この歌会は20年続いている。尾崎主筆が率いる歌会だが、尾崎主筆の健康問題で、僕を含めた選者が、より力を入れなくではならなくなってきた。
かなり完成度の高い作品が出詠されるが、批評は厳しい。「みんな上手くなったから、独自性を出し、もう一段上を目指して欲しい」が尾崎主筆の口癖になってきた。
批評の論点はいくつかある。佐藤佐太郎仕込みの批評の基準だ。佐太郎は故人だが、尾崎主筆の言葉を通じて追体験できる。これが大きい。
今回の論点。
「オノマトペ、擬人法に問題が出てくることが多い」「さらっと表現せよ」
「絵画は絵画。そのまま素材にはならない」「日常報告的になるな」「助詞に留意せよ」
「音感を大事にせよ」「古語にこだわって古臭くなるな」「現代詩というのを忘れるな」
「軽い歌もあるが、それで一つの世界を作っている場合もある」
「叙情詩であるのを忘れず、事実報告、叙述になるな」「散文的になるのに注意」
「批評は良いところを先ず言え」「短歌は歴史があり、完成した詩形だ」
「素直に歌え」「口語を使い分かりやすくする方法もある」「作品を声に出せ」
「感想文的になるな。百年後に残る作品を目指せ」「自己満足に終わるな」
「上の句に心理、下の句に具体、を入れると、表現が落ち着く」
「上手い歌はいらない。良い歌を作れ。良い歌とは何かを考えよ」
ともに中級者以上の作者への言葉だ。初めて尾崎主筆の批評を受けた時に質問したら、「そんなことは言葉で言えない」と言われた。最後は自分の頭で考える必要があろう。