二大政党制。これが盛んに言われ始めたのは細川内閣が誕生する前後だったように思う。「政権交代が容易な政党制」だと。
アメリカやイギリスの例が語られた。アメリカで言えば、共和党が失政すれば民主党に政権交代する。イギリスで言えば、保守党が失政すれば労働党の政権交代する。だから二大政党制は政治を活性化するものだ、とよく言われた。
しかし、これは幻想だと思われて仕方がない。アメリカやイギリスには、二大政党制が成立する基盤があった。イギリスでは、ナイトをはじめとする貴族と一般市民、アメリカで言えば保守色の強い南部とリベラル色の強い北部。アメリカは南北戦争があったほどだから、国が政治的に大きく二分されている。イギリスも同様だ。はじめ、保守党と自由党の二大政党だったが、自由党が衰退してからは、保守党と労働党の二大政党になった。しかしほかの国で二大政党制があるだろうか。あまり聞かない。よく聞くのは連立政権だ。連合政権といってもいい。連立の組み合わせが変化することで様々な政権の特色が生まれた。
いま、アメリカでもイギリスでも二大政党制は硬直している。選択肢が狭いのだ。それで低投票率が続いている。(朝日新聞が「二大政党制の幻影」という記事を一面に掲載したのを覚えている。
制度的に硬直し、二大政党制ができる政治的文化環境のない日本に、二大政党制を意図的に作ろうというのだから、土台無理がある。
小選挙区制はどうか。鳩山一郎内閣、田中角栄内閣で小選挙区制が導入されようとしたことがあった。小選挙区制の最大の欠点は死票が多いことだ。少数の比較多数が議席を独占する。田中内閣の時は「三割の得票で七割の議席が独占される」と言われ、反対運動が高揚して廃案になった。イギリスの政権党のゲーリーが与党に有利な選挙区割をしてその選挙区の形が両生類のサラマンダーににていたので、与党に有利な選挙制度をつくるろうとするのは「ゲリマンダー」と呼ばれた。
日本の場合は鳩山の「ハトマンダー」、田中角栄の「角マンダー」と厳しく批判されていた。その記憶が薄れたせいだろうか。細川内閣で、政治改革と称して「小選挙区・比例代表併用制」の選挙制度になった。小選挙区制の問題点はすでに書いた。「自民党戦国史」の書評にも書いたが、与党自民党の中にあった多様性もなくなってしまった。
公明党は連立政権というより、自民党の一派閥になった観がある。参議院選挙の選挙区選挙も、定員が定数が一選挙区あたり少ないという面からいうと小選挙区制に近い。
日本の国政選挙の投票率はさがる一方で50%そこそこの状態。与党は三割の得票率で七割の議席を占めている。議会制民主主義が形骸化してしまった。
半世紀前「日本型ファシズム」と言われた状況である。議会は形式的なものになってしまった。この辺で、二大政党制の幻影と小選挙区制のトリックから脱却すべきではないかと思う。