岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

「68回目の8月15日」二つのイベント

2013年08月17日 23時59分59秒 | 短歌の周辺
1・第23回「8.15を語る歌人のつどい」(於)日本青年館

 毎年開かれる「8.15を語る歌人のつどい」。ここ数年、僕は体調の関係で、参加出来なかった。しかし今年は体調がいいのと、近頃のナショナリズムの高揚の気配を感じて、何としても参加しようと思った。

 「つどい」の内容は様々あったが、詩人であり、絵本作家、ラジオパーソナリティのアーサー・ビナードの話が印象的だった。

 演題は「平和の半減期ー広島と終戦の本当の関係について」だった。アメリカでは「原爆投下が終戦をはやめ、戦争の犠牲者を少なくした。」と言われる。日本でも「原爆投下により、敗戦が確定的になり、ポツダム宣言を受諾した」というのが、定説になっている。

 アーサー・ビナードも、学校で、そう教わったそうだ。だが何度も聞くうちに「胡散臭さ」を感じたという。「やむをえず人命を重んじて、2発の原爆を落とした」という事にまず引っ掛かりを感じたという。「やむをえず、1発」ではなく、「2発」。ここがおかしいと思ったそうだ。

 「マンハッタン計画」というものがあった。これは「プルトニウム型の原爆の完成」が最終目標だったという。「広島の原爆」は「ウラン型」(リトルボーイ)、「長崎の原爆」は「ウラン型」(ファットマン)。ヒロシマ型原爆には、濃縮ウランが使われる。これは天然のウラン鉱石を濃縮して、0・02パーセントしかとれない(ウラン235)。これでは原料に限りがある。濃縮で余ったウランが、ウラン238。これは原爆は作れないが、原発によって、プルトニウムの材料となる。これなら核兵器が無限に出来る。「マンハッタン計画」はこの「プルトニウム型原爆の完成と実験」にあったとのこと。

 戦争を終わらせるためなら、「やむをえずヒロシマ型原爆一発で済んだ」はずだ。ソ連の参戦もあり、1945年7月16日には「日本の天皇から平和を乞う電報」がトルーマンの下へ届いていたという。(戦後60年経って、トルーマンの日記が公開された。)つまり日本の終戦は、ヒロシマ型原爆の完成した1944年夏、日本の天皇が平和を乞う電報を送った1945年7月には決定していたのだ。

 ところがアメリカは「プルトニウム型の原爆の完成まで戦争を引き延ばした。」仮に「ヒロシマ型原爆」(1944年夏完成)で戦争が終わっていたら、南方の「玉砕」や沖縄戦、東京大空襲、長崎の原爆は必要なかったはずだ。(合計で数十万人の命が救われたはずだ。)こういう引き伸ばし方は、「アメリカ合衆国憲法」に違反で、当時これが露見していたら、ルーズベルトもトルーマンも「死刑になっていただろう」と、アーサー・ビナードは言う。

 こういう事にきずき始めたのは、「核兵器」「原爆」(「ペンタゴン、(アメリカ国防総省の見方、エラノゲイからの見方)という言葉ではなく、「ピカ「ピカドン」(被爆者の見方)という言葉でものごとを考えることによって、見えて来たという。いかにも詩人らしい物の見方、表現だと思った。「本当は自分の担当するラジオで放送したいが、そうするとあちこちからクレームがつくのでやめておく」とのことだった。アーサー・ビナード氏の許可を得て、ここにブログの記事にした。このブログの「歴史に関するコラム」で、昨年、「原爆は何故落とされたか」という記事を書いたが、その確証を得た思いだった。


2、天童大人プロデュース「詩人の声」第987回「柴田由理」 於)Cache-cache d’Art

 会場は自由が丘駅近くの会場、参加人数は9人という小規模なものだった。「朗読」される詩は、柴田由理の自作。僕は耳を澄まして、目を閉じて聞いていたが、「安部公房の演劇のセリフ」「西脇順三郎的世界」を思わせる内容だった。個人的にはもう少し抑揚をつけた方が良いと思ったが、若々しいエネルギッシュなところが魅力だった。彼女の音楽仲間、演劇仲間も駆けつけていた。

 公演のあと、ピザ、ビール、ワインで懇親会があった。「おのれの詩を読み上げるのは、自分に真向かうことだ。何かの賞をもらっていても、おのれの作品の稚拙さに真向かうことになる。多くの詩人が参加しているが、残るのはごく僅かだろう。おのれに真向かうことが出来ないからだ。」という、天童大人の発言が印象的だった。「おのれに真向かう」。これは短歌にも共通する。

 この「詩人の声」の公演は、この10月で、1000回を迎える。1000回の記念公演は、2013年10月13日、資生堂銀座ビルで行われる。白石かずこ、高橋睦郎、田中庸介、など25人の詩人が、合計4時間にわたって詩を読み上げる。マイクなしの肉声で。一生に一回あるかないかの機会だが、僕は、「運河東京歌会」があるので、参加出来ない。残念だ。


 ふと思った事。僕は「短歌=定型の現代詩」と考えている。僕もこのプロジェクトに参加しようか。今度、天童大人に聞いてみよう。

 この公演の予約、問い合わせは、北十字舎内「1000回記念公演実行委員会」TEL03-5982-1834 FAX 03-5982-1797 Mobile 090-3696-7098







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