岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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緊急事態宣言と緊急事態条項(特措法と憲法)

2020年03月12日 23時14分55秒 | 政治経済論・メモ
緊急事態宣言(特措法)と緊急事態条項(改憲)

 緊急事態宣言と緊急事態条項。よく似た名前だが、意味がかなり違う。


  緊急事態宣言は、「新型インフルエンザ特措法」を改正したあとの、法律の問題。
 緊急事態条項は「日本国憲法」の改定の問題。


 1. 緊急事態宣言の発令は、改正前の「新型インフルエンザ特措法」に明記されている。この問題は宣言の中に、基本的人権の制限がはいっているということだ。「日本国憲法の一部停止」という側面を持つ。私権の制限の内容。

・住民に対する外出自粛要請。
・学校や劇場、体育館など人が集まる施設の使用停止の要請・指示。
・音楽、スポーツイベントなどの開催制限の要請・指示。
・住民に対する予防接種の実施。
・臨時の医療施設のための土地、建物の使用、強制使用も可能。
・鉄道、運送会社などへの医療品、食品などの運送指要請・指示。
・医薬品、食品などの売り渡し要請。強制収容も可能。

 一見必要なようだが、ほかの「感染症法」など既存の法律と地方自治体の条例で対処できる問題だ。国家に権限を集中する必要はない。今回の学校に対する全国一斉の休校には感染者が全く出ていない地域がある。地方ごとのきめの細かい対策が必要なのだ。むしろ一律にする弊害が多い。今回も自営業、フリーランス、中小企業は打撃を受け、倒産するところも出ている。国会で首相が「フリーランス」の意味を知らなかったことも判明した。

 そうした人が強力な権力を持つのは危うい。恣意的に濫用すれば独裁への道を開く。国会・裁判所の事前承認、承認の解除、解除を求める裁判権の明記。これが最小限必要だ。それでも恣意的濫用が完璧に防げる訳ではない。非常に危険な法律だ。

(追記:なお、衆議院本会議で可決された法案の内容には、NHKへの指示がはいっている。これでは世論操作が可能。新型インフルエンザ特措法にはなかった条文で、これは見過ごせない)



 2・緊急事態条項。自民党の憲法草案にはいっている。「国家緊急権」だ。これは日本国憲法の停止を意味する。

・内閣総理大臣が判断すれば、緊急事態を宣言できる。
・内閣は法律と同等な効力を持つ政令を発せられる。
・内閣は国会の承認なしに、国会議員の任期を延長できる。
・内閣は国会の承認なしに、予算の執行ができる。
 
 戦前のドイツではナチスが、緊急事態条項を利用して、合法的に独裁政権を樹立した。ナチスの独裁は選挙で決まったのだ。そのとき、ドイツ国民は「これが最後の国政選挙」と言ったという証言がある。この国家緊急権は、民主主義とはベクトルが反対で、恣意的濫用を許すと独裁を招く。だから、ドイツでは濫用を防ぐ措置が二重三重に設定されている。アメリカでは「南北戦争」で一度、フランスでは「アルジェリア動乱」で一度使用されただけ。
 これは絶対阻まなければいけない。

 なお、1月30日に自民党の伊吹文明衆議院議員は「新型インフルエンザ特措法改正による緊急事態宣言は、憲法への緊急事態条項の導入の練習だ。」と本音を発言している。





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