岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

街灯に照らされ闇に浮かびおり 夜の桜の花の輪郭

2010年06月22日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「夜の林檎」所収。

 桜を詠むのは難しい。「風」「花びら」「散る」「舞う」など決まり文句があるからだ。それでも何とか詠んでみたい。そう思って詠んだ作品だ。

 そこで「桜の花そのもの」ではなく「花の輪郭」を素材にした。そして街灯に照らされる「夜の桜」。

 僕の家の近所に桜並木がある。幹線道路なので街灯も多く明るい。それにしては人通りが少ない。「夜桜」だが花見の雰囲気はない。静寂のなかで水銀灯が桜の花を照らし出す。桜色ではない。モノクロの世界だ。

 それと下の句の音韻。「・・・の・・・の・・・の」とリズムを整えた。個人的には、この反復は心地よい。佐佐木信綱の代表作にもあった。春日井健も好んだ。だからという訳ではないが、僕のまわりには使う人が少ないので、あえて使った。

 モノクロの世界の「夜の桜」の印象を読者が感じてくれればいいと思った。

 「運河」誌上での批評では、「気の効いた一首」といわれた。素直に褒め言葉と僕は受け取っている。




最新の画像もっと見る