰性反応の人は、都市から離れた施設に収容して、潜伏期間を通して経過観察する。これをすべきだった。
他国からの感染症の侵入を防ぐために、海外の国ならどこでもやっている。これをせずに長期間狭い空間に閉じ込めたためクルーズ船の船内で感染者が激増した。クルーズ船に乗り込んだ検疫官が簡易服だったために、ウイルスに感染しそのまま発症まで、通勤退勤を繰り返した。空港からの侵入も防げなかったのか、感染ルートが特定できない患者が増えている。
報道によれば政府の対策本部に専門家が当初はいっていなかったのも指摘されている。こうした対応がWHOから「これをやってはいけない見本だ」という趣旨の警告となり、アメリカ、カナダ、オーストラリア、香港は自国民を迎えにやってきた。「日本政府には任せておけない」という判断だろう。韓国も迎えに来るのを検討している。
今からでも遅くはない。国際基準の対策を講じるべきだ。
クルーズ船の搭乗者には全員検査を実施し、陽性反応の人は医療施設に、陰性反応の人は都市からはなれた施設で経過観察を。この経過観察は、アメリカは砂漠の真ん中の軍事基地で、ロシアはシベリアの施設でおこなっている。
航空機での侵入もある。必要があれば入国者全員の体温検査が必要。
専門家の意見を入れ、医学的、疫学的に根拠のある対策を講じるべきだろう。
ここにきて、日本に対する中国国民の対応が変わってきた。日本からマスクなどの支援物資が送られているのだが、今までは感謝の意がネット上に溢れていた。しかし最近は感謝の意は少数派。「もういい。日本が大変なのだか、日本で使ってくれ。」という反応が増えている。
これには心打たれる。
「クルーズ船から下船させるな」
「中国人は中国へ帰れ」
などという鎖国意識丸出しにはなりたくないものだ。こういう場合、「正しく怖れる」とよく言われる。閣僚の一人がそう発言しているが、これは寺田虎彦が関東大震災のあと残した言葉だ。この言葉が「朝鮮人が東京中の井戸に毒を投げ込んでいる」という流言飛語を批判した言葉とセットだった。このことを心に刻んでおこうと思う。