「共謀罪」は偽りに満ちた法律だ。
法律の略称からして偽りがある。「テロ等組織犯罪準備罪」これが略称だ。
だがこの法律はテロ対策ではない。日本はテロ対策のために13の国際条約を批准し、国内法を整備している。日本ペンクラブの反対声明に「テロ対策は現行法で充分」とある通りだ。
また組織犯罪という呼称。衆参両院での審議で明らかになったのは、二人以上が話しても組織犯罪とされる可能性があるということ。法律の条文に組織の定義も限定もない。拡大解釈が際限もなく可能だ。
それから「等」という呼称。等には何が入るか。市民の活動がすべてはいる。国会で明らかになったのは、人権団体、環境団体、消費者団体も監視の対象だということ。参議院の法務委員会で法相が本音をもらした。犯罪類型に「組織的威力業務妨害」「組織的強要罪」「組織的監禁罪」「著作権法違反」。この犯罪類型は適用範囲が広い。著作の一部をコピーしたり転載するだけで罪にとわれる。問わないという限定が条文のなかにない。警察の判断一つで犯罪と認定される。
また準備罪という位置づけ。準備の前の段階の計画、さらに前の段階の相談の段階で犯罪として摘発できる。著作権法違反を例にとれはコピーした範囲、使用目的で犯罪かどうか認定されるのが現行だ。だから個人的に使用する限りは許容範囲だ。しかし相談の段階で犯罪とされるというのは、この許容範囲がなくなることだ。
つまり警察の逮捕権が歯止めなく拡大するのを意味する。また話の段階で逮捕ということは事前に目をつけた人間を監視したり、メールやラインを盗聴したりするのが前提となる。監視社会、密告者会になると反対の声があがったのは当然だ。
国連人権委員会の特別報告者が「プライバシーの保証に問題がある」と指摘したのはまさにこれだ。この報告の内容は野党が国会で糾した内容だった。
国連人権委員会の特別報告者の報告は「国際基準の民主主義を守るつもりがあるなら、いくらでも相談に乗ろう」というものだった。これは国連人権委員会から「日本は人権後進国」と言われたに等しい。
国際ペン(国際ペンクラブ)、国際アムネスティ(アムネスティインターナショナル)、グリンピースジャパン。こうした国際的人権団体、国際的環境団体が「共謀罪の反対声明」を出しているのはそのためだ。
また政府は「国際犯罪防止条約」の批准に共謀罪罪が必要と主張する。だが「国際犯罪防止条約」はテロ対策ではない。マフィア対策だ。国際法上マフィア対策とテロ対策は厳密に区別されている。「国際犯罪防止条約」締結の際にテロ対策ではないと確認された。
日本が人権後進国とならないように、この法律の廃止を求めたい。法律の制定にも手続き上の問題があるのだが、それはまた別に投稿する。