《無力化》
孤立化の過程においては、まだ精神的に屈服していない子もいる。
できれば「分けられること」を免れて、みんなと一緒にいられるんじゃないか、という期待を捨てきれない。
誰かが自分の本当の気持ちを分かってくれるんじゃないかと、思いたい。
そこで、分ける側が行うことは、相手を無力化することである。
孤立化作戦はすでに無力化を含んでいる。
孤立するということは大幅に力を失うことである。
しかし、「無力化作戦」はそれだけでは終わらない。
この作戦は要するに、「みんなと一緒は無理である」ことを指導し、親子を観念させることにある。
そのためには、説得や指導を繰り返し、誰も味方にならないことを繰り返し味わわせる必要がある。
「みんなとについていけると…思ってるの?」
「じゃあ、これはできる? あれはできる?」と同年代の子どもなら当たり前にできることが並ぶ。これでもかと、「できなさ」を思い知らせることは有効である。
これは分けられる側が持っている引け目や遠慮の気持ちに目を向けさせることができる。
同年齢の子どもたちと比較されれば、できないことは山のようにある。
また、3年生になると…、5年生になると…、中学生になると…、「ついていけなくなる」という脅しは、常識化している。
実際、学年が上がるにつれ、特別支援に移る数は増えている。
そして、高校入試で分離が完成する。
就学猶予・免除で、小中学校が障害児を拒否したことが間違いであったように、
高校入試制度が、障害児を排除するために機能させるとしたら、それは差別だ。
また、分けられた子どもの中には、特学の教室に行かない子もいる。
そうすると、特学の教師は、精神科への受診を勧めたりする。
後戻りはできないと思い込まされている親は、言われるがままに病院に行き、医師に言われるがままに薬を飲ませてしまう。
子どもはただ、自分のいた場所、友達のいる場所、仲間の中で自分らしくいられた場所に帰りたいだけで、そのことをわかってほしいと必死のサインを周囲に出し続ける。
しかし、このサインがきづかれることはほとんどない。
普通学級に入れないこと。
普通学級に入っても、担任から転校・転籍を勧められること。
テストの点数が取れず、高校に入れないこと。
それらは、どんなに努力しても、がんばっても、願っても、子どもにはどうにもならないことであり、これらの制度全てが「無力化」の要素を含んでいる。
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