法治国家には一つの原則がある。簡単にいうと罪を犯してから後に警察に逮捕される。裁判を受け罪に応じて罰をうけるということだ。。犯罪の可能性では殺人などの凶悪犯罪を除いて事前に逮捕されることはない。警察の恣意的な逮捕を防ぐためだ。それは基本的人権を大きく侵害する可能性も大きいからである。事実小泉内閣の時に、共謀罪が上程され可決成立が可能だったにも関わらず小泉首相は「私は平成の治安維持法を制定した総理になりたくない」と廃案になった。何度も廃案になった。
今回の「テロ等組織犯罪準備罪」は名前こそ違え共謀罪と同じ内容を持つ。まず前述の原則を逸脱している。テロ対策は現行法で十分できる。国連が示した基準を踏まえた条約も批准されている。テロをなくすには「テロ組織に資金が流入するのを防ぐ、テロ組織に参加させないこと、テロの温床となっている貧困や差別をなくすこと。これが求められる。
テロ対策というのは口実に過ぎない。今回の法案の内容には、窃盗罪、詐欺罪、暴行罪、恐喝罪、威力業務妨害罪、道路交通法違反など700近くの犯罪の類型が含まれている。
拡大解釈すればいくらでも警察の判断一つで逮捕が可能になる。
「今夜は残業で遅くなったから、駅前の放置自転車を一晩だけ借りようか。」(窃盗罪)
「駐車場がないから、2時間だけ違法駐車しようか。」(道路交通法違反)
「競馬で20万儲けたあいつをヨイショして10万ばかり出させて遊ぼうか」(詐欺罪)
「部下のいうことに全く耳を貸さない上司。こんど呼び出して喝をいれようか。」(恐喝罪)
「あいつ気に入らないからスリッパでひっぱたいてやりたい。」(暴行罪)
「森林公園の近くに大規模な墓地が計画されている。反対しよう。」(威力業務妨害)
「ブログに大江健三郎の著作からの引用をしよう。」(著作権法違反)
「社長を呼んで要求を呑むまで、団体交渉しよう。」(監禁罪)
共謀罪とはこれらのことを口に出しただけで罪になるのだ。こんなことをすべての案件でに適用したら社会が大混乱する。では可能性の高いターゲットは誰か。市民運動のリーダー、政府に批判的なジャーナリスト、労働組合の幹部、野党の議員や幹部。言論の弾圧だ。すでに日本の報道の自由度は70位を下回っている。自民党の改憲案では基本的人権が大幅に制限されている。「国民主権、基本的人権の尊重、戦争放棄。この3つをなくさない限り自主憲法とは言えない。」と自民党の幹部が公言している。その場に安倍総理も同席しているがその発言を制しようともしない。
官房長官は「一般市民には適用されない。」と言う。だが戦前の治安維持法が制定されるとこにもこういわれた。だが治安維持法が戦争中の言論統制に使われたのは言うまでもない。
こうした危険性が大きいから、日本弁護士連合会が反対の意思を表明しているのだ。