事の起こりは香港政庁が「犯罪者引き渡し協定」を制定しようとしたことにあった。
香港は長くイギリスの植民地だったが、20世紀末に中国に返還された。中国は社会主義を標榜し、香港は資本主義。これを解決する方法が「一国二制度」だった。中国と香港では政治制度も法体系も異なる。
香港は複数政党制の議会制民主主義。憲法にあたる基本法は個人の尊厳を国家の上に置いている。中国は一党制。議会はあるが、政権党と国家の区別が明確ではない。憲法では国家を個人の上に置いている。
犯罪人が中国に引き渡されると、この一国二制度が危うい。そこで香港市民が抗議デモを開始した。無論丸腰である。数十万の人が夜の香港の目抜き通りを整然と埋め尽くしている写真がツイッターで日々アップされている。
ところが香港警察の弾圧が日に日に激しくなってきた。
丸腰のデモの参加者が警官に抗議すると有無を言わさず目つぶしを吹きかける(ペッパースプレイ)。
催涙ガスを容赦なく撃つ。これは発ガン性のある物質で浴びると皮膚にひどい発疹ができる。毒ガスに近いものだ。
また、香港の民主派の国会議員が全員逮捕された。
警察官が、デモの参加者を装ってデモ隊に潜入し、暴力を働くものも目撃されている。
また、市民がデモ隊から服に火をかけられて火だるまになる映像がアップされているが、火をかけられたものが、すぐさまシャツを脱ぎ捨て警察車両に走り込むのも目撃されている。中国政府が中国のスタントマンを使った演出といわれる。
ネットの最大のサーバーを持っている大学を制圧しようと警官隊が襲撃している。大学の学長の制止を振り切って。学生たちはマットレスを前面に掲げ、人間の鎖を作って阻んでいるが、多くが逮捕され、今は100人ほどしか残っていない。
こうした状況に国際的人権団体が抗議の声明をあげた。
「香港警察の弾圧は拷問に近い」(アムネスティインターナショナル)
日本では、日本共産党が、中国政府に弾圧をやめよという声明をだし中国大使館を通じて中国政府に伝達した。ほかの政党からは声明は出ていない。
#香港加油 というハッシュタグが使われ始めている。日本人も香港市民を支援しようということである。
日本のメディアでは「香港の暴徒」という印象の報道が目立つ。
ツイッターで香港の今を確認してほしい。アグネス・チョウというデモ隊のリーダーの一人が、映像や画像をツイッターで発信している。そこにはジャーナリストもデモ隊と同じ扱いを受けている様子がありありと映っている。
これは「第二の天安門事件」だ。
イギリスBBCの報道の中に「これは香港市民のアイデンティティーだ」ということが書かれていた。民主主義を失うのは香港市民にとって万死に値するということだ。
2019年11月の選挙でデモ隊を支持する市民によって民主派議員が過半数の議席を獲得した。この意味は大きい。
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