日本国憲法は、1946年(昭和21年)に公布された。大日本国憲法の改正案として、議会で可決された。民選議員の議会が制定したので、民約憲法、民定憲法と言われる。
この日本国憲法の原則として、三原則が挙げられることが多い。国民主権、基本的人権の保障、恒久平和。この三原則を関連づけるとしたら次の通り規定できる。
「主権は国民にある。主権者の国民の基本的人権は最大限保障される。基本的人権は戦争で最も侵害されるから、国権の発動としての戦争は放棄する。」となろう。国民主権と基本的人権の保障は、世界共通だ。戦争放棄は、第二次世界大戦で、多大な犠牲者を出した日本の独特な規定だ。
これらの内容は戦争の再発を防ぐという発想のもとに制定された。しかしこの発想視点に立つとき重要な条項があと二つある。
それは議会制民主主義と地方自治である。
議会制民主主義はナチスドイツが、全権委任法によって議会を形骸化したことを教訓にしたものだ。今一つは地方自治だ。
大日本憲法では地方自治の規定はなかった。道府県・市町村は、国の出先機関だった。この中央集権体制が、戦争遂行を容易ならしめた。
「(中央集権)それが国家主義的統制、軍国主義的強力政治の柱となっていた。だから、民主主義的な政治を実現しようとするためには、明治憲法式の中央集権制は全面的に否定されねばならない。」(『憲法』自由国民社)
憲法の条文は次の通り。「第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」
本旨とは冒頭で述べた内容だ。そのありかただが、前述の『憲法』は次のように言う。
「われわれは、地方自治が『民主主義を育てる学校である』との意味をよく理解し、日本の民主政治の実現のために、なお地方自治の充実・拡充に務めなければならない。」
憲法の議論で、道州制が挙げられることがある。現在の都道府県にかえて、道州制を導入しようとする論議だ。道州制は、地方公共団体の区域面積を拡大する。拡大すれば地方公共団体と住民との距離が遠くなる。「地方自治の拡充」とは逆の地方自治の機能を弱める。
例えば、沖縄が選挙で米軍基地にノーの民意を示したが、道州制ではこうした住民の意思表示は困難となる。地方公共団体の区域が拡大するからだ。大阪の大阪都構想もこれと類似している。大阪市が大阪都の、特別行政区となれば、現在の政令指定都市から、特別地方公共団体になり、地方自治法の位置づけがかわり、地方自治の機能が低下する。
なお『憲法』には次の記述がある。「法律で都道府県や市町村の廃止を決定するのは、憲法違反である。」道州制と大阪都構想がこれに該当するのは明らかだろう。