わたしのものがたり 2010(その2)
合格発表の後は、みんな県教委に集まります。
この22年間、184回の不合格の度に、県教委に集まり、
「どうして不合格なのか?」
「この子たちの落とされる理由が分からない」
と言い続けてきました。
時々、障害児の高校進学で、
「千葉」が進んでいる??という言葉を聞くことがあります。
進んでいる? そんなことはありません。
「遅れ」のある大人ばかりです。
進んでいる? そんなことはありません。
一歩も歩きはじめていないところが多すぎるだけです。
進んでいる?
確かに、他のどこよりも、子どもたちが不合格になるたびに、
「どうして不合格なのか?」
「この子たちの落とされる理由が分からない」
「この子たちが落とされる理由は一つもない」
と言い続けてきた言葉の数だけは、
どこよりも先を進んでいるのだと思います。
泣いて倒れて、それでも立ち上がって前に進んできたのは、
子どもたちでした。
泣いて倒れて、起き上がれない母親を励まして、
「もういっかいがんばる」と言って、
前に進んできたのは、子どもたちでした。
10月に「お母さん、ごめんね」と何度も謝り、
「高校は行かない」と言ったManaちゃんも不合格でした。
試験の日も誰よりも早く高校に行き、がんばって受験して、
発表を見に行き、自分の番号のない掲示板を見てきました。
でも、お母さんが後で教えてくれました。
「不合格になって、落ち込んで泣いて、
でも今日は『お母さん、ごめんね』とは言わなかったんです」と。
帰りの車の中で、「落っこちちゃったね~」というだけで、
その後、10月のときみたいに「ごめんね」と言うのかと思ったら、
言わなかったんですよと。
私はやはり思うのです。
この子たちを高校生にしてあげたいし、
当然なれるべきだと思います。
でも、高校に合格することよりも大事なことがあると。
「自分が勉強が分からない、テストができない、
だから高校には受かりそうもない、
だからお母さんごめんなさい、受験はしない」と
学校にも行けなくなって泣いていた子どもが、
「おっこちちゃったねー」とつぶやくだけだったこと。
番号がなかったのは悲しいけど、それは
「あなたが《悪い》」のではないということを、
ちゃんとお母さんが伝えてきたということです。
勉強が得意じゃないこと、テストが苦手なことは、
人として恥ずかしいことでもなんでもないと、
だからそんなことで謝らなくていいんだよ、
せいいっぱいがんばったのは、お母さんも中学の先生も、
みんな分かっているからと。
そのことを、Manaちゃんはもう誰に言われなくても、
分かっているのだと思いました。
「さとーさん、つぎもがんばるからね」
そう言って、Manaちゃんは手作りのバレンタインの
チョコレートをくれました。
本当に、応援しているのはどっちなのか、
分からなくなることがあります。
「支援」しているのは、どっちなのか、
分からなくなることがあります。
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kuku
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