日本歌人クラブ「2010年版・現代万葉集」 出詠3首
・わが心日々拉げゆく思いして朝刊夕刊ていねいに畳む・
上の句は比較的すらすらできたが、下の句に苦心した。「朝刊夕刊」と名詞を続けることに少々ためらいがあったが、逆にそこが成功したのではないかと思う。
・禍々しき事件の続く初なつに庭に咲きたるドクダミ摘まず・
心を痛める事件が相次いでいる。そういうときにはドクダミの白い花などにも、なにか魅かれる。「ドクダミ」は漢字の表記もあるが、読みにくいしカタカナの方が白の印象が鮮明になると思ったのでこうなった。
・空調の効きたる部屋にやすやすと絶滅危惧種の獣が眠る・
「やすやすと」という語に苦心した。「絶滅危惧種の獣」を冷たく突き放している様に思われたがちだが、逆である。「絶滅危惧種の獣」の行く末に思いが及んだのである。「獣よ眠れ」では、たんなる「あわれみ」になってしまう。
付記1:< カテゴリー「岩田亨の短歌自註」「短歌の周辺」「身辺雑感」「多摩高20期同窓会」「大学の学問と僕の文芸」 >をクリックして、関連記事を参照してください。
付記2:「2010年版・現代万葉集」には作者名が「岩田享」と誤植されており、日本歌人クラブへ訂正を依頼しています。
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