今年は団地の管理組合の役員の順番がまわってきた。自治会と管理組合の役員とのなかから選べる。管理組合の方が忙しいのだが、事情があって管理組合の役員を選んだ。その中で植栽理事を選んだ。短歌には植物がよく詠みこまれる。植物図鑑ももっているが、植物図鑑の写真は実際のものと印象が異なる場合がある。だから団地内の植物に限られるが、いい機会だと思って選んだ。
そのうちいくつかのことに気づいた。先ず団地内の植物の種類が多い。桜だけでも山桜、染井吉野、など数種類ある。次にその管理を業者に依頼していては経費が膨大になる。植栽だけで数百万になる。管理費はそう値上げさせられない。出来ることは住民が自分自身でやらなければいけない。そこで「グリーンボラティア」に参加することとした。管理組合の仕事として植物への施肥を昨年の秋に行った。団地内の植え込みにバールで穴をあけ、混合肥料を流し込む。総勢40人ほどの大仕事だった。そこで活躍したのがグリーンボランティア。安売りの時に必要な肥料を購入していて、肥料の混合も行っていてくれた。そのため、経費がかなり節約でき、作業も短時間で済んだ。
そこで参加を決めた。これまでに作業は二回。脚立の整備とマテバシイの剪定。春先に余分な枝を落とす。それで植物が新芽を出しやすくするのだろう。住民がやれば無料だが、業者に頼めば、一本2万円はする。ボランティアで5本剪定したが、10万円は節約できた計算になる。
全くの初心者だが最初の作業から脚立に登った。ベテランが棒で指し示す枝を切っていく。そのとき聞いたのが次の言葉。
「多少失敗しても植物は芽をだすからね。木を大事にしてね。冬にきるのはかわいそうだから。葉は掌が上をむいて」頂戴をするように切るんだ。」
聞きながら冷や汗かいて鋏を使ったが、随分思い切って刈り込むものだと思った。二回目の作業では木を一本任された。最上部はベテランに作業してもらい、真ん中から下を担当した。それは不思議な体験だった。どの枝を切ってよいかわからない。だから枝一本一本作業するのに考える。
「この枝を切ると、木の姿が悪くなるな。」「この葉を切ると、光合成ができなくてこの枝が枯れるな。」「ここは今回切るとタイミングが悪いので次回に切ろう。」
こう考えながら剪定していくと樹木と会話をしている心地になった。作業が一通り終わると、ベテランの作業をみる。どの枝を切っていくだろう。見当をつけて見ていると、そこを切るのだがいっぺんには切らない。徐々に刈り込みながら全体の形を整える。これは美容室での美容師の髪の切り方と同じだ。
剪定作業は樹木の美容だ、こう感じて辞書を引いた。
「剪定:樹木の美容。」
シルエットを確認しながら徐々に刈り込んでいく。美容室で髪を切られるときと同じだ。樹木の剪定。これを通して樹木と会話ができた。植木職人は樹木の美容師だ。刈り込むことで美容師の気持ちも経験できたのだろうか。こんど美容室で美容師に聞いてみようと思っている。