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書評『火山入門』(NHK出版新書)

2016年11月30日 12時55分27秒 | 書評(政治経済、歴史、自然科学)
『火山入門』(NHK出版新書)島村英紀著


 本書は一般向けの火山の入門書だ。日本列島が巨大な火山列島の上にあり、絶え間ない火山活動の果てに出来上がったこと。現在でも火山活動は続いていて、いつ巨大噴火があってもおかしくないこと、御岳山や雲仙普賢岳の噴火規模は最大級ではないこと。こういうことが説かれている。



 プレートテクトニクス、火山と地震、日本列島の活断層。こういった内容は、地学の好きな高校生や社会人にはこたえられない内容だ。


 本書には「目から鱗」の内容がいくつかある。


  日本列島は四枚のプレートのせめぎあうところにある。「ユーラシアプレート」「太平洋プレート」「フィリピン海プイレート」「北米プレート」。このうち「北米プレート」は20年ほど前までは指摘されていなかった。今でもプレートの境が点線になっている。プレートは「ここがプレートです」と主張しているわけではないので点線になっているのだ。海底や地球の内部はそれほどわからないことが多い。


  日本の火山は日常生活の時間の考え方では噴火を怖れるほどではないが、百年から数千年、数万年の単位で考えれば火山がいつ大噴火を起こすかわからない状態にある。


 「地震予知連絡会」「噴火予知連絡会」と命名されているが、地震や噴火の余地は学問的には難しい現状にある。有珠山の噴火の予知に成功したのは条件のよさが重なりあったこと。ある火山では噴火の予兆だったことがほかの火山では予兆とならない。


 火山の大噴火は九州を丸ごと飲み込んでしまうようなものであり、実際に縄文時代の文明がひとつ滅亡するほどのことがあった。


 また活断層は過去に断層の動いたあとが地上から確認できるもので発見されていないからそこに活断層がないとは言えない。


 著者は東京大学助手、北海道大学教授、北海道地震火山観測センター長、国立極地研究所長を歴任。こうした豊富な研究歴に支えられて読み応えのある一冊となっている。


 また本書は自然科学が社会性を持っているのも示唆している。第四章に「地震噴火と原子力発電所」という項目がある。ここには「(日本は)これからも『大噴火』や『カルデラ噴火』、そして大地震が避けられない狭い国だ。そこで、原子力発電所を持ち、廃棄物を数万年の単位で長期にわたって管理しなければならない核燃料を扱うことはなんとも無謀に見える。」


 考えを巡らせば、原発だけでなく全長の八割がトンネルで中央構造線、静岡糸魚川構造線の重なる日本アルプスを貫くリニア新幹線の危険性にまで思いは及ぶ。

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